その後、彼とは体だけの関係が続いた。



彼は、数ヶ月後には卒業が決まっていて、県外に就職が内定していた。



さらに、彼には同じ大学内に、美人の彼女がいた。




ただ、彼は言っていた。



「彼女とは別れるつもりだ。」






だけど、こうも言った。



「お前とも付き合う気はないよ。」





それでも、なぜか関係を続けていた。





体の相性もよかったし、


寂しさも紛らわせたし、


時々デートもしてくれたし。





好きな気持ちもあったけど、はっきりとしたことを言われたし、甘いコトバも言わなかったので、気持ちにセーブがかかっていた。





それに、遠くにいくということも、気持ちを抑えるのに一役買っていた。






結局、彼とは恋は始まらず、体だけの関係を数ヶ月続けただけで終わった。




Aくんと別れた後、新しい出会いがあった。


バイト先であったコンビニで、飲み会があった。


夜勤専門の大学院生と仲良くなった。


飲み会で意気投合し、2次会、3次会と進んでいった。


気がつけば、人数も減って、4人くらいとなり、お開きとなった。


そして、彼は言った。



「送っていってあげるよ、みんな」



あたし以外は男で、一人はバイト先にチャリをおいていて、もう一人は、バイト先の真裏に住んでいた。


あたしだけは、ほんの少しだけ離れたところに住んでいた。


二人を店でおろしたあと、彼は言った。




「この後どうする?うち来る?」




別れたばっかりでさびしかったこと、


家に帰るのは気が乗らなかったこと、




その二つの理由から、あたしは彼の家に行くことにした。





一人暮らしの男の家に行って、することは一つだ。




あたしは彼の部屋で朝を迎えた。







優しいA君との付き合いはその後も続いた。



Aくんは実家住まいで、よく家に遊びに行ったし、お父さん、お母さんとも仲良くしていた。



母の日や父の日にはプレゼントもあげた。




お母さんには、「そろそろ結婚したら?」といわれることもあった。




遠方に住むAくんのお兄さんに会ったり、正月に呼ばれたりもしていた。





Aくんも、あたし以外の人との付き合いは考えられない、って言っていた。







だから、結婚するものとばかり思っていた。













付き合って1年が経ったある日のことだった。







Aくんがふいに言った。







「言っておくべきだと思うから言うんだけど、



俺は、確かに君以外の人と付き合うことは考えられないし、もし仮に別れたとしても君以外のだれとも付き合わないと思う。


だけど、俺は、君みたいにふわふわしている人とは結婚はできないよ。


毎日不安な結婚生活なんて、考えられないから。」








ショックだった。




あたしは決して浮気したわけではないし、彼のことが好きだった。




ただ、あたしには、女友達より男友達の方が多かった。



それは、あたしの性格上、女の子特有の付き合いが苦手だったからで、サバサバした男の子との付き合いの方がずっと楽だったことと、男友達も女としてみてなかったということがあったからだった。



けれど、Aくんには持論があった。



それは、Aくんの経験に基づいたもので、男女間の友情は成立しない、というものだった。





Aくんはあたしと出会うまで彼女がいたことはなく、女友達すらいなかった。



彼はとある事情により、コンプレックスを抱えていて、それがとてもとても強く、性格に影響していた。


女の子に声をかけるなんてありえなかったし、それまでの人生に女友達が存在したこともなかった。


だから、彼にとって、男女間に友情が成立なんて、ありえないことだった。







そのAくんにとってみれば、あたしの交友関係は、浮気ものの交友としか見えなかった。



だから、毎日毎日不安だった。



ほかの誰かに持っていかれるとか、


浮気をするんじゃないかとか。






このAくんの発言により、あたしが描いていた、『結婚』という理想は打ち砕かれると同時に、徐々に二人の関係にヒビを入れていってしまい、結果的にあたしたちは別れという選択をせざるを得なくなった。