これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
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拾之巻
寺を荒らす原因となった僵屍(きょうし)達を全員成仏させた事で、修復も完了した尸解道院寺(しかいどういんじ)は、初めの印象とは殆ど間逆と言える程に大層立派で荘厳な寺院であった。
敷地内に漂う清浄な気もさることながら、魔道だけではなく、人界や神獣界、天界に至るまで、この世の全ての情報が凝縮された、まるで巨大な書院の如く建物であり、成る程亡者達を正しく導く役割を果たすだけの事はあると、誰もが納得出来る魔道の頭脳とも言える場所となっている。
「なぁに心配する事はない。手入れが行き届かずに荒れてはおったが、この寺の結界は天帝が張ったもので強力じゃからのぅ~。九尾如きが破れるもんじゃ無いわい。従って魔物が襲って来たりする事も無いから安心して滞在すりゃあええ」
寺の食堂と思しき場所で、円卓を杖で叩いて蒸し鶏やら粽(ちまき)やらのご馳走を次々と出現させながら、尸解仙人は酒盃を傾けた。相当の酒好きと見えて先程から手酌で何杯も飲み干している。
「あのぉ…♭つかぬ事をお伺いしますけど、このご馳走は鬼市(きし)で手に入れた物じゃないですよね…?♭」恐る恐る尋ねる麒麟之守和也に尸解仙人は明るく笑って答えた。
「鬼市で売っているものは亡者にはご馳走じゃが生者にはとても食えたもんじゃ無いからのぅ。儂は一旦死んでから蘇り、天帝からここの守護を任された爺ぃじゃて食いものは人界から取り寄せておるんじゃ。これでも結構食通なんじゃよ」
それを聞いて安心したのか、和也は山菜と餅米を炊き込んだ粽を頬張り、「これは美味ですねぇ~♪」と、舌鼓を打っている。緑龍之守雅紀に至っては既に蒸し鶏を胡麻だれに漬けて美味そうに食べながら振る舞い酒ですっかりご機嫌になっていた。
葛葉貴妃から賜った心眼のおかげで言語にも全く不自由する事が無く、五人と尸解仙人はまるで祖父と孫の如く様子で親しく言葉を交わし、ひと時の安らかな酒宴を楽しんでいるのである。
「成る程のぅ~。あの僵屍共は九尾の仕業か。純愛を貫いて修行を重ねた葛葉ちゃんと違って妲己(だっき)は性悪じゃったからなぁ~。殷帝を誑かして残虐の限りを尽くしていた頃は、若い娘の生肝を喰らったりもしておったそうじゃ。
傾国の美女と謳われる程の美貌の持ち主であったが、九尾狐の正体を太公望に見破られ、三つに分裂した後はそれぞれが別の国で成敗された筈じゃ。葛葉ちゃんは殷時代に呼ばれていた名で彼奴を妲己と呼んでおるが、現在の妲己は正確にはもう妲己では無い。
あれは三つに分裂した後で百済に渡り、唐に舞い戻って来た妲己の成れの果てで、今じゃ金妖帝飛(きんようていひ)などと偉そうな名前を名乗っておるわい。しかしまさか儂が僵屍共に手こずっていた間に大和の魔道とこちらを繋げておったとはのぅ~。
挙句に都で姫を攫いお主達をおびき寄せる様な真似までしおって油断も隙も無いわい。どんなに御大層な名前を付けた所で性根が変わっておらぬのだから所詮は悪たれじゃ。いかに見た目が美しかろうと偽物の美女では葛葉ちゃんの足元にも及ぶまいて」
「何と、妲己は名前が変わっていたのですか?」朱雀之守翔は唐の蒸し饅頭の美味さに仰天しながら、「それにしても何故妲己…もとい金妖帝飛なる九尾狐は我々の実力を試す様な真似をしているのでしょう?これもひとつの戦略なのでしょうか?」と、尸解仙人に聞いた。
「そうじゃのぅ~。わざわざ巻物で判じ物を作ってお主らの能力を図り、万全の体制で待ち構えるつもりなのか、あるいは他に目的があるのか…。ひとつ言える事があるとすれば彼奴には嘉子姫を返すつもりなど無いと言う事じゃ。
姫は未だ幼く愛くるしい女人じゃと聞いた。若い美人は金妖帝飛の好物じゃからのぅ。鬼になってしまう前に喰らう筈じゃ。これは儂の見解じゃが、金妖帝飛がお主らの実力を試す様な真似をしているのは、もしかしたらお主らを倒す為では無く、仲間に引き入れる為なのかも知れん。お主らに実力があると分かれば味方にする方が彼奴には有利じゃ。彼奴の目的が大和の国の征服ならば余計にな」
尸解仙人は酒ひょうたんからまたドボドボと酒盃に注ぎ、美味そうに飲み干した。お椀の様な大振りの酒盃で、先程から何杯もこうやって飲んでいるが、酒ひょうたんからは一向に酒が減る気配が無い。
「そのひょうたんはたくさんお酒が入るんですねぇ~。お爺さん程では無いにしても、私達もさっきからだいぶ頂いてますけど、未だ未だお酒が入ってそうじゃないですか?」和也の質問に尸解仙人は「これは白澤(はくたく)の醸造した酒じゃよ。果実と花を発酵させて醸造した美酒でな、幾ら飲んでも減る事が無いんじゃ」と、ニンマリ笑った。
その白澤と言う名前に翔がすかさず反応を見せる。「白澤と申しますとあの白澤大師ですか?この魔道におわすので?確か山羊の如く姿の三ツ目の瑞獣だと私の読んだ書物には書かれてありましたが、万物の理(ことわり)の全てをご存知の明晰な方だそうですね?金妖帝飛との対決にあたり、出来ればお知恵をお借りしたいのですが、お話出来ますでしょうか?」
この言葉を待っていたのか、尸解仙人は満面の笑みを浮かべて「『山海経』じゃな?人界に降りる時以外は山羊の姿をしておらん、ただの厳つい爺ぃじゃが、ありゃだいぶ偏屈な頑固爺ぃじゃぞ?チューチュエ。じゃがお前さんならあの爺ぃと話が合うかも知れん」と、答えた。チューチュエと言うのは朱雀の事だが、何故か尸解仙人は五人を守り神の名前の中国発音で呼ぶのだ。
その方が呼びやすいからと言うのが理由だが、葛葉や金妖帝飛は大和の発音だし、その辺の所はだいぶ自由な尸解仙人である。他にも和也は麒麟の “チーリン” と呼ばれ、雅紀は緑龍の “チェンロン” 白虎之守潤はかつて天竺の老師が彼を呼んだ “バンフー” 玄武之守智に至っては玄武の “ショワンウー” を端折って “ショワン” などと呼ぶ。
大和だと小難しい名前も中国発音だと何処か可愛らしい響きがあるのは尸解仙人の遊び心なのだろう。一体何百年生きてきたのかは計り知れぬが、尸解仙人にとってはここに居る五人の若者は未だ未だ赤子の如き可愛い存在なのかも知れない。
「それじゃあひとつ儂が手助けしてやろうかの?チューチュエは白澤の住処に行ってあの爺ぃから良い知恵を授かって来ればええ。チーリンとチェンロンは儂と共に金妖帝飛が勝手に繋げた大和と唐の魔道の境い目を塞ぎに行くんじゃ。それから天門のバンフーとショワンは…」
尸解仙人は潤と智を順繰りに眺めやってから「桃源珠水泉(とうげんしゅすいせん)じゃな。特に半妖のショワンにはお勧めじゃ。上手く行けば嘉子姫を容易く救い出せるやも知れん」と、この謎めいた場所へ赴く様助言を与えてからムフフと微笑った。
「さぁて、金妖帝飛めがどう出るか見ものじゃのぅ~♪彼奴は儂が飲んだくれの呆け爺ぃじゃと侮っている節があるからちぃっとばかし反撃をしてやろう。思わぬ番狂わせが最後には計算高い彼奴の首を締めるじゃろうて。
じゃが例え成れの果てでも九尾は九尾じゃ。ご油断めさるな御一同。帝をも誑かす化け上手じゃから、もし妖狐魔殿へ赴く道中で眩い程の美女に出くわしたら要注意じゃよ。
困った時は葛葉ちゃんから貰った心眼に問えばええ。お主らの額にある第三の眼はきっとその美女の正体を見破るじゃろう。恐らく男の 印 が彼奴の 股 ぐらにぶら下がっておるに違いないでな」
「ぇぇえええええ?!♭♭♭」尸解仙人の忠告に全員が仰け反った。特に狼狽したのは雅紀である。今の今まで敵の九尾狐は葛葉貴妃と同じ女人だと思っていたからだ。「おっおっおっ♭♭男なのか?!♭♭」これにはだいぶ衝撃だったらしく、雅紀は「いかん♭悪酔いしそうになる♭♭」と、項垂れた。
「成る程♭妲己と呼ばれていた頃から若い娘が好物だったのは雄の九尾が美女に化けていたからなのですね?♭確か唐国の宮廷では後宮(こうきゅう)と呼ばれる我が国の朝廷内裏みたいな場所があり、そこに皇后様や多くの側室達が住まわれておられるとか?
朝廷の内裏と違い唐国の後宮は男子禁制で帝以外の男は絶対に立ち入れぬと聞き及んでおります。後宮の女人達は全て帝の物であり、他の男と間違えがあってはならないと言う理由で厳しく取り締まっているとか…。後宮に入れる男は宦官(かんがん)と呼ばれる去勢された男だけだそうですね?」
「去勢って…♭♭切るのか?♭アレを?♭♭」翔の言葉に雅紀が自分の股間を押さえて「恐ろしい…♭♭」と、縮み上がる。「だが上手いやり方ではあるな…。九尾好みの若くて美しい娘は後宮に揃っている。殷帝さえ騙せれば後はやりたい放題だ。九尾狐が潜伏するのに後宮程最適な場はなかっただろう。狡猾な奴だ…」
妲己の行動を分析した潤が険しく眉根を寄せて小さく首を振った。厄介な相手だと思っているのだろう。傍らに腰掛ける智が潤を励ます様に声を掛ける。「うむ、確かに狡猾だが殷帝の時代と今は違う。金妖帝飛と名を変え、魔道に棲まっているのも彼奴の力が衰えた証拠であろう。殷帝の時代の様にずっと女人に化けているのが難しいのじゃ」
智の言葉を受け、尸解仙人もそうじゃそうじゃと同意した。僧侶と仙人で何か通ずる物があるのか、年寄りじみた語り口調も相まって、まるで同門の師弟の如く見える。和也が「話し方だけ聞いてると智さんも充分お爺さんですよ」と、突っ込んだ。
「時に尸解仙殿。儂の見た所、尸解仙殿には何やら秘策がおありのようじゃ。取り急ぎ嘉子姫だけでも都にお返ししたいのだが、先程尸解仙殿が申された桃源珠水泉なる場所に儂と潤が赴けばそれが叶いますかな?」
「恐らく。バンフーとショワンであれば可能じゃろうて。何せショワンの母御は人魚じゃからのぅ~。あの泉とは相性も良いであろう。腹ごしらえが済んだら早速赴くが良いぞ」潤と智の酒盃に酒を注ぎつつ、尸解仙人はまた意味深にムフフと微笑ったのである。
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またぞろ元ネタに滅茶苦茶なアレンジを加えてしまいました~妲己が実は男性だったなんて記述は何処にもありません
まぁ、妲己が三つに分割したお話は玉藻の前の伝説で実際にあるものなので、三つの中の1人くらい男性がいてもいいんじゃないかと私が勝手に創作した展開でございますゞ因みに金妖帝飛なる名前も、もし妲己が男性ならもっと男らしいお名前の方がいいんじゃないかと私が命名した創作でございます😅⟵(嘘ばっかじゃん💦)
今回の平安怪異譚はこんな感じで作者の創作もだいぶ入っておりますので、絶対に信用してはいけませんよ~
さて尸解仙人のお爺ちゃんが言った桃源珠水泉なる場所が気になる所ではありますが、それはまた次回のお話で。。。そろそろラスボスの妲己ならぬ金妖帝飛も登場するかも…🦊
相変わらずスローペースで物語は進んでおりますが(このお話調べ事が多過ぎるのよ~💦)どうか懲りずにお付き合い頂けましたら嬉しいです🙇♀️🙇♂️🙇♀️