ありがとうが、言い尽くせない春

「ありがとうが、言い尽くせない春」


私は、3年間の育児休暇を終えて職場復帰をした。

 


長男が3歳、次男が1歳の春。

 


ちょうど桜が満開になったその頃、我が家は新しい生活を一斉にスタートさせた。

 

 

両親宅と隣同士で住んでいたから、長男は幼稚園へ。次男は保育園へ。

 


そして私は――小学校の教壇へ、再び立つことになった。

 

 

朝はバタバタだったけれど、両親の支えが本当に大きかった。

 


長男は、すんなり幼稚園バスに乗ってくれた。

 


優しい担任の先生にも恵まれ、毎日楽しそうに通っていた。

 

 

問題は、1歳になったばかりの次男。

 


慣れない集団生活の中で、あっという間に体調を崩した。

 

 

咳、熱、鼻水、感染症のオンパレード――

 


気づけば、ほとんど保育園には通えていない日々。

 


「保育園より小児科の方が通ってるんじゃない?」

 


そんな冗談が、冗談じゃないほどの頻度で通院していた。

 

 

それでも私は、毎日仕事があった。

 


授業、会議、教材作り。急に代われる仕事じゃない。

 


だから、休むわけにはいかなかった。

 

 

毎週のように、両親が小児科へ連れて行ってくれた。

 


「今日は咳の薬だったよ」

 


「熱は下がったけど、食欲がまだないし、明日も様子見かな」

 

 

そんな報告をもらいながら、私は教室で、母親であることをひとまず脇に置いて教師として立っていた。

 

 

それでも、次男を預かってくれる保育園の先生たちは、

 


いつも優しく迎えてくれた。

 


「お母さん、お仕事大変ですよね」

 


「今日は抱っこでたくさん甘えましたよ」

 

 

その一言一言に、心が救われた。

 

 

保育園に通わせるって、こういうことなんだ――

 


体調不良が続いて、働くことに罪悪感すら抱いてしまう。

 


けれど、それでも「子育てを一緒にやってくれる大人たちがいる」ことの有難さを、私はこの春、全身で知った。

 

 

今でも、保育園の先生には感謝しかない。

 


あの頃、私の代わりに、たくさんの愛情を注いでくれていたこと。

 


働く母としての不安な背中を、見えないところで支えてくれていたこと。

 


ずっと、忘れない。