久しぶりに大好きなに出会えました。
 
Le sens de la fête
『セラヴィ!』
監督 エリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュ(2017製作/フランス)
 
テーマソングはBoys Town Gang版の『君の瞳に恋してる』
 
『最強のふたり』ではフランス国内観客動員数歴代第3位(1位はタイタニック)を叩き出して大ヒット、続く『サンバ』では移民問題を抱えるフランスの社会をまるまる映し出して話題に…。
天才監督2人による映画、
ずーっと楽しみにしていたのですが、
個人的には今まで観たこの2人の監督映画の中で一番好きでした。
 
原題のLe sens de la fêteは「パーティの意味」という意味。
舞台は結婚式。
結婚する2人の門出を祝福するゲストに、感謝を伝える場所として、
人生の縮図とよく例えられるシチュエーション。まさにC'est la vie(これが人生)なわけで。
深い深い邦題です。
 
主役は、引退を考え始めているベテランウェディングプランナーのマックス(ジャンピエール・バクリ)。
ベテランのしかも男性のプランナーが主役という時点でまず、珍しいですよね。
彼が手がける、とある結婚式の一日のドタバタを、グランドホテル形式で描いた映画です。
 
ちょっと江戸っ子気質(?笑)で、すぐカッとなってしまう後輩プランナーや、
皆が携帯で写真を撮ることに苛立っている長くビジネスパートナーとしてマックスの結婚式で写真を撮っているカメラマン(ジャンポール・ルーヴ)、
国語教師をやっていたけれど心を病んでしまっていまは結婚式を手伝っている義理の弟、
めちゃめちゃなイタリア語で歌う、こちらもすぐカッとなってしまう歌手(ジル・ルルーシュ)、
宮廷召使の服をとことん嫌がる給仕スタッフ達、
言葉が通じないことをいい事にペラペラ喋りまくるスリランカ人のお皿洗いスタッフ達などなど…
 
人間味溢れまくってしまっているたくさんのキャストで、お送りする本日の結婚式
 
新郎もちょっとこの人おかしいよね?というキャラの濃ーい濃ーいお客様
 
エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュ、
本当に人間を描くのが上手いなぁと、改めて感じます。
あぁこういう人いるなぁ、結婚式ってこういう人間関係あるんだよなぁ、うわこいつヤバいなぁ笑…等々
 
名優たちの演技もほんとに流石で、全てのアクションが自然。
 
労働許可を取っていないキャストがちらほらいたりして、エリックとオリヴィエの映画で必ず訴えかけてくるフランス社会の縮図的現状も、しっかり描かれています。
私、スリランカ人たちがツボで、彼らが出てくる度に大笑いしてしまう。
 
 
私自身ブライダル業界で新卒時代を過ごしたため、
結婚式の舞台裏が妙にリアルで、あの頃のこと懐かしくてしみじみ色んな想いを噛み締めていました。
エリックとオリヴィエも学生時代、結婚式のキャストとしてアルバイトをした経験があり、それが元で今回の物語が出来上がったそう。
そう言えば『サンバ』にも結婚式のキッチンシーン出てきました。
 
あのイベントが始まるぞっていうワクワク感と、問題が次々に起こってしまう(怒っちゃダメだけど)ドキドキ感、
ゲストが幸せになってくれた幸福感、そして何より最後にありがとうと言われる達成感…。
 
 
社会人なら誰もが明日からも仕事頑張ろうと思えるはず。
まさにC'est la vieという邦題の通り、人生がぎゅっと詰まった1日です。
 
2015年のパリ同時多発テロの直後、フランス中が気落ちしていたあのころ、何とか笑いで前を向かないと、という想いからこの作品の構想を練ったそう。
人生は喜劇、楽しんで笑って前を向いて生きていこうっていうメッセージが至る所に散りばめられています。
 
 
人生に問題はつきもの。それでも何が起きても「順応する(s'adapter)」って、
『最強のふたり』でも何度も出てくる言葉。
試練を乗り越えようとする力の表現は「ユダヤ的」とも表現できるかもしれません。
 
ユダヤ系モロッカンの両親を持つエリック・トレダノとユダヤ系アルジェリアンがルーツのオリヴィエ・ナカシュ、マイノリティでありながらも、フランス社会ではマジョリティーのマグレブ系移民の子孫。
彼らのバックグラウンドが、映画のメッセージ性をより強くするのだと思います。
もちろん語らず、言葉にせず、観客に訴えかけてくる「人生の過ごし方」。
 
写真はl'expressから
 
ちなみに、2人の出逢いのきっかけは同じく「ユダヤ的な」メッセージを埋め込む天才ウディ・アレンだったとか。オリヴィエが学生時代にウディについて熱弁する映画好きな人がいる、と噂に聞いて出会ったのがエリックだったのだそう。いろんなインタビューで2人にとって、ウディは永遠のアイドルだと語っています。
「人生は喜劇」というテーマが、ウディのセオリーを彷彿とさせて、なんともじんわり来る主題。
 
あぁ、久しぶりにウディではない映画にハマったというのに、結局このおじいさん出てきちゃいました笑
 
 
どんな試練が降ってきても、前を向いて、笑って、生きて行く。
何度でも観たい幸せないっぱいな映画です。
 

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