児童養護施設で働き始めて気になったことの一つは、
子ども達が「ずるい!!」とよく言う事だった。
社会人になってから、「ずるい」、と、言う事も聞くことも減っていたので、
耳にするたびドキッとした。
なんだか胸がぐっと苦しかった。
なんでだろう、「うらやましい」と何が違うんだろう。
よく考えていた。
今の時点で、行きついた私の考えは、
「ずるい」というのは、相手は自分より得をしていて、自分は損をしている、自分は虐げられている、という気持ちにつながっているのかな、と思う。
自分は苦しい場所しかなくて、自分以外のみんなはいい思いをしている、というような。
「うらやましい」も、一見あまりポジティブではなさそうけれど、
同じ漢字でつながる「羨望」があるように、
「私もそうなりたい」という思いが底にあるように思う。
上に向かう気持ちにつながっているんじゃないだろうか。
少なくとも、自分に対しても相手に対しても、否定的でないように思う。
根っこにある「嫉妬」「妬み」という気持ちは、同じかもしれない。
「ずるい」「うらやましい」と、
言葉に出したとたんに分かれる響き。
「ずるい」という言葉にしたから、苦しくなるのか。
苦しいという考え方が、「ずるい」という言葉を選ばせるのか。
子ども達は、何も考えずに「ずるい」と使っていただろうけれど、
それはまるで、その子の境遇や、心に押し込めている苦しい感情のように、重なって見えた。
施設での共同生活で、実際心荒むこともあっただろう。
もし、言葉を変えたら、感情もかわるのだろうか。
そのころから、意識して「ずるい」という言葉は使わないと決めた。
「うらやましいな~」「いいなー」
明るく、明るく。軽やかに。
そんな小さい事だけれど、積み重ねて、なにか影響できたらいいなと思っていた。