これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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後編


「予定変更だと?!♭一体何があった?!♭」高台から慌てて駆けつけて来た不動七右衛門こと盛岡勘七(もりおかかんしち)に、闘魂一右衛門こと村重一(むらしげはじめ)闘魂二右衛門こと継野二郎(つぎのじろう)闘魂四右衛門こと倉本小四郎(くらもとこしろう)が一斉に顔を上げる。


先程LINEでリーダーの石川五右衛門と取り引きの打ち合わせをすると言って来た電脳三右衛門こと頭師晃(ずしあきら)から、予定変更の一斉送信メールが入り、取り引き時間の変更があったので急いでアジトに戻る様にと命令を受けたのだ。


だがアジトに頭師晃の姿は無く、隠密六右衛門こと稲毛六郎(いなげろくろう)も来ていなかった。「おい七右衛門!六右衛門は何処だ?♭」アジトに駆けつけたのが盛岡勘七だけだったのを訝しんだ村重一がパイプ椅子から立ち上がる。


このアジトはリーダーの石川五右衛門が前もって用意していた下町にある古い居酒屋の空き店舗だ。元々は盛岡勘七が扱っていた不動産のひとつだったが、店主に無断で優良物件をタチの悪い筋に売ろうとしたのがバレてクビにされた。


今の持ち主は枝野葵(えだのあおい)と言う女性だが、商売をやっている形跡は無く、名義だけが残ったままになっていたのを五右衛門が利用しているのである。


「えっ?!六右衛門は帰って来てねぇのか?!♭確かに “こっちは問題ナシ” と返信はあったが、三右衛門から予定変更のメールが来たのはその直後だぞ!♭てっきり紅龍倶楽部から抜けてここに帰ったと思ってた!♭♭」


顔色を変える盛岡のスマホに、見知らぬ番号から電話が掛かって来たのはその時だ。「お前誰だ!!」噛み付くように怒鳴る盛岡の耳に、息も絶え絶えのか細い稲毛の声が聞こえた。


「俺だよ七右衛門…♭六右衛門だ…♭自販機の前の公衆電話をやっと見つけて掛けてんだ…♭あのブルース・リー野郎にスマホを盗られた…♭あいつ只者じゃねぇよ…♭素手で飛んで来るボーガンの矢を掴んだりするしさ…♭俺もう抜けるわ…♭殺される…♭♭」通話が切れた。


「六右衛門?!♭おい?!♭♭」青ざめる盛岡を、継野二郎が怪訝そうな目つきで睨む。「どうした?六右衛門は何と言ってる?」「…仲間を抜けるって…♭良く分からんがブルース・リー野郎に殺されかけたらしい…♭どうやらボーガンの矢を素手で掴む様なヤベー奴だったみてぇだ♭♭」「はぁ?!♭お前頭悪そうとか言ってたじゃねぇか!♭」倉本小四郎が色めき立った。


するとそれまでぼんやりした顔付きて鼻歌なんぞを歌っていた1人の老婦人の様子が急変する。「おや?思っていたよりも早かったねぇ~」「何だって?!♭♭」一、二、四、七右衛門の4人がギョッとして囚われの老婦人に視線を向けた。パイプ椅子ごとロープで縛られていたのは誘拐された菊田ナヲ子お婆ちゃんだ。


てっきり認知症だと思っていたナヲ子お婆ちゃんは今までとは打って変わったハキハキとした口調で、「馬鹿な連中だよ。とっくに野垂れ死んだ亡霊みたいな男にすっかり踊らされちまってさぁ~」と、威勢よく言い放った。


「何だと?!♭おい婆さん!♭どう言う事か説明しろ!♭」「説明なら親分の石川五右衛門に聞けばいいじゃないか。そいつはね、あの亡霊が残した悪の種さ。あたしはその悪の種をみつけて根絶やしにしなくちゃいけないんだよ。


あの金の亡者の事だ、菊田家のお宝は喉から手が出る程欲しかった筈だからね。例え墓から這い出してでも手に入れようとするだろう。菊田家を潰しただけじゃなく、あたしの大切な葵まで手に掛けたみたいにね」


「葵ってまさかこの居酒屋の…?♭♭」盛岡勘七は五右衛門が指定したこのアジトをゆっくりと見回して絶句する。そこにもの凄い勢いで飛び込んで来たのはまるでダンス衣装の様なキラキラしたコスプレに身を包んだ何者かの残像だった。「婆ちゃん待たせたなっ!♪」


そのキラキラは元気な声で瞬時にナヲ子お婆ちゃんの元に駆け寄ると、1番近くに立っていた継野二郎を瞬く間に吹っ飛ばした。「うわぁぁぁ!!♭♭」訳も分からぬまま吹っ飛ばされた継野が、ブラックジーンズの足元に落下する。


「え"ぇっ?!♭誰?!♭♭」床に這いつくばった姿勢で思わず見上げる継野の目に、ふっくらとした頬の愛らしい顔が映った。「三右衛門君が洗いざらい喋ってくれたよ二右衛門君」


一見柔和に見える笑顔の双眸の奥はまるで微笑っていない。元傭兵らしい俊敏さで跳ね上がるように立ち上がった継野だったが、鞭の様な高速の回し蹴りで為す術もなく弾き飛ばされ、カウンターに激突して昏倒した。


「あら?♪サトちゃんまで来てくれたのかい?♪お店はどうしたの?♪」嬉しそうに目を細めるナヲ子お婆ちゃんに、智は困った様に眉尻を下げて優しく諭す。「菊田さん、気持ちはわかりますけどあんまり危ない真似しないで下さいよ♭」


智は相葉によってロープを解かれたナヲ子お婆ちゃんを背後に庇いつつ、鉄パイプを持って身構える盛岡をキッと見据えた。その睨み合いの向こうでは、村重一と倉本小四郎の元傭兵コンビが、各々ナイフや無数の釘を打ち込んだバットを握って今にも飛び掛からんと、相葉と間合いを取っている。


「サトちゃん大丈夫?相葉ちゃんの相手は随分強そうだねぇ~♭」智の背後でおっかなびっくりするナヲ子お婆ちゃんだったが、ふと思い出したのか、「ところでサトちゃん。ニノちゃんは何処だい?」と聞いた。


「ニノは潤と一緒に亡霊退治に行っているんだ。だって菊田さんが隠したお宝は可愛い坊やの為なんでしょう?枝野陽向(えだのひなた)君の命を守る為の…」「やっぱりみんなにはバレちゃったんだねぇ…。それじゃあたしの目的も?」「勿論」


それを聞いてすっかり安心したのか、ナヲ子お婆ちゃんは目に涙を浮かべて拝む様に両手を合わせた。「菊田さん、少しの間だけ目を瞑っててくれる?怖いモノ見せたくないからね」


言うが早いか智は盛岡が遮二無二振り下ろす鉄パイプを白刃取りの要領であっさりと受け止めると、そのままクルリと回転させて盛岡の胸元へと付き出した。ゴキッと言う鈍い音と、仰け反る盛岡の呻き声が同時に響く。


「相葉ちゃん!」智は奪い取った鉄パイプを相葉に向かって投げてから、盛岡の背中が床に付くよりも早く、その脇腹に1発2発と高速の連続蹴りをお見舞いした。「ぐおおお!!♭♭」


くぐもった悲鳴を上げ、盛岡は身体をくの字に折り曲げつつ吹き飛んだ。複数のパイプ椅子にまみれ、白目を剥いて気を失った盛岡の様子に、相葉と睨み合う村重と倉本が縮み上がる。「マジかよ?♭動きが全っ然見えねぇ♭♭」「何だあいつ♭細っこいガキのくせに超強ぇじゃねぇか♭♭」


智の戦い振りに恐れをなした2人は、眼前でつまらなそうに鉄パイプを弄ぶ相葉を眺め、「こいつなら隙だらけだしイケそうじゃね?♭」「何か派手な変な格好してるしな♭♭」などと話し合っている。


「や、四右衛門ちょ待て♭さっき電話で六右衛門が言ってたブルース・リーみてぇなヤベー奴ってひょっとしてこいつじゃね?♭」「まさか着替えた?♭何で?♭♭」2人が恐慌に陥るのも無理は無い。


アジトには傭兵上がりの強者が待ち構えていると知り、相葉はお気に入りの勝負服である豪華客船の時のDisco Starスタイルにわざわざ着替えたのだ。誰にも理解出来ないその支離滅裂さこそがエージェントAi-Bなのである。


特に攻撃するでもなく、村重と倉本の会話を呑気に聞いている様子は何だか隙だらけに見えるかも知れないが、中々攻撃して来ない2人に相葉はただ単に飽きているだけだ。終いには「もういいや、時間ないから2秒で潰す」と、2人に向かって2本の指を立てたのだった。


「この野郎!♭」「舐めやがって!♭」いずれも腕に覚えのある元傭兵である。村重も倉本もさすがにこれにはピリついたのか、怒声を上げながら相葉に襲い掛かって来た。


「い~ち!♪」だが気づいた時には村重のナイフが鉄パイプの先端に吸い込まれて弾き飛ばされ、「に~い!♪」続いて倉本の釘付きバットがビリビリした強烈な振動と共に床に叩き落とされて、そのまま両者は背後の壁へとめり込むほどの勢いでぶっ飛ばされたのである。


「何…で……♭♭」「やっぱ…ヤベー奴じゃねぇか……♭♭」壁を伝ってズルズルと床に落ちる村重一と倉本小四郎が小さく呟き昏倒した。真ん中がへしゃげた鉄パイプがカランカランと2人の前に転がって行く。


「なぁ~んだ!♭元傭兵って言うからわざわざドレスアップしたのにっ!♭弱過ぎてつまらないぞっ!♭♭」腰に手を当て、仁王立ちで文句を言う相葉の、袖に着いたのれん状の装飾がヒラヒラと揺れる。


ゆっくりと目を開けたナヲ子お婆ちゃんが「あらまぁ~♭ほんの一瞬だったねぇ~♭」と、床に伸びる4人の誘拐犯にビックリして笑顔の智と相葉を眩しげに眺めた。


◇◇◇◇◇


同じ頃。三右衛門こと頭師晃(ずしあきら)はビクビクした足取りでリーダーの石川五右衛門との待ち合わせ場所へと赴いた。その顔はボコボコに腫れ上がり、智にかなり乱暴な手口で白状させられた事が窺い知れる。


そこは新宿の雑居ビル内にある怪しげな事務所だった。入り口には『㈲エダノプロ』と、尤もらしい看板が表示されており、半裸の女性のグラビア写真が貼り付けられていた。


「五右衛門兄貴。俺です。頭師晃です」ノックして入り口のドアを開ける頭師を押し退けながら、大股で中へと踏み込んだのは潤だ。「邪魔するぜ石川五右衛門さん。いや、今は咲田常実(さきたつねざね)だったか?お前の親父はよっぽど菊田家の名前に未練があったらしい」


デスクに座って軽く指を組むその男は、背後の窓から射し込む逆光で黒くぼやけている。その輪郭が徐々にはっきりとして、40歳前後位の歌舞伎役者みたいな和風顔のスーツの男が姿を現した。


「おや?私が呼んだのは頭師晃君の筈だが君は誰だね?」「俺か?世話好きななんちゃって公務員ってトコだな。そうだろ?ニノ」潤の背後から顔を覗かせ、ペコリと挨拶する二宮の手には、時価数億円相当のダイヤモンドが入った天鵞絨(ビロード)の巾着袋がぶら下がっている。


「君は確か『真相報道Weekly』の…。まさか見つかったのか?」デスクから身を乗り出す咲田を、冷たい目でジロリと見下ろした潤は、頭師晃の襟首を掴むと、そのままデスクの方へと放り投げた。


その顔を見た咲田はフンと鼻白み、「成る程ね。どうやら作戦は失敗したらしい」と嘲笑う。その笑顔は酷薄で何処かしら自虐的であった。


「生憎だったな咲田。お前がアジトに使っていた葵さんの居酒屋では今頃大乱闘だ。勿論万に一つもお前の集めたエモン軍団が勝てる見込みはねぇケドな。こいつ見りゃ分かんだろ?」デスクの前で膝を付く頭師晃の頭を乱暴にぐしゃぐしゃしながら、潤は「菊田の婆ちゃんナメすぎたな」とニンマリする。


「あの婆さんは認知症だろう?」「ところがどっこい。あれはお前をハメる為に認知症の振りをしていただけだよ。どうせ親父の常朝から嫌ってほど聞かされて育ったんだろう?俺達菊田一族は徳川吉宗の血を引くやんごとなき家柄なんだとか何とかな…。


菊田家はその昔将軍吉宗から貰い受けた徳川家の財宝を何処かに隠し持っている。菊田家を追い出されたりしなければ今頃その財宝は直系の男子である自分が受け取るべき正当な遺産だったとでも言われたか?本来なら常朝の息子であるお前が正当な後継者だから財宝を貰う権利があると、そんな寝ぼけた事思ってたんだろう?


だが常朝はナヲ子さんによって戸籍上では死んだ事にされ、遺産相続の権利を失った。常朝はさぞかしナヲ子さんを怨んでいたんだろうぜ。自分が菊田家の財産を食い潰しちまった事なんかすっかり棚に上げてな。


だからナオ子さんは父親から預かった宝の地図を一旦封印したのさ。財宝の存在なんて無かったかの様に振舞ってね。咲田ってのはお前の親父がホームレスから買い取った戸籍だろ?


咲田亨(さきたとおる)それが菊田常朝の新しい名前だ。そして自分の息子には菊田家の直系の証である “常” の字を入れて常実と名付けた。きっとお前は父親に似てるんだろうな。だからナヲ子さんは気付いたのさ、お前があの菊田常朝の息子だってね…」


咲田の顔色が変わる。「まさか…?♭婆さんは知っていたのか…♭だから私と葵を引き離そうと…♭」「漸く合点がいったらしいなぁ。そうさ、ナヲ子お婆ちゃんは始めっから知っていたんだよ。


お前が葵さんをたぶらかし、息子の陽向君の為に必死で集めた寄付金を狙っていた事を…。確か2億だっけ?葵さんの為にお前が買ってやったあの下町の居酒屋も計算づくだったんだろう?ちょっと調べたらすぐに分かったよ。陽向君の移植手術を気に病んでの自殺だって?ふざけた筋書き立てやがって。


てめぇ盗んだ寄付金何に使いやがった?だいたい可愛い息子の為に満額集まった手術代持ってこれから渡米しようって母親が自殺なんかする訳ねぇ。警察だってなぁ、そこまで間抜けじゃねぇんだよ。証拠さえ出りゃソッコーで逮捕だぜ。」


「証拠?そんなもの…」余程自信があるのか、咲田は顔をひきつらせながらも、虚勢を張って眼前の潤をじっと見据えた。そこに二宮が割り込んで来る。


「証拠ならあるよ。婆ちゃんは自分のスマホで銀行の貸し金庫を撮影し、ついでにあんたの事も撮影してそのメモリーカードをお手製の匂い袋の中に隠してた。しっかり写ってたよ~、葵さんのアパートに通いつめるあんたの姿がね。


婆ちゃんは “もし自分に何かあればこのメモリーカードの中の写真に写っている咲田常実と言う男を調べて欲しい。昨年自殺した枝野葵はこの男に自殺に見せ掛けて殺された。


そして貸し金庫の中にあるダイヤモンドを自分の遺言書と一緒にアメリカにいる枝野陽向君と祖父の枝野慎弥さんに渡して欲しい” って音声データにちゃんと残してあった。


でもそれだけじゃ未だ証拠としては弱いからね。だから婆ちゃんはさ、ボケた振りして菊田家の隠し財産の話をあちこちで吹聴していたんだよ。あんたならきっと喰いつくって分かってたんだ。これで婆ちゃんが殺害されでもしたら、さすがに警察もあんたの事調べるでしょ。


あんたはナヲ子婆ちゃんの撒いた餌にまんまと引っかかったって訳。婆ちゃんはな、命懸けで枝野葵さんの仇を討って、彼女の忘れ形見の陽向君を助けようとしていたんだよ。悪いけど咲田さん、『真相報道Weekly』はこの事を書くよ。きっとクリスマスの大スクープになる」


二宮はいきなりスマホを出して咲田常実の写真を連写すると、巾着袋を翳してトドメの台詞を言い放った。「あんたもそろそろ年貢の納め時だな、石川五右衛門さん。このダイヤモンドは海を渡って心臓移植手術を待つ枝野陽向君のもんになる。それがナヲ子婆ちゃんの確固たる意志だ」


「クソ!♭何だって婆さんはそこまで…!♭私は婆さんの甥に当たる血縁だぞ♭それをむざむざ垢の他人に…!♭♭」デスクを叩き、咲田常実は忌々しげに歯噛みしてナヲ子お婆ちゃんへの恨み節をくどくどと垂れ流す。潤が呆れてやれやれと首を振った。


「マジでどうしようもねぇ野郎だな。思考回路がクソ親父そっくりだ。血縁なんてもんは親族をちゃんと思いやってこそ情が生まれるんだろうが。お前も、お前の親父も、菊田ナヲ子さんに何をした?


財産食い潰して放蕩三昧、病気の親父に手を差しのべる事もせずナヲ子さんに丸投げして、悪行の限りを尽くしていただけじゃねぇか。だが枝野さんは違う。枝野葵さんはなぁ、ナヲ子さんが人生でたった1人愛した男の娘だったんだよ。


葵さんの父親の枝野慎弥(えだのしんや)さんは初めて上京して右も左も分からないナヲ子さんに手を差し伸べてくれたアパートの隣人だ。慎弥さんは奥さんに先立たれ、男手ひとつで娘の葵さんを育てていたシングルファーザーでな、ナヲ子さんは葵さんを本当の娘みたいに可愛がっていた。


籍こそ入れていなかったが、慎弥さんとナヲ子さんの間には確かな愛情があった。葵さんは慎弥さんには勿論の事、ナヲ子さんに取ってもかけがえのない娘だったんだ。そんな葵さんをお前は…」


悔しげに拳を握る潤に向かって突き出されたのは38口径の拳銃だ。「言う事はそれだけかな…?」「てめぇ…♭」潤の額に向けられた銃口に二宮が「やめとけよ!」と、鋭い声をあげる。蹲った頭師晃が息を吹き返した様に立ち上がり、潤に狙いを定めたままでデスクを離れる咲田常実に駆け寄った。


「形勢逆転だな。ここで君達を殺してその巾着袋を奪い取れば何の問題も無い。ここはこの頭師晃君とコンタクトを取る為だけに用意した形だけのオフィスだ。君達の死体が見つかった頃には私は空の上さ。


君のその美しい顔に風穴を開けるのはいささか気が引けるが、相手が悪かったと諦めてくれたまえ。君の無鉄砲のせいで真相報道Weeklyも優秀なジャーナリストを失う事になるだろうがね…。」


迷わず引き金を引く咲田の銃口があらぬ方向へと火を噴いた。秒速で間合いを詰めた潤がつま先を蹴り上げたからだ。銃弾はオフィスの壁にめり込み、弾き飛んだ拳銃は一瞬で潤の手に握られていた。「あぁ?お前よっぽど死にてぇみたいだな咲田。ド素人がチャカなんかで遊んでんじゃねぇよ。」「な…♭君は一体……♭♭」


腰を抜かし、ヘナヘナとしゃがみ込む咲田常実に「言ったろ?なんちゃって公務員だよ。」と、答えた潤は、そのまま咲田の後頭部に銃尻を叩きつけると、逃げ出そうとする頭師晃の前に一瞬で回り込み、鮮やかな飛び蹴りを食らわせた。


「逃がすかよ。クソ共が」ジャケットの胸ポケットからスマホを取り出し、智に連絡を入れた潤は「智。亡霊退治終了だ。ナヲ子婆ちゃんに安心しろと伝えてくれ。」と、ビビる二宮に親指を立てたのである。


◇◇◇◇◇


こうしてナヲ子お婆ちゃんを巡る誘拐事件は時価数億円のダイヤモンドと化した千両箱と共に無事に幕を下ろした。咲田常実始め、『怪盗七右衛門』の面々は逮捕され、ナヲ子お婆ちゃんが残した証拠と証言で昨年の枝野葵の自殺についても再捜査が成される運びとなったのである。


そして『真相報道Weekly』はクリスマス特大号でこの事件を大々的に取り上げ、咲田常実は『現代の天一坊』として、歴史に残る徳川吉宗の偽御落胤騒動と絡めた形で全国的に報道されたのだった。


勿論事件解決にあたり、頼もしい活躍を見せた3人のエージェントの事は今回も国家機密の扱いだ。「メリークリスマス!!」『紅龍倶楽部』の大きなもみの木に色とりどりのイルミネーションが華やかに灯される。


大広間では会員の高齢者達が、沢山のご馳走と飲み物を囲んで特設ステージで行われている相葉考案の『コスプレ紅白歌合戦』で大いに盛り上がっていた。会員達はそれぞれ性別関係なく紅組と白組に分かれてカラオケで熱唱する。

 

ある者は学生服で、ある者は舞台衣装みたいな着物姿で、懐かしの歌謡曲だったり、最新演歌だったり、思い思いの曲を歌い、カラオケマシンの採点で勝敗を決めるのだ。


衣装は全て会員らの希望通りの物を相葉が用意し、爺ちゃんも婆ちゃんも、まるで青春時代に戻った様に笑顔で楽しんでいた。「楽しいのぅ~♪あんな大変な思いをしたんだから菊田の婆さんも来れば良かったのに♪」


徳市徳治郎爺ちゃんが清水次郎長のコスプレをしてビールを注いでくれる二宮に話し掛ける。そんな二宮は派手な黄色の漫才師スーツを相葉に無理やり着せられていささか迷惑そうだ。


実はこの日の為に二宮は漫才のネタを書かされていたのである。事件記事なら幾らでも書ける二宮だが、漫才のネタなんてどうしていいか訳が分からない♭


だのに相葉が「どうしてもニノちゃんと漫才がしたいっ!!♪♪」と言い張ったが為に、二宮がネタを書く羽目に陥ったのであった。一応東山編集長にも確認して貰い、面白いと合格点を貰った二宮会心のネタである。


練習は中々に大変だった。漢字が苦手な相葉の為に全漢字にふりがなを振り、相葉がボケ、二宮がツッコミで間合いの取り方、言い回し等、訓練に訓練を重ねて漸くどうにか形になったのだ。


「菊田さんは大好きな人に会いにアメリカに行ってるんだよ。沢山の幸せなお土産を持ってね。ウチの編集長が菊田さんに付き添って行ったから、その内『真相報道Weekly』に記事が出るよ」「そうかい?ワシちょっとタイプじゃったんだが、菊田さん好きな男がおったのか、残念じゃのぅ~」


そんな徳治郎爺ちゃんの言葉に隣の蒲原十八子お婆ちゃんが「ちょっと徳さん♭」と、可愛いヤキモチを焼く。二宮はクスリと微笑って今日も元気満タンに歌合戦を仕切っている、自分とお揃いの緑の漫才スーツを着た相葉に視線を向けた。

 

相葉さんはちゃんとネタの内容を覚えているのだろうか…♭少し、いやかなり不安だが、今日は相葉の誕生日である。


ロマンチックなクリスマス・イブに産まれたにしてはだいぶ素っ頓狂なキャラクターではあるものの、時折電池が止まった様に「…クリスマスって誰の記念日でしたっけ…」などとネタの内容をぶつくさと練習している姿は何気に微笑ましい物があった。


「ニノちゃんっ!♪そろそろ出番だよっ!♪」自ら用意した出囃子の音を鳴らし、二宮を手招く相葉は、みんなの拍手と声援に全力でアピールしている。「はいはい、今行くよ」特設ステージの袖で二宮を待つ相葉の表情は、まるで子供の様な無邪気な笑顔に満ちていた。


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滑り込みセーーーーーフ!!アセアセアセアセフルスロットルの大激走で相葉ちゃんお誕生日企画『Friendship』どうにかこうにか駆け抜けました~笑い泣き前後編で終わらせる事が出来ず、中編挟んでの後編、物凄い大ボリュームで終了でっす(さすがに疲れたわ~~汗うさぎ


お話が長くなり過ぎてしまいましたので、辻褄が合わなくならないよう、前の中編を確認しながらの後編でしたので、中後編一気に投稿でございますアセアセ


かなりツッコミ所の多いご都合主義にも程があるお話になっているかも知れませんが😅ゞ潤智の活躍もしっかりと💜💙盛りだくさんのお話には仕上がったかと思いますので楽しんで頂けましたら嬉しいですニコニコ


今回は翔君の出番と潤智のイチャイチャが書けませんでしたが、出来れば更なる後日談として短いのを1つ書いて完結にしたいと考えておりますので、今回はここで締めたいと思いますおねがい


改めまして。。。


相葉雅紀君(‘◇‘)💚𝙃‌𝘼‌𝙋‌𝙋‌𝙔‌𝘽‌𝙄‌𝙍‌𝙏‌𝙃‌𝘿‌𝘼‌𝙔💚🎂


今年は本当に大変な年でしたが💦それでもレギュラー番組に連ドラに、年末の歌番組まで大忙しだった相葉ちゃん💚きっと相葉ちゃんの飾らず明るく、そして優しい人柄が変わらぬ活躍を引き寄せているんでしょうねニコニコ


相葉ちゃんの41歳に幸多き出来事があります様祈っていますグリーンハーツ照れお願いグリーンハーツ