これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ![]()
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前編
『月刊セレクトノベルズ』は月に1度刊行される小説専門の月刊誌である。長編、短編、エッセイ等、あらゆるジャンルの作家がこの月刊誌で執筆しており、ネットでのデジタル購読が主となりつつある現代に於いて、未だに紙の媒体で発刊されている貴重な月刊誌だ。
この月刊誌の編集長が古き良き時代の、紙の媒体に拘って “最後の一誌になるまで刊行する” と気合いを入れており、ネットではなくあくまでも本屋で購入される事を前提に、『月刊セレクトノベルズ』は作られている。
そもそもこの月刊誌を抱える出版社、『創活至高社(そうかつしこうしゃ)』は書店主義な初代社長の【作家の創作活動を具現化して装丁し、きちんと形にした読み物こそ至高!】と言う格言を信念として創立された出版社なので、社員一同それを守り、芸能ゴシップ等の下世話なネタには一切手を出さず、小説やコミックの様な、【作家が書いて読者が読み、そして楽しむ物語】に拘っている。
そんな今どき珍しい出版社が発刊するこの『月刊セレクトノベルズ』が夏の怪奇小説特集を企画したのが今年の6月の事だ。この月刊誌で執筆を担当している作家達がその怪奇小説特集に合わせ、大慌てで作品の執筆に取り掛かったのも無理からぬ事であろう。
そんな担当作家の1人が松本チカラなるペンネームを持つ1人の若い作家である。本名を松本潤と言う彼は、自らに “チカラ” なるペンネームを付ける事で自分を鼓舞し、今まで作家としての仕事に全力を注いで来たが、今回はこれまでに手掛けた事の無い怪奇小説と言うジャンルに悩み苦しんでいる状態だった。
「先生~♭どうするんですか?締切まで後1週間しかありませんよ~♭」東京とは言え、都心からかなり離れたこの奥多摩の『青の原町』なる小さな町の別荘に滞在し、『月刊セレクトノベルズ』の怪奇特集に掲載する新作短編を執筆中の松本は、編集者の中島にせっつかれつつ、まるで何かを受信しているかの如く、組んだ両手の人差し指を頭の上で立てている。
こうしているとたまにいいアイデアが降りて来る時があるからだ。だが今度ばかりは中々これと言ったストーリーが思い浮かばない。「そんな事言ったって中島君。怪奇小説なんて書いた事ないんだから僕には無理なんだよ」
この別荘は今は亡き純文学の大家(たいか)だった松本の父松本信康(まつもとのぶやす)が、避暑の為に建てた古い洋館である。父が亡くなった時によっぽど手放そうかと思っていた松本だったが、執筆に行き詰まった時などに英気を養える保養所があってもいいだろうと思い、色々手直しして今でも時折使用していた。
「こんな田舎に缶詰めしてて何にも無いですか?♭普通何かありません?古い洋館に棲みつく怨霊とか、近所に合戦場があって落ち武者の亡霊が出るとか、そんな話でいいんですから、短いのをちゃちゃっと書いて下さいよ♭」あくまでも合理的な中島の言い草に松本は大きな瞳を見開いて口をへの字に結んだ。
「君は何かい?この僕にそんな薄っぺらな捏造体験談を書けと言うのかね?そんなくだらない心霊現象話はネット検索で山ほど拾えるじゃないか。いいかい?中島君。その辺に転がっている噂話を聞いてそれを文章にするだけなら小学生でも出来るんだ。
我が編集長が求めているのはそんな甘っちょろい素人作文じゃないだろう?僕が書きたいのはもっと読者の想像力を掻き立てる様なハラハラドキドキの怪奇小説なんだよ。エドガー・アラン・ポーの様な…」
「書いた事ないジャンルだから無理とか駄々こねてる割には目標設定がポーですかぁ?♭目指す所が高すぎなんですって♭そんなんじゃ一生書けませんよ先生♭♭」パソコンのWORDにはタイトルすらも未だ書かれていない白紙の画面が虚しく広がっている。
元々松本が得意とするジャンルは人間ドラマの悲喜こもごもが描かれた文学作品だ。デビュー作の『僕たちのデイダラボッチ』は生まれつき体の大きな主人公が、様々な差別や偏見と向き合いながらNBAのスター選手になるまでを描いた感動作で、『創活至高社』の新人文学賞を受賞し、100万部の売り上げを記録して、後に映画化もされた松本チカラの代表作である。
時には叙情的なミステリー要素を含んだエンタメ作品を書いてみたり、血の繋がった兄妹の悲恋を描いた恋愛小説を書いてみたりと、松本なりに作品の幅は広くやって来たつもりだが、本格派と言うよりは、そこそこ人気のライトノベル作家と言った感じが今の松本チカラの立ち位置だった。
そんな “そこそこ人気作家” な松本には他の作家には余りない強力な武器がある。ルックスだ。大卒で作家デビューしてから5年。今年の8月で27歳になる松本は『月刊セレクトノベルズ』を担当する作家の中でもダントツに若くイケメンだった。いささか気取った古臭い喋り方をするのが玉に瑕ではあるが…。
とは言え、自身が小説に登場する美男子キャラの様なその眉目秀麗なルックスは、才色兼備の触れ込みで『創活至高社』の広告塔の様な存在として、時々ファッション雑誌のインタビュー記事なんぞにも駆り出されており、一定数の女性ファンを獲得しているのだから、昔の文豪みたいな、ややおかしな口調も今では松本に定着しつつある。
おかげでいい塩梅の安定した人気を保ったままで、松本チカラは『月刊セレクトノベルズ』の代表作家の1人として安寧の地位を維持し続けていた。だからこそ今度の怪奇小説特集では実録の心霊体験みたいなお手軽な題材では無く、ちゃんとした怪奇短編小説を書きたいのだ。
とは言え、タイトルもままならぬこの白紙画面が1週間後の締切に間に合うのかどうかは実に心許ない状況であった。「あ~ダメだ!何にも浮かばない!そうだ温泉に行こう中島君!」一声あげてノートパソコンを閉じた松本に、編集者の中島が「先生~♭JRのCMじゃないんですから♭」と、悩ましげなツッコミを入れた。
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別荘から車で15分程行った場所に松本行きつけの温泉旅館がある。『四季彩荘(しきさいそう)』と言うその旅館の敷地内には隠れ湯的な秘湯が湧いており、松本はこの四季彩荘に温泉と食事を目当てに時折通っているのだ。
着物の似合う品の良い女将はそろそろ齢70も越えようかと言う老境だが、未だ未だ現役でしゃんとしており、うりざね顔の和風な美貌はまるで浮世絵の様な艶っぽい雰囲気である。
「おや?美男の作家先生。お久しぶりですねぇ。温泉ですか?」ここではすっかり顔馴染みの松本に女将が砕けた調子で声を掛ける。温泉の後は空いた部屋で食事を摂って暫く一休みし、別荘へと帰るのが松本定番の過ごし方だ。
女将の方も慣れたもので松本が来た時には休憩用の一部屋を必ず用意してくれる。「今日は西の『紅葉の間』が空いてますよ先生。今からならお食事時には綺麗な夕陽が見られるでしょう。美味しい鱧(はも)が入ってますんでどうぞごゆっくり休んで行って下さいね」
小粋な微笑みを浮かべながら歩み去るいなせな着物の柳腰に「女将さんは相変わらず美魔女だねぇ~♪中島君はそう思わないかい?」などと軽口を叩きつつ、西の『紅葉の間』に赴いた松本は、早速部屋に用意されていた浴衣に着替えると、嬉しそうに温泉に向かう。
この旅館には宴会場に隣接した大浴場もあるのだが、温泉通が赴くのはそこではなく、旅館から少し離れた場所にある秘湯の方だ。『青娥(せいが)の湯』と呼ばれるその秘湯は浸かると中国故事に登場する美少女、青娥の様に美しくなれると言われており、女風呂は連日沢山の女性入浴客が訪れている。
少し肌に刺激のある酸性湯は肌荒れや切り傷等にも効果的で、確かに入浴後には肌がツルツルした感触になり、その昔は武将や武士の湯治場にもなっていたそうだ。またこの秘湯の特性として、お湯がまるで入浴剤を入れたみたいに美しいブルーだと言うのも珍しい。
何故そんな色になるのかは分かっていないが、この秘湯の近隣にはどういう訳だか季節毎に様々な青い野草ばかりが咲き乱れる奇妙なエリアがあり、その土壌の影響があるのではないかと言われている。
「それにしても青娥の湯とはよく言ったものだ。この美しいお湯の色と『聊斎志異(りょうさいしい)』に登場する美女の名前を掛けたんだね。名付け親は『四季彩荘』の先代社長だそうだから、中々センスがいい」
「『聊斎志異』って何ですか?僕眼鏡外すと視界がぼやけるんでプラス湯けむりでお湯の色なんか全然分かんないんですよ♭あ、温泉は気持ちいいですけど♪」目を細めたり見開いたりして温泉に浸かる松本を懸命に確認しながら、中島はぶるんと顔を洗い、「あ痛たたた♭♭」と仰け反った。
「中島君、酸性湯で顔を洗ったりしちゃ駄目だよ。お湯がしみて益々目が悪くなる」「先に言って下さいよ~♭♭」あたふたとタオルで顔を拭く中島をまじまじと眺めた松本は「君、眼鏡を外すと中々の美青年じゃないか。僕の代わりに『創活至高社』の広告塔になるがいい」と、丸投げする。
「『聊斎志異』は清朝前期に書かれた中国の怪異譚だよ。青娥とはそこに登場する絶世の美少女の事だ。彼女は後に仙人になる。それにしてもこの美しいお湯と周辺の絶景が見られないとは残念な両目だねぇ中島君」「ほっといて下さいよ~♭♭」
季節は8月の後半である。秋の気配には未だ遠い暑さだが、高台にあるこの温泉の周辺は360度の大パノラマで山々の風景が実に涼やかだ。紅葉の季節には更に絶景になるだろう。
「夕食が終わったら番頭さんが別荘まで送ってくれるそうだから中島君も今日はお酒が飲めるよ。蛍の名所があるらしいから夕食後にひとつ散策と行こうじゃないか」「散策する暇があるなら書いて下さいよ~♭♭」
いつもこんな感じで編集者を振り回してばかりの松本だが、一度エンジンが掛かればその集中力は凄まじい。例えどんなに気紛れで変わり者でも、この “そこそこ人気” な作家先生は締切を破る事が皆無なのだ。根は真面目な男なのである。
夕食は鱧のフルコースと旬の夏野菜の天ぷら等、季節に合わせた食材が満載の贅沢な物だった。女将の言う通り、この『紅葉の間』からは茜色の夕日に染まる風情たっぷりな眺望も楽しめて、ビールや日本酒もよく進んだ。
「実に面白い話を聞いたねぇ中島君。やっぱり来て良かったよ」気持ち良くほろ酔い気分になった松本は、中島を引き連れて旅館の近隣にある蛍の名所に向かって散歩がてらそぞろ歩いていた。夏休みシーズンも終わりと言う事もあり、ピーク時に比べると観光客の波もそろそろ引きかけているが、それでも『四季彩荘』の浴衣姿をした人々がちらほらと散見される。
「僕も安心しました。さっきの女将さんの話は作品のヒントになりそうじゃないですか?」下駄の音をカラコロと鳴らしながら、いそいそと松本に着いてくる中島も、美味しい料理や酒の効能か、いつもの愚痴を引っ込めて上機嫌だ。
先程の夕食時、仲居さんと共に食事を運んでくれた女将さんから、この土地に伝わる不思議でちょっと怖い話を聞いた。未だ日本が江戸時代だった頃、この辺一帯は名湯のある隠れ湯の里として地元の名士が旅籠を営んでいたらしい。
当時からこの辺りには青い湯が湧いていたそうで、刀傷もたちまち治ると評判になり、全国から武士が湯治に訪れていた。そんな時、ある無宿人の一味が出入りで負った傷を癒すべく旅籠へとやって来たのである。
当時は貧しい百姓が年頃の娘を遊郭に売りに出す事が良くあった。間が悪い事にたまたま女衒に連れられた若い娘がその旅籠に宿を取っていたのである。粗末な身なりの娘だったが、器量はすこぶる良く、そのまま吉原にでも行けば短期間で1番人気の花魁になれそうな美しい娘だったそうだ。
無宿人一味の親分は旅籠で見掛けたその娘に目をつけ、仲間と共に女衒を殺害すると、嫌がる娘を無理やりかどわかし、散々手篭めにした挙句に斬殺したと言う。
後に無宿人一味は追っ手に捕らわれ獄門に掛けられたらしいが、娘が斬殺された時だけは彼女の怨念がそうさせたのか、湯治場の青い湯がまるで赤い血を流したみたいな紫色に変わったのだそうだ。
娘の名前はお藍(あい)。藍染の元になるイヌタデが生える農村に産まれた娘なのでそんな名前になったらしいが、お藍が斬殺されたこの温泉地では、彼女が殺された晩夏の時期になると青白く光るお藍の亡霊が彷徨い、悪さをする男を祟り殺すと言い伝えられている。
「実際この地を訪れた荒くれ者が何人か亡くなっているんだそうですよ。まぁ、荒くれ者なんて大抵は何処かで恨みを買っているんでしょうし、偶然だとは思いますけどね。先生もあんまり女の人を泣かせる様な真似をしていたら、お藍さんの青い亡霊に祟られるかもしれませんよ」
女将はそんな怖い事を言ってホホホと微笑ったが、幸い松本には女性との色恋沙汰で揉めた経験が全くない。白面の美貌でしかも作家だと、いかにもモテそうではあるが、いかんせん松本は変わり者なので、そう言った生臭い事にはさほど興をそそられない性質(タチ)なのである。
成り行き上仕方なく出版社の広告塔みたいな事をやってはいるが、実際のところ好きでやっている訳でも無く、いささか面倒臭いとも思っているので、青娥の湯で編集の中島に丸投げた事はあながち戯言とは言えないのだ。
「悪党を彼岸に誘う青い美少女の怨霊なんて実に興味深い。まさしく『青の原町』に相応しい伝承だねぇ。この町は何かと青と言う色に縁がある」「本当に出たらちょっと…いやかなり怖いですけどね~♭♭」
蛍の名所は『四季彩荘』から歩いて10分程の小川にあった。小さな橋が掛かっており、控えめにぶら下げられた提灯がほんのりと辺りを照らしているが、それが蛍の光を邪魔する事はなく、川向うの叢(くさむら)に無数の丸い光が飛び回っているのが確認出来る。
「これは美しい。デジカメを持ってくれば良かったねぇ、中島君。スマホでも撮れるだろうか?」スマホを翳して蛍を連写した松本は、写真を確認すると残念そうに溜め息をついた。
「ああ、やっぱり駄目だ♭何だかよく分からない♭」「長時間露光可能なアプリを入れとかないと無理ですよ先生」「君の言う通りだ。おや?この一枚だけは随分良く撮れているよ」スマホの写真を指先で広げて拡大する松本の動きが止まる。
「違うね、これ蛍じゃないなぁ~。人みたいだ」「えっ?♭♭」ギョッとした中島が大きく拡大されたスマホの写真を覗き込む。そこに写っていたのは蛍とは違う青白い光に包まれ、叢の隙間からこちらを見ている様な、白い着物の女性らしき姿だった。
「せ、せ、せ、先生♭まさかこれ…♭お藍さんじゃあ…♭♭」浴衣の袖で眼鏡のレンズを拭き、スマホの写真を2度見3度見した中島が顔を引き攣らせて青ざめる。「青い美少女の亡霊かい?何だか楽しい事になりそうだねぇ♪」
スマホを見つめて口元を綻ばせるこの変人作家の端正な横顔は、何故だかえらく愉しげであった。
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皆様大変長らくお待たせ致しました~😣😣💦💦潤君のお誕生日企画を書く良いテーマが全く浮かばず、MARKIE抜け殻の様になっておりました~![]()
←(それは夏バテ
)
始めは既存のストーリーからの短編作品をと考えていたのですが、出来れば今までにないキャラクターの新作にしたいと思い、だいぶ思い切ったキャラ設定の潤君を誕生させてみました![]()
最近面白いと思っているドラマのひとつに『ハヤブサ消防団』と言うのがあるんですが、田舎町にやって来た作家が事件に巻き込まれるってパターンも有りかと思い、そう言えば潤君って『となりのチカラ』で物書きの役してた事あったと思い出し、今回の潤君のキャラクターが出来ました![]()
聡明だけどちょっと変人の美形作家だったり、そんな主人公に振り回される編集者だったり、ミステリーには割とありがちなパターンではありますが、ちょっぴりゾクッとする様な旅情ミステリー的な要素の短編に出来たらいいなと思っております![]()
因みに編集者の中島君は、セクゾンちゃんのケンティー君ですが、これも最近面白いと思っているドラマ『シッコウ』に登場する眼鏡青年の役柄のイメージで書いています
あのドラマのケンティー君って見事なまでにいつものキラキラ王子様オーラを消していて(褒めてます♡)すごいなぁ~と毎回感心して観ています![]()
今回の前編では未だ智君の登場はありませんが、後編ではタイトルにある潤君ソロ曲のイメージにガッツリ絡む登場となりますので続く後編もお楽しみ下さいましたら嬉しいです![]()
因みに作中に登場する『青の原町』も、旅館も秘湯も作者が創作した架空の場所でございますので、実在していない事をお伝え致します←(そんなんばっか😅💦)でもこんな町が実在したらサトシックの聖地になりそうですよね![]()
潤君お誕生日まであと5日☆MARKIE果たして間に合うでしょうか?
どうぞ生温い目で見守ってやって下さいまし~🙇🏻♀️"