風評被害の恐ろしさ。
16年前の今日、1995年3月20日。
あのおぞましい「地下鉄サリン事件」が起きました。
多くの犠牲者や後遺症を抱える負傷者を出し、日本を震撼させました。
山梨県内ではそれより以前から問題となっていたオウム真理教、
「サリン精製工場」とも言われたサティアン。
山梨県民として、大きな不安と恐怖を感じたことは忘れもしません。
現在、サティアンがあった場所はコンクリートで埋められ、
草がボウボウに茂っていて、あの時の面影はありません。
しかし、あの事件が町や村に刻んだ傷痕は、今も確かに残っています。
「サリン」を使った無差別殺人兵器がつくられていたサティアンがあった
山梨県内の町や村は、その後、ひどい風評被害に遭いました。
富士山を抱き、美しい湖に囲まれた風光明媚で穏やかな観光地は、
見事に人から遠ざけられる場所となってしまいました。
「サティアンがあった辺りは、まだサリンに汚染されてるんでしょ?」
と未だに言われることも珍しくありません。
今も何らかの危険性が言われているわけではないのに…。
町や村が寂しくなったことは言うまでもなく、とても残念なことです。
「風評被害」の恐ろしさを、私たちは身に染みて知っているからこそ、
今回の原発に関わる報道には強い憤りすら感じます。
昨日発表されたほうれん草と牛乳からヨウ素が検出された問題も、
一年間摂取してもCTスキャン一回分程度のものです。
しかし、あの発表後、ほうれん草や牛乳の仕入れがピタッと止まり、
復興のための大事な一産業である農業の未来に暗い影を落としています。
被災地の皆さんを思えば、こんなニュースが何になるのでしょう…。
きちんとした説明をし解説をしないまま闇雲に不安を煽るよりも、
安心できるような客観的事実をしっかり伝えることがよほど大切です。
福島を追われるように出ていかねばならなかった方々のご心痛を
ぜひ鑑みて報道をしてほしいと切に願います。
サリン事件後、県外に出て「おい、サリン」「サティアンは出てけ」と
言われた無念な思いを、被災者の皆さんに味わわせたくありません。
皆さんに伏してお願い申し上げます。
一瞬の報道に惑わされず、事実を精査して冷静に行動してください。
予断を許さない今ですが、決して危険な状態ではありません。
農作物にも健康被害を起こすような影響はまったくありません。
まして、大震災前に収穫されたコメや他の作物は安全そのものです。
被災地の希望を遮るような安易な判断だけはしてくださらないよう、
心からお願い申し上げます。
明日も被災地の皆様のもとに、希望ある一日がやってきますように…。