レイチェル・カーソンと聞いてすぐに「沈黙の春」の
著者だねといえる人は、なかなかのものです。

現在では当たり前のように思われていること
「地球環境を守る」
「環境破壊は人類の滅亡につながる」

これらの考えを、初めて一般の人々にわかりやすく
訴えた名著が「沈黙の春」といえます。

私が、彼女の名前を知ったのは随分前です。

15年ほど前に、当時の職場の映画会
「沈黙の春」の映画を見たのがきっかけで、
その後「沈黙の春」の本も読みました。

ただ、著者自身については、アメリカ人の女性という
以外全く知識が無いままでした。

今回この本を見つけたのはほんとうに偶然で、
図書館に調べ物に行ったついでに発見

久しぶりにお名前を拝見して、しかも彼女の伝記
らしいというので、思わず手に取りました。

レイチェル・カーソン ポール・ブルックス著
上遠恵子 訳 株式会社 新潮社 2004

この本で初めて、レイチェル・カーソンが元々は
海洋生物学者であって、環境問題の専門家では
なかったことを知りました。

幼い頃から小説家に憧れて、大学で生物学に
出会うまでは、文学の道を志していたこと。

また、公務員をしながら、家計を支えるために、
短い文章を雑誌に投稿して原稿料を得ていたこと。

初めて出版した「潮風の下で」があまり好評ではなく、
売れ残りの処分に苦労したこと

現在彼女が得ている名声からは、想像もつかないような
お話が沢山並んでいました。

最後に驚いたことは、彼女が56歳の若さで、ガンで
亡くなっていたことでした。しかも、「沈黙の春」を
出版して、わずか1年半後のことでした。

彼女は、ガンとの闘病の中で、自分の命の灯火を
見つめながら執筆していたのです。

レイチェルが、どのような妨害に会おうとも、自らの
信念に基いて執筆を続けていた年齢とほぼ同じ年令の
今の自分を省みて、色々考えさせられました

この本自体は、彼女の作品からの引用部分が多いので、
彼女の著書を全く読んだことのない方にもお勧めです。

生物学と文学とが融合した、まれに見る美しい文体を、
どうぞじっくり味わってください

そして、彼女が伝えたかったことを、現在生きている私達は
ちゃんと受け止めているだろうかと、環境問題や原発問題を
含めて、考えていただきたいと思います