引用させていただく。 (中村元先生『古代インド』講談社学術文庫)

マトゥラー美術
これに対してインド土着の美術的伝統にもとづいたマトゥラー美術は、健康な肉体美を理想と
してつくられている。
ある仏坐像(一世紀ごろ、アヒチャットラ出土、カルカッタ博物館)は、巻き貝状の肉髻で、
平滑な頭部には髪の毛を表現せず、淳朴な感じを与える。まゆは弓状にくっきりとし、皆は厚
く、首は太くがっしりとしていて、胸も厚くたくましく、全体として健康そのものの肉体であ
る。手足も粗荒ながら力づよく、たのもしく表現され、衣文ひだも粗い線条である。人々の恐れ
をなくし、安心させるために右手をあげて施無畏印を示している。
菩薩のすがたは、おそらく当時の富裕な商人のあいだで考え出されたものであろうと思われ
る。・・・中略・・・
ところでガンダーラ美術と、マトゥラー美術とどちらが先であるかというと、よくわからな
い。西洋人の学者はたいていガンダーラ美術がもとになったというし、これに対してインド人・
セイロン人の学者たちは、ガンダーラ美術は堕落しており、国粋的なマトゥラー美術のばうがも
とであると主張する、実際は両者がほぼ同時に起こったので、前後関係は簡単には決めがたい。
ともかくこの時代に開花した仏教彫刻はアジア大陸をよぎってはるばると目本にまで渡来し、
飛鳥の大仏や中宮寺の弥勒仏像などにも顕著な影響を及ぼしている。
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如来頭部 インド・マトゥラー出土 2~3世紀 東京国立博物館


菩薩頭部 インド・マトゥラー出土 3世紀 東京国立博物館

