心の準備はしていたけど、
やっぱり勇退の二文字を見ると、
お疲れ様でしたという思いと寂しい気持ちが半分ずつになります。


トヨタ車体クインシーズの竹田沙希選手が勇退を発表されました。


私が見てきたのはたった2シーズンでしたが、大好きな、特別な選手です。




2016/17のVプレミアリーグ女子。

DAZNでバレーボールの実況をさせて頂けることになり、プレッシャーと緊張でいっぱいの中、私が初めて向かったのは西尾市総合体育館でした。

土日の試合を前に、金曜の前日練習から取材させて頂くことができたものの、DAZN中継の初年度ということもあり取材は手探りでした。

実況アナウンサーはひとりで練習終わりの選手に声をかけ、選手が良ければ足を止めない程度にぶらさがり(歩きながら)話を聞けるというもの。

初のバレー取材、
『DAZNってなに?だれ?』という空気の中で、選手の動きやスケジュールもわからずなかなか取材はうまくいきません。



そんな中、初めて話を聞いたのが、
トヨタ車体の当時キャプテン、
竹田沙希選手でした。

『歩きながらでいいので、少しだけお話よろしいですか?』と声をかけると、

足を止めて、目を見ながら丁寧に私の質問に応えてくれました。

練習を見ていて印象的だったのが、
最後の円陣で竹田選手が選手たちに強い口調で気持ちを伝えていたこと。
高校の部活を思わせるようなアツい空気だったんです。

それを『キャプテンシーがかっこ良かったです』と伝えると、
『いえいえ、まだまだ自分も全然できてないです!』と引き締まった顔をしていました。


私にとって初めての取材、真摯に対応してくださったことが嬉しく、どんな選手なんだろう?と気になったのが始まりです。



試合での姿を見ると、誰よりも大きな声でチームを鼓舞していました。
実況しながら他の選手を目で追っていても、耳から竹田選手の声が聞こえてくることは良くあります。


その溢れる闘志に心を奪われたのも束の間、
16/17シーズンは開幕直後にケガで試合に出られなくなりました。


それでも多治見監督は一度も竹田選手をベンチから外しませんでした。

試合に出られなくても常に声を出し、
タイムアウトの時には後輩たちの背中に手を添えます。

この年は荒木絵里香選手がトヨタ車体に移籍して1年目でもあり、偉大な存在だけに若手選手はなかなか自分達から声をかけられなかったといいます。

ミドルブロッカーの荒木選手は後衛に下がるとリベロと交代するため、ベンチにひとりで座る時間がありますが…

そのとき、いつも竹田選手がアップゾーンからスッと動き、荒木選手の隣に座るんです。


荒木選手も竹田選手の存在の大きさについて、色々な場面で話されていました。



初取材からしばらくして、私は再び試合の前日取材で竹田選手に声をかけました。


ケガのこと、チームのことなど話す中で『他にも選手いるので呼んできましょうか?』と。
自分は試合にでないんで…と気遣って下さいました。


リーグが終盤になり他の選手に話を聞く中でも、

比金桃子選手は『サキさんがいない分、もっと自分たちが声を出していかないと』

小田桃香選手は『今はサキさんが出られないから…サキさんのためにも勝ちたいです』


私から名前を出したわけではないのに…
存在の大きさを改めて感じました。



そして2017/18シーズン、選手兼コーチに。


再びコートに立つ竹田選手を私は実況で『トヨタ車体の象徴』と表現しました。



皇后杯の決勝ではスタメン出場。

印象に残っているのは、
デンソーとのフルセットになった5セット目、
大事な場面で誰もが『あっ!』と思う一本を繋いだこと。実況しながら鳥肌が立ちました。


その時の事がバレーボールマガジンの多治見監督のインタビューに記されていました↓

──ずっとトヨタ車体を支えてきてくれたのが竹田(沙希)選手ですね。

多治見監督:サキ(竹田)はいろんな悩みがあったと思います。昨シーズンはずっとコートに入れなかったですし。でもベンチ外にはしなかった。キャプテンとしてサキが声を出してくれるのとくれないのでは違うので。苦しいシーズンだったと思います。それで本人も引退を考えたようですが、「スパイクまで打って終わるべきでしょう」という話をしました。「このままで終わったら中途半端だから、やっぱりサキはちゃんとスパイクまで打ってサキらしさを見せて、やりきって終わったほうがいい」と。ずっと腰の状態がよくなかったのですが、夏に体を作り直して、やっと出られる状態までいけて、皇后杯で頑張ってくれたので本当によかった。やっぱり一生懸命頑張っていた選手は報われるべきだから。

決勝の5セット目(10-11)、エリカが(Bクイックの)セットがあわなかったとき(サキがカバーして)相手コートに返した1本は本当に大きかった。他のメンバーにも言いましたが、普段の練習から声を出して、膝を曲げて、基本に正しく一生懸命、一本一本丁寧にやる。それがあの1本に活きたんだと。まじめにやっている選手はああいう場面でああいうことができるんです。体にしみついている、体が反応できるまでやっているからこそできた。すごいことです。戦術も大事ですが、そういう所も本当に大事ですね。

※バレーボールマガジン記事より


そしてトヨタ車体は皇后杯で優勝👑

リーグでは、チーム初のファイナル3進出を決めました✨


2戦目のスタメンには竹田選手の姿。


久光製薬に敗れはしましたが、
最後の最後まで闘う姿を見せてくれました。
ずっとトヨタ車体をひっぱってきて、
ここまで勝ち上がって、
この涙は悔しさだけだったんだろうか…と。


中継が終わって試合後の会見に駆けつけるも間に合わず、話が聞けなかったのは心残りです。


トヨタ車体過去最高のリーグ3位
皇后杯優勝
大きな功績を残したシーズンになりました。


強くて、熱くて、まっすぐで、
チームのために一生懸命で、
どんな時も闘う姿を見せてくれる。

その姿は私にバレーボールの楽しさ、そして厳しさも教えてくれました。
だからバレーボールは面白いんだと。

私が見届けたのはたった2シーズン、
直接話せた機会も少なかったけれど、
ずっと心に残る大好きな選手です😊


竹田沙希選手、おつかれさまでした。


黒鷲旗での最後のプレー、
楽しみにしています🍀