子供のいないご夫婦は、配偶者が亡くなった場合、
100%遺産が自分のものにならないという話を、
前にしましたね。

それなら、遺言さえ書けば大丈夫かというお話を、
今回はしましょう。

まず、「自分が亡くなったら、妻にすべての財産を
相続させる」という遺言を書いたとします。

この場合、法定相続人が誰かということで、結果が
変わってきます。

まず、奥さんと、亡くなったご主人のご両親が相続人
の場合は、遺留分というのに気を付けないといけません。

「遺留分」というのは、簡単に言うと、遺言に何が書いて
あっても、最低限相続人に認められる権利です。

奥さんとご両親が相続人の場合、遺留分は法定相続分の
2分の1ですから、ご両親は6分の1の権利があります。

「じゃあ、結局遺言書いても一緒じゃない」と思うかもしれ
ませんが、まあ、ゆっくり聞いてください。

まず、遺言書がなければ3分の1の権利があるご両親が、
6分の1になります。これなら、例えば支払うにしても、
ずっと負担が小さくなります。

3分の1ですと、例えば自宅やマンションを処分しなければ
ならない状況になる可能性もありますが、6分の1ならば、
預貯金や生命保険で支払える可能性も出てきます。

次に、「遺留分」は、本人が請求しないと貰うことができません。
「遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)」という
のをおこさないともらえません。

自分の息子が「全部を妻に」と意思表示をしているのにあえて
請求するというのは、親御さんの気持ちとしても辛いところ
があります。 

ですから、そこまでして請求するご両親は少なくなる可能性が
高いですし、時効(相続の開始を知ってから1年以内)もあり
ますから、全く遺言がない場合よりも、ずっと奥さんの負担は
少なくなると言えるでしょう

それでは、相続人が奥さんとご主人の兄弟姉妹の場合は
どうでしょうか。

先ほどの「遺留分」が、兄弟姉妹にはありません。

ですから、遺言に書かれたことが100%有効になりますから、
奥さんは、兄弟姉妹になんら煩わされること無く、財産を
相続することができます

「遺言」は「妻への感謝状」です。

ぜひ、お子さんのいないご夫婦は、遺言書について真剣に
考えていただきたいと思います。