今回お話している自筆証書遺言のお話に
ピッタリの本をご紹介しましょう。

皆さんもよくご存知の一澤帆布(いちざわはんぷ)
のお家騒動の内側を取材したノンフィクションです

一澤信三郎帆布物語 菅 聖子著
朝日新聞出版 朝日新書 2009

自筆証書遺言が2通存在した場合、日付の新しいものが
有効となります

ただし、自筆証書遺言の場合は、本当に本人自身が
自由意思のもとに書いたかどうかが、証明されにくい

また、偽造という可能性もあります

この本には、偽造された自筆証書遺言によって
翻弄された人々が描かれています

1通の自筆証書遺言の
筆跡鑑定の裁判によって、
大きく運命を狂わされた一澤信三郎・恵美夫妻の
戦いの日々を追った物語です。

この本を読むと、「遺言書」がいかに遺された家族の
生活や将来に影響をおよぼすものであるかが、しみじみと
わかります。

遺言書作成のお手伝いをするプロとして、今までも、
遺族の皆さんが争うことの無い遺言にするよう心がけ
てきました。

しかし、この本を読んでからは、改めて、遺言書の
存在が遺族の皆さんの人生や将来にとって大きな
意味を持つことだと感じました。

ただ、この本は、お家騒動の部分だけが描かれて
いるのではなくて、真摯なものづくりに対する尊敬の
念が込められています

たかがバッグ、されどバッグ

日本人のもの作りへの心意気が、鮮やかに映し
出されていて、読んだ後に、さわやかな気持ちに
なれます

「一澤信三郎帆布」ファンの方にも、そうでない方にも
読んでいただきたい1冊です。