さて、今回は「子供の心を傷つけない遺言」
のお話をしましょう

両親は、離婚すれば赤の他人です

でも、離婚をしても、再婚をしても、親子の絆は
決して切れません

悟くんにとって、お父さんは浩さんなのです。

そのたった一人のお父さんを失った悟くんの
悲しみは、非常に大きいものでしょう

それなのに、お父さんからは何のメッセージも
ありませんでした。

悟くんは深く傷つきましたよね。きっと悟くんは
こう思ったことでしょう。

「お父さんは、僕のことが嫌いなんだ。
僕のことは、忘れてしまったんだ。」

本当の浩さんの気持ちはわかりません。

でも、お亡くなりになった今、その気持を
聞くこともできません。

悟くんは、一生「父親に愛されなかった自分」を
背負って生きていくことになります

これって、悲しいことですよね。
辛いことですよね。

では、どうすれば良かったのでしょうか

遺言には、法律的に拘束力のある「本文」の後に、
法律的に拘束力のない「付言(ふげん)」を書く
ことができます

本文は、曖昧な表現をすると、法律的に後で
もめることになりますから、専門用語を使って
厳密に書かれます。

しかしながら、付言事項は、本人の言葉で、
自由に書くことができるのです。

例えば、

「悟、父さんは、お前が無事に社会人になったことを
聞いて、とても嬉しく思っている。
お前と河原でキャッチボールした日のことを、父さんは
今でも覚えているよ。
父さんは幸せにしてあげれなかったが、母さんを
しっかり守って、幸せにしてあげて欲しい。
この遺言では、お前に財産を残してやれなかったが、
どうかわかってほしい。
こちらの家族は、まだ子供も小さくて、これからが
大変な時期だからな。
お前がこれから大好きな人を見つけて、素敵な家庭を
築けるように、父さんは祈っているよ。」

こんな風に付言事項に書いてあったとしましょう

悟くんは、どのように感じるでしょうか

一緒には暮らしていなかったけれど、自分に対する
父親の優しいまなざしを感じるのではないでしょうか。

「父さんと母さんは事情があって別れてしまったけれど、
僕は父さんに愛されていたんだ」

悟くんは、一生、父親の愛情を胸に秘めて、生きていく
事ができるでしょう

アナタの大切なお子さんの心に、一生癒すことの出来ない
傷を遺すような遺言は、書かないで下さい。

どうか、離婚や再婚をした方は、子供たちの心に
明るい灯をともすような遺言を書いていただきたいと、
心から思います。