本日は愛車の引き取り日。
朝から業者がやってきて引き渡した。
バッテリーが死んでるのでふたたびブースターケーブルで繋いだ。
キュルキュル……
ボーン!ブロロロロロ......
カッコいい音を轟かせてエンジンが掛かった。
それは最期のお別れの音だった。
長男ケイタが、この車で練習する姿を夢見ていた自分は、ケイタではない、業者の姿であることに残念な思いだった。
私の住んでいる地域は車がないと生活はできないわけではないが、車は必要な地域。
ケイタも普通にこの夫婦問題に加わらず、普通に家に過ごしていたら、きっと運転は上達し、さらにスポーツドライブの楽しさも実感でき、また別の人生が待っていたであろう。
もちろんこうなってしまったことは私にも責任があり、ケイタだけが悪いわけではない。そう、誰かによって自分の人生は変えられてしまうもの。
自分の行動は誰の人生を変えたか?
その人の人生を幸せにしたか?
出会えて良かったと言われる行為をしたか?
利他の心は自分にあるか?
自分は他人から必要とされているか?
まもなく、
それでは引き上げます
と業者が言うと、愛車は前に進み出した。
私は少しばかり愛車が動くシーンを撮影し、
見えなくなるまで見送った。
ありがとう。ありがとう。ありがとう。
元気でな。俺は君のおかげで幸せだったよ。
本当にありがとう。
独り言を言うと、思わず涙が溢れた。
私と10年以上共にした、愛車とのお別れでした。