優しいA君との付き合いはその後も続いた。
Aくんは実家住まいで、よく家に遊びに行ったし、お父さん、お母さんとも仲良くしていた。
母の日や父の日にはプレゼントもあげた。
お母さんには、「そろそろ結婚したら?」といわれることもあった。
遠方に住むAくんのお兄さんに会ったり、正月に呼ばれたりもしていた。
Aくんも、あたし以外の人との付き合いは考えられない、って言っていた。
だから、結婚するものとばかり思っていた。
付き合って1年が経ったある日のことだった。
Aくんがふいに言った。
「言っておくべきだと思うから言うんだけど、
俺は、確かに君以外の人と付き合うことは考えられないし、もし仮に別れたとしても君以外のだれとも付き合わないと思う。
だけど、俺は、君みたいにふわふわしている人とは結婚はできないよ。
毎日不安な結婚生活なんて、考えられないから。」
ショックだった。
あたしは決して浮気したわけではないし、彼のことが好きだった。
ただ、あたしには、女友達より男友達の方が多かった。
それは、あたしの性格上、女の子特有の付き合いが苦手だったからで、サバサバした男の子との付き合いの方がずっと楽だったことと、男友達も女としてみてなかったということがあったからだった。
けれど、Aくんには持論があった。
それは、Aくんの経験に基づいたもので、男女間の友情は成立しない、というものだった。
Aくんはあたしと出会うまで彼女がいたことはなく、女友達すらいなかった。
彼はとある事情により、コンプレックスを抱えていて、それがとてもとても強く、性格に影響していた。
女の子に声をかけるなんてありえなかったし、それまでの人生に女友達が存在したこともなかった。
だから、彼にとって、男女間に友情が成立なんて、ありえないことだった。
そのAくんにとってみれば、あたしの交友関係は、浮気ものの交友としか見えなかった。
だから、毎日毎日不安だった。
ほかの誰かに持っていかれるとか、
浮気をするんじゃないかとか。
このAくんの発言により、あたしが描いていた、『結婚』という理想は打ち砕かれると同時に、徐々に二人の関係にヒビを入れていってしまい、結果的にあたしたちは別れという選択をせざるを得なくなった。