「たったひとりの夜に、私は一番支えられていた」

 


 

 

保育園の先生の理解には、いつも救われていた。

 

 

「大丈夫よ。先生はなかなか帰れないわよね~。」

 

 

そんな風に、私の仕事の大変さに自然と共感してくれる。

 


お迎えのたびに、労いの言葉をかけてくれる――

 


そのたびに、心がじんわりとほどけていた。

 

 

10月。次男もようやく体調が安定してきて、保育園に通える日が増えてきた。

 


やっと少しだけ、リズムが整ってきた。

 


だから、私はその金曜日、定時の16時40分に職場を出ると決めていた。

 

 

「今日こそ早くお迎えに行ける。」

 

 

そう思った矢先――
主任が言った。

 

 

「今日提出の書類を出していってね。」

「来週でもいいですか?」
そう聞いてみる。

 

 

でも、返ってきた言葉は、淡々と。

「提出は金曜日だからね。」

 

 

……定時で帰れると思ったのに。

 


心の中で何かがふっとしぼんだ。

 

 

そこから約1時間、全力で書類を仕上げた。

 


その間ずっと、頭の中には次男の顔が浮かんでいた。

 

 

「ああ……今日、お迎え、両親に頼んでおけばよかった。」

気がつけば18時半。

 

 

ようやく保育園に着くと、
そこに残っていたのは――次男ひとりだった。

 

 

でもその表情は、思っていたものとは違っていた。

 


寂しそうな顔ではなかった。

 


先生たちに囲まれて、いつものようにニコニコと笑っていた。

 

 

保育園の先生は、今日も言ってくれた。

 

 

「お疲れ様。先生はなかなか帰れないよね。」

 

 

私は言った。

 

 

「いつもすみません。ありがとうございます。」

 

 

……その瞬間、何かが、音もなく崩れた。

 

 

次男は笑っている。

 


先生たちは温かい。

 


誰も私を責めていない。

 


むしろ、支えてくれている。

 

 

それだけなのに、涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

次男を抱きしめながら、私はその場で泣いた。

 


静かな保育園の玄関。

 


灯りの下で、涙が一粒、また一粒。

 

 

帰りの車の中でも、涙は止まらなかった。

 

 

「私、ひとりじゃなかったんだ。」
「ちゃんと、守られてたんだ。」

 

 

気づけば、次男の手は私の頬に優しく触れていた。