これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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拾六之巻


「…実はな、そなた達大和からの客人の事は聶耳人(じょうじじん)村の村長から聞いたのだ。聶耳人は耳の大きな民族でな。南方に住む異民族達が金妖帝飛のせいで暮らしが脅かされている事を心配して北方から訪ねて来てくれたのだよ。


何せ腰に垂れ下がる程大きな耳を持つ聶耳人だ。丁度尸解道院寺を通り掛かった時に、尸解仙人やそなた達のやんごとなき事情を漏れ聞いたらしい。大和の国から来た五名の若き魔道士達が、金妖帝飛に拐(かどわ)かされた都の姫君を救おうとしているとな。


何せあの金妖帝飛は恐ろしい魔物だからのぅ。失礼ながらそなた達の様な若い魔道士では歯が立たぬのではないかと訝しんでいた。そこで儂はそなた達がこの場所を通り掛かるのをずっと待っておったのだ。


生者である姫君が魔道で生存していられる期限は短い。明日までにそなた達が来なけば恐らく姫君の寿命は尽きる。だから来るのは今夜辺りになるだろうと考えていた。だが、儂が思っていた以上にそなた達の到着は早かったな」


三首人村の村長はここで一息ついてから改めて己が考えを話して聞かせた。「真ん中と右のお二方にはそなた達の能力を試す仕掛けを手伝って貰った。六博(りくはく)は相手の手の内を読み、警戒心を怠る事無く臨機応変に対応する能力を測る。対句は語彙力と知識量、正しき答えを瞬発的に導く才を測る。


金妖帝飛は魔道の悪鬼の殆どを誑(たぶら)かし、自分の手足として操れる特殊な能力を持っている。妖術が使えるだけでは駄目じゃ。相手の手の内を読み、常に警戒心を持ち対応する力も必要だし、緊急事態に於いて正解を瞬発的に導き出す才も必要だ。


だがその一方で素直さや他者をいたわる優しさが信頼を呼ぶ事もある。そして何事にも揺るがぬ忍耐力と集中力は強敵と戦う為の、自らの能力を最大限に引き出す無限の可能性を秘めておる。


儂は何故大和の葛葉女皇帝が、そなた達の様な若い魔道士に姫君救出の役目を与えたのか分からなかった。未だ金妖帝飛が妲己と呼ばれ、美女の顔をしていた時代には、かの太公望殿がその正体を見破った。


詰まり神と呼ばれる程の知恵者だった太公望殿にしか金妖帝飛は討ち取る事が出来なかったと言う事じゃ。そんな彼奴を討ち取る為に集結させられたのが未だ二十代の若い魔道士達だとは何を血迷っておるのかと思ぅてな。


もし儂の予想通り、そなた達が半端な魔道士であれば村に連れ帰り、姫君の命の期限ギリギリまでたっぷり修行させねばならないと考えていたのだが、どうやらそれは杞憂であったらしい。


そなた達五名の間ではちゃんと役割分担が出来ており、誰かの足りない部分は他の誰かが補い、そうやって互いに互いを補い合う事がごく自然に成立しておる様だ。五行の魔道士とはよく言ったものよ。


その上天門の二名は水蓮大那寺の大僧正と、天竺黄金寺の老師に師事しておったと言う。これは太公望殿以来の大逆転劇が期待出来るやも知れん。道理で尸解仙人や白澤の様なへんこつ爺さんがそなた達に協力しておる筈じゃ」


三首人の村長は五人へと順繰りに視線を巡らせ、三つの頭でニンマリと笑った。〖ふん、人の事言えんだろうが♭しかし五人の事を話したのは聶耳人の村長であったか。異形の民族達は横の繋がりが強いからなぁ〗白澤の声が呟く。


「この三ツ辻は真ん中の道を進め。黄の若者も赤の若者も、六博と対句勝負見事だったぞ。約束通りみんなに褒美をやろう。六博勝負で強さを見せた黄の若者にはどんな声真似も出来ると言う讙(かん)の毛。


対句勝負で才を発した赤の若者には指しただけで相手を動けなくする風狸(ふうり)の狩猟杖(しゅりょうつえ)。心優しき緑の若者には姿を隠せる翳形草(えいけいそう)で編んだ扇じゃ。


それから水を操る黒の若者には決まった土地に洪水を起こせる化蛇(かだ)の鱗。剣を操る白の若者には剣難を防ぐ駮(はく)のたてがみを進呈する。


いずれも儂がこれまでの二百年の年月の中で集めた収集品だが、どの品もきっと金妖帝飛との戦いでそなた達の役に立つであろう。五行の若き魔道士達よ。


金妖帝飛は手強い敵じゃ。勝敗を急(せ)くでないぞ。先ずは敵を知り、ちゃんと疑う事から始めるのだ。恐らく彼奴は美しき姿で甘言を弄(ろう)し、そなた達をたぶらかそうとするであろう。


だが、決して彼奴の誘いには乗るな。金妖帝飛の美しさも甘い言葉も、彼奴の邪(よこしま)な策略あっての事じゃ。もし迷いが生じた時は速やかに尸解道院寺へと撤退し、作戦を練り直すが必定。


ただの人である姫君と違い、そなた達は神通力が使える麒麟、朱雀、緑龍、白虎、玄武の後継者だ。姫君の期限は明日まででもそなた達であれば更に七日間の滞在が可能になる筈。ならば此度は姫君の救出を優先した方が良いかも知れん。


恐らく金妖帝飛は姫君を死なせて鬼に変化(へんげ)させ、他の魔物共の様に自分の手下の如く自在に操りたいのじゃ。人が一度鬼と化してしまえば姿を自由に変える事が出来るようになるからな。


生き肝を食って一時的な力をつけるよりも、姫君を鬼化させた方がもっと便利だと考えたのであろう。あるいは他に喰らいたい者を見つけたか…。いずれにせよ、姫君が未だに健在である事だけは確かだ。


儂の与えた品々が、妖狐魔殿までの道のりの過程でそなた達に有利にはたらく事を祈っておるぞ」三首人村の村長は真ん中の顔に命令し、腰巻きの中から取り出した角笛を吹かせると、その合図を聞いて駆け付けて来た別の三首人に、自ら収集した珍品を持って来させた。


麒麟之守和也には小さな黄色の巾着袋に入った茶色と白のまだら模様がある獣らしき体毛を与え、「この讙の毛を喉に貼り付け、声真似したい者の名を告げるんじゃ」と、使い方を伝授する。続けて朱雀之守翔に草の茎で作った様な、小さな杖を与えると、その使い方を説明した。


「これは百年くらい前に悪さばかりする風狸から儂が取り上げた狩猟杖じゃ。風狸とは斑紋のある青い山猫の仲間でな、この狩猟杖は風狸が獲物を狩る為に使用する物で、この杖で相手を指し示すとその相手は動けなくなり、簡単に獲物を捕らえる事が出来る。


金妖帝飛の様な上級妖怪に効果があるかどうかは分からぬが、下っ端の妖狐共には効くだろう。妖狐の特徴はすばしこい動きで炎を自在に操れる能力じゃ。この杖で動きを制してからの方が戦い易いであろう」


次に村長は艶々した若葉で編まれた折り畳み式の扇を緑龍之守雅紀に与えて言った。「翳形草は天界に居る火烏(かう)と言う鳥が落とした種が南山で育った草花でな、この草で編んだ扇は使う者の姿を隠す不思議な力がある。この扇を顔の前で広げ、 一言 “隠せ” と言うだけで良い」


そして村長は玄武之守智に虹色に輝く1枚の鱗を手渡すと、それを使ってこの先の溶岩道に洪水を起こすやり方を伝授する。


「化蛇と言うのは人の如く顔に山犬の様な胴体、蛇の尻尾を持つ水中の化け物だ。ここから先、妖狐魔殿の入り口へと続く道中には溶岩で出来た溶岩道がある。それは広範囲に渡って延々と続く灼熱の道で、炎を操る妖狐にしか通れない難関じゃ。


だが妖狐魔殿へと赴くには絶対に溶岩道を通らねばならぬ。水妖術が使える魔道士なら水流を起こし、あの道を冷ます事は可能だろうが、あの溶岩道を完全に冷却するにはかなりの時間が掛かり、魔道士は疲労困憊してしまうであろう。


じゃがこの化蛇の鱗さえあれば簡単だ。これを溶岩道に投げ入れて術を掛けるだけで、たちどころに洪水が起こり、道を冷却する事が出来る。これは水妖術を使える魔道士にしか出来ない技じゃて、そこな黒の若者であれば必ず成し遂げられるであろう」


最後に村長は白いたてがみを白虎之守潤の腰にある斬魔刀の鍔(つば)にしっかりと結び付けると強く頷いた。「これは駮と言う、虎の四肢を持つ一本角の生えた巨大な白馬のたてがみでな、駮はどんな猛獣も食い殺せる程の鋭い牙があり、この白馬には剣難を防ぐ能力があると言い伝えられておる。


そんな駮のたてがみを剣に結ぶと、決して刃こぼれをせぬ強い剣になる。見た所、そなたの持つ太刀は特別な力を秘めている様子。この太刀であれば駮のたてがみが持つ効能を最大限に生かせるであろう」


どうやら金妖帝飛の傍若無人は魔道共通の厄介事らしい。三首人の村長がくれたこれらの収集品をありがたく受け取った五人は、お礼に猩々から貰った緋色の毛織物を村長に渡そうとしたが、村長はその毛織物を一目見た途端、それを差し出す翔の手をそっと押し返した。


「これは猩々緋(しょうじょうひ)と言って、猩々達が自らの体毛で織り上げた特別な毛織物でな、この鮮やかな緋色は例え何百年経とうとも決して色褪せない最高級品じゃ。これを持っていると言う事は猩々達がそなた達を朋友として認めた証。


ならば儂が持つよりもそなた達が持っている方が良いであろう。人界だと家が一軒建つ程の高値で売れる代物だぞ。それにな、猩々緋には別の使い道もある。赤の若者よ、そなたならこれを上手く使いこなせる筈じゃ」


「何と、これが猩々緋でしたか…。猩々の頭領からこの毛織物を渡された時、まさかとは思っておりましたが…」翔は手の中にある風呂敷包み程のふさふさした美しい緋色の布をためすがめつ眺め回してから、納得した様に懐中へとしまい込んだ。他の四人がその様子を不思議そうに見つめている。


こうして三首人村の村長と別れた五人は三ツ辻の真ん中の道を再び南方へと向かい、歩み始めたのであった。



三首人村の村長さんですニコニコパソコン検索では三首人のモノクロ線画しか見つからなかったのでアセアセ色付けして草原やら道やらのフリー画像を合成し、加工致しました~星(めっちゃ大変だった滝汗)仏像感ありありですね~♪


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「愉快な人達でしたねぇ~♪私はすっかり六博なる遊戯盤が気に入りましたよ♪」六博がよっぽど楽しかったのか、上機嫌な和也に、雅紀がアヒャヒャと微笑う。


「ま、人達と言っても体は一つだがな♪」「お顔は三つなんですから複数系でい~じゃありませんか♭」「それにしても物知りな村長だったな。だが先程の村長の話が確かなら、金妖帝飛が俺達に何だかんだと仕掛けて来て、わざと到着を遅らせようと画策しているのにも合点が行くと言うものだ」


斬魔刀の鍔に結ばれた駮のたてがみを指先で弄びながら潤が前方を行く翔に聞いた。「朱雀之守殿はどう思う?始めは金妖帝飛が俺達の実力を試す為に嘉子姫を人質にしておびき寄せているのだと考えていたが、どうもそれだけじゃ無さそうじゃないか?」


「うむ。村長殿の仰る様に金妖帝飛は嘉子姫を鬼にして自分の仲間にしようと画策しているのかも知れん。姿を自在に変えられるのならば人の姿をした嘉子姫を都に送り込み、帝を意のままに操る事も出来そうだしな」


「じゃが都には安倍晴明殿がおられるであろう?鬼と化した嘉子姫では直ぐに正体が見破られそうだがのぅ~」翔の言葉を受けて智が言う。すかさず雅紀が「帝と共に寝所に引きこもってしまえば案外分からんぞ♪」と、茶化した。


そんな会話をしながら歩み続ける事暫く、漸く南山の下り口に差し掛かる。山越えが終わったのだ。周辺の空気に熱が篭もり、硫黄の匂いも少し強くなって来た時、一同の前方にある切り株に腰を下ろし、蹲る痩身の女が目に入った。


薄衣で縫われた桃色の唐服を身に纏い、銀の玉かんざしで髪を束ねたその女は、今にも倒れそうにナヨナヨと折れ曲がりながら通り掛かる五人に顔を向ける。目が覚める程に美しい女だった。真っ先に声を掛けたのは雅紀だ。


「これは美しいお嬢さん。どうしました?この先は危険ですよ」あれ程美女には気をつけろと釘を刺されていたにも関わらず、何も学習していない雅紀の着物の背を掴み、和也が「待ちなさいよ♭」と、引き止める。


だが女から瘴気は感じられず、また斬魔刀の鍔も鳴らなかった。白澤の声が響く。〖用心しろ、上級妖狐なら瘴気を出さずに化ける事も出来るぞ…〗すると翔が懐中から猩々緋を取り出して美女に近づき、「お嬢さん、そんな切り株に腰掛けていては美しい着物が汚れますよ。これを敷いて下さい」と差し出した。


「これはご親切にありがとうございます」そう言って美女が猩々緋を手に取った瞬間、翔は素早く猩々緋を美女から取り上げて後退し、いきなり掌から火の玉を放出させた。ギャン!と言う悲鳴を上げてもんどり打った美女は見る見るうちに白い大きな狐へと変化すると、悔しげに「瘴気を消したのに何故分かった?!♭」と五人を見上げた。


どうやら翔の放出した火の玉をモロに食らって動けなくなってしまったらしい。腰の辺りに火傷の痕が見えた。尻尾が二つに割れている。上級妖狐だ。「この猩々緋は悪しき者が触れると鮮やかな緋色に影が差す。幾ら瘴気を消した所で誤魔化す事は出来ぬ」


「猩々緋だと?!♭♭」この言葉を最後に白い上級妖狐は煙の様に消滅した。抜刀された斬魔刀が剃刀の様な光を放ったからだ。駮のたてがみの力か、その威力は直接刃先に触れなくとも上級妖狐を一刀両断に出来る程向上している。


白い妖狐が消えた跡に残っていたのはいつもの黒い巻物であった。「白虎潤殿は冷酷だなぁ~♭何も傷ついた狐を成敗しなくても…♭♭」妖狐に同情しつつ巻物を拾い上げる雅紀に翔が説教をする。


「甘いぞ雅紀殿。先程の妖狐は尾が二つに割れていた。瘴気を簡単に消せる程の強い妖力を身につける為に、あの妖狐がどれだけの罪なき民を喰ったと思う?ただの野狐とは違うのだ。下手な同情は身を滅ぼすぞ」


「だから駄目なんですよ雅紀さんは♭魔道に居る美女は明らかに怪しいんですから、ほいほいたぶらかされないで下さいね♭♭」翔に続いて眉を顰める和也に、雅紀はすっかり悄気(しょげ)て「済まん♭♭」と言った。


どうやら先程の上級妖狐は余りに早い五人の到着にだいぶ慌てていたらしい。巻物には【溶岩道】としか書かれておらず、最後の謎を記す前に美女に化けなくてはならなくなり、そのまま成敗されたのであろうと推察された。


「恐らく最後の謎は溶岩道の冷却について書かれる予定だったのであろう。村長殿の話しだと本来ならば智殿の能力を以てしてもかなり大変な作業らしいからな」翔はそう推測すると、ハッとして潤に寄り添う智に視線を向けた。


「もしや金妖帝飛の奴…♭最後の謎で智殿を疲れさせたかったのでは…?♭先程村長殿は嘉子姫の他に喰らいたい者がいたのかも知れないと仰っていた♭智殿の母御は人魚だ…♭人魚の肉は永遠の命を得ると聞く…♭♭」


潤の顔色が変わる。「まさか今金妖帝飛の標的にされてんのは智か?!♭♭」薄ら寒い空気が五人の背中を這い上がって行く。周囲の気温は高いのに、何故かゾクリと戦慄する一同であった。


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三首人村の村長さんからためになるお話を聞き、珍しい餞別も貰った五人でございます😊今回は三首人だけではなく、聶耳人に讙に風狸に化蛇に駮にと、たくさんの妖怪の名前が登場致しました~ウインク


山海経には他にもいろいろな妖怪のイラストと名前が記されておりますが、平安時代には実際に存在していた中国の書物ですからね~📔昔の人ってのは本当に想像力が豊かだったんだなぁ~っと思います爆笑


因みに猩々緋と言うのは本来猩々が織る毛織物ではなく、実際は人間が猩々を乱獲し、その血液で染めた毛織物だそうで、緋色が色褪せない高級品だったと記述されていますガーン

 

今回は猩々緋の色褪せないと言う特徴だけを参考にして書いておりますので、最後に出て来た悪しき者に触れると色が変わると言うくだりも含め、殆どが私の創作なので、そこはヌルッとスルーして下さいませ~😅


他にも山海経に記されている妖怪の中では薬効成分のある物もいたりして、人間に捕らえられては食べられたりしていたと言う記述も割と良く出てきます滝汗


やっぱりいつの世も人間ってのが一番罪深い生き物だったんだろうと、妖怪の事を調べる度につくづく考えさせられているMARKIEでございました~汗うさぎ


さて、次回はいよいよ妖狐魔殿に到着…出来るかも??アセアセアセアセ村長さんから貰った餞別もしっかり役立つ予定ですので、いささかスローテンポではございますがタラー待っていて下さればと思っております🙇🏻‍♀️⸒⸒