これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
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九之巻
僵屍(きょうし)は成仏出来ずに悪霊化した死体の事である。熊の如く怪力を持ち、人を襲って喰らうらしい。もし不成仏のまま長期間を過ぎれば神通力などが身につき、空も飛べるようになると言う。
僵屍を倒すには全身を焼くか、邪霊を滅する呪文をかけて成敗すると良いとされており、唐の “道士” と呼ばれる術士などは僵屍の額に呪文を描いた札を貼り付けて、動きを封じるのだそうだ。
并封が吐き出した巻物の地図に従い、尸解道院寺への道を歩みながら、朱雀之守翔は僵屍に関するそんな説明を一同に話して聞かせた。やがて賑わいを見せていた鬼市(きし)の風景が途切れ、打って変わった殺風景な一本道が五人の眼前に現れる。
「嫌だねぇ~♭何だか急に魔道~って感じになったじゃありませんか♭それにやけに臭いですよこの道♭本当にこの方向で合ってます?♭♭」麒麟之守和也が鼻をつまみつつ、傍らを歩む翔に尋ねた。
薄暗い林に向かって続くその一本道は、まるで戦の跡の様な荒涼とした光景が広がり、一本道の周囲には痩せ衰えて、腹ばかりが膨らんだ童子程の大きさの小鬼が動物の死骸の周囲に群がっていた。白虎之守潤の持つ斬魔刀が小さくチャリンと鳴る。鬼とは言え瘴気はさほど強く無いらしい。
「あれは餓鬼じゃのぅ~。後継者無しに死に、供養する者がおらぬ亡者があの様なあさましき姿になるのじゃ。この道が臭いのはあやつらのせいであろう。餓鬼は物欲が激しく、なんでも喰らう貪欲な魔物だが、小物じゃて儂らには近づく事も出来ぬ故心配いらん」玄武之守智が言った。
「餓鬼か…。道理で斬魔刀の鍔鳴りも小さい筈だ。だが餓鬼と言うのは本来大和の魔物ではないのか?何故唐の魔道に居る?」潤の問いかけに緑龍之守雅紀が「そりゃ今は大和と唐が繋がっているからではないのか?」と、返答する。
だが知恵者の翔に言わせれば事はそう単純では無いらしい。「恐らく唐国では別の名を持ちここに巣食っておるのだろう。例え性質は似ていてもこ奴らは大和の餓鬼とはまた異なる魔物なのだ。
この様な例は幾らでもあるぞ。大和と比べて唐は歴史が古いからな。遙か悠久の昔に唐から大和に入って来た魔物なども居るだろうし、それこそ葛葉貴妃様と妲己の様に、同じ九尾でも出自が違うと神獣にも魔物にもなる訳だから区別するのは中々に難しいであろう」
「成る程」潤が納得して頷いた。五人が道を進むと、餓鬼達はキキッと言う猿の様な軋んだ声を上げて慌てて四方に飛び退き、口の大きいざんばら髪の不気味な姿で、何処かしら物欲しそうに五人の姿を眺めていた。
「こいつら腹を空かしているみたいだな。何か食いものがあれば分けてやるんだが…」餓鬼に情けを掛ける雅紀に和也が「やめなさいよ♭こんな気持ちの悪い魔物を手懐けてどーするんです?♭噛みつかれますよ♭♭」と、顔をしかめる。
「餓鬼は不浄な物が好きなのじゃよ緑龍之守殿。食い物はおろか、間違えてもこの様な場所で立小便などせぬ事じゃ。たちまち群がって来るからのぅ~」「そうなのか?♭」智の忠告に雅紀がビビって餓鬼達から目を逸らした。
その内荒れた一本道は鬱蒼と茂る木々が覆い隠す林道へと姿を変え、周囲はたちまち真っ暗になる。すかさず翔が手のひらを翳し、小さな炎を灯して道の前方を照らした。
「あらま、便利ですねぇ~。その調子でキョンシーも丸焼けにしてくださいよ」和也が調子のいい事を言う。先程僵屍を倒すには全身を焼くのがいいと聞いたからだ。例え元は不成仏の亡者とは言え、人を喰ったり怪力だったりするのならそれはもう立派な魔物である。浄化などと言う手ぬるいやり方でいいのかと疑問なのだ。
「無論焼くさ。だが僵屍を焼くのは悪気を浄化してちゃんと成仏させる為だ。悪霊のままで成敗してしまうと僵屍は今度こそ確実に鬼となって人界を荒らす。だがその前に和也殿と智殿にはやって貰いたい事がある」どうやら翔には何か考えがあるらしい。
名指しされた和也が「それ、私じゃないと駄目なんですか~♭」と、迷惑そうな顔をする。「麒麟和也殿はいちいち悲観的だなぁ~♭」呆れた様に雅紀が言った。「あれじゃな。到着したらしいぞ」智が錫杖で指し示す方向に一同が一斉に視線を向ける。
そこは荒れ果てた古寺だった。崩れかけた石畳の階段が二十段程上に続き、漆喰の剥がれかけた様な、これまたボロボロの門がその頂上に見て取れた。門の向こうから凄まじい怨念が悪気となって噴出している。
「鍔鳴りがしない…。魔物の吐く瘴気とはまた別の、だが無数の悪しき気配がするな…」潤が腰にある斬魔刀を一瞥して呟いた。
「うむ。これ以上無い程の怨念の集合体だ…。やはり先に動きを封じる必要がありそうだな…。智殿、海水を撒く準備をしておいてくれ。私がその海水を一気に蒸発させる。塩を作るのだ」掌で燃える篝火を消した翔が、緊張の面持ちで石段を一歩一歩と登って行く。
「和也殿は岩塩を細かく砕いて僵屍共にぶつけてくれ。豆撒きの要領でな」どうやら翔は塩を使って寺全体を広範囲に包み込んで僵屍達の悪気を浄化し、動きを鈍らせたいらしい。多勢に無勢、五人だけでどうやって効率良く僵屍達を成仏させるか、ここに来るまでに最善の戦術を考えていたのだ。
「それは妙案じゃ。潤はその斬魔刀で動きの鈍った僵屍共を片っ端から仕留めるのじゃ。浄化した後であれば例え斬り捨てたとて亡者を成仏させられるであろう。緑龍之守殿は…」
「任せろ。俺は魔除けの柊(ひいらぎ)を使ってキョンシー達を拘束し、朱雀翔殿が奴らを燃やし易い様にしてやろう」智が言い終わるより先に雅紀が右手を軽く払う。その指先から刺々しい柊の葉が蔓の様に連なってシュルンと生えた。
遂に門の前に到着した一同はその向こうにある朽ち果てた本堂に屯(たむろ)する者達をじっと観察した。姿形は完全に唐服を纏った人間である。顔は屍人のそれの如く青白いが、魔物らしい要素は殆ど見られなかった。
ただ、女はおらず男ばかりであり、両手を前に突き出す奇妙な格好で薄汚い本堂の周辺をピョンピョンと跳ねながら徘徊しているのだ。だがどう言う訳だか僵屍を含む本堂も地面も、辺り一面が全て色を失っており、見える景色が灰色であった。
「どうやら僵屍らの漂わせる無数の悪気が凝り、尸解道院寺の周囲が灰色に曇っているらしい。ここから先は我らも灰色に曇り、色を失うであろうが決して恐れるな。智殿、先ずは我らが先陣を切ろう。準備は良いか?」「無論じゃ」
翔と智が同時に飛び出す。僵屍達が一斉にこちらを向き、素早く飛び跳ねて来る。智の額にある心眼が第三の眼となってカッと見開かれ、青い光を放つ。両の双眸も瑠璃色に輝き始めたが、この荒れ寺の敷地内ではそれも眩しい灰白色の光に見えた。
「玄武水妖術!海波乱舞(かいばらんまい)!渦潮!」錫杖をブンブンと回転させる智の全身から海水の渦巻きが勢い良く放出される。それと同時に翔の心眼も第三の眼となって開眼し、その双眸も鋭い輝きを増して行く。ここが色ある世界ならそれは鮮やかな紅の光であろう。
「業火焔流(ごうかえんりゅう)!!」両腕を大きく拡げた翔の上半身から物凄い炎の渦が放たれ、智の放出した海水の渦巻きに絡まり、たちまち蒸発させて塩の粉流に変える。その塩の粉流はまるで竜巻の如く勢いで飛び掛かって来る僵屍達を次々と吹き飛ばした。
続けて和也が飛び込んで来て、握り込んだ両手から大量の岩塩の粒を跳ね回る僵屍達にぶつけていく。和也の心眼も第三の眼となり、その双眸は眩しい輝きを放って、散々にごねていた先程までとはまるで別人の如く素早さで、狩衣の袖をはためかせていた。
粉塩を被り、岩塩の粒をぶつけられた僵屍達の動きが段々と鈍くなる。そこに飛び込んで来た雅紀が両手の指先から伸びた柊の蔓をビュンビュンと自在に操りながら、襲い来る僵屍達の間を縫うように駆け抜けて行き、突き出された両手を縛ったり、両足を絡め取って転ばしたりして僵屍達の動きを封じ込めた。
「見たかキョンシー!これぞ悪気封錠(あっきふうじょう)の術だ!」豪快に笑う雅紀の全身から蝶の鱗粉の様な光の帯が取り囲んでいる。そんな雅紀の心眼も第三の眼となり、輝く自身の双眸と共にしっかりと見開かれていた。柊の蔓にぐるぐる巻きにされた無数の僵屍達がピクピクしながらその場で固まっている。
しんがりを務めたのは潤だ。「ハラ・ドボウ・オン・ボッケン・シュタン・シリー!」斬魔刀を抜刀した潤は、浄化の術で動きが鈍くなった僵屍達を悉く斬り捨てて行く。その刃先には梵字が白く浮かび、斬魔刀の動きに合わせて一閃の光を放った。
無論その額の心眼も第三の眼と化しており、他の四人と同じ様に自身の双眸も輝かせながら…。中には怨念が強過ぎて術の効き目が鈍く、カクカクしながらも未だ動き回る僵屍も居て、そんな僵屍には智が袂から取り出した魔除けの札を額に貼り付け、完全に動けなくして潤の仕事を手伝った。
和也も潤に作って貰った太刀を使って動けなくなった僵屍達を斬り倒し、翔は浄火砲術で雅紀が拘束した僵屍達を一瞬で燃やし尽くして、瞬く間に荼毘に伏して行く。ドゴォォォォン!!シュウゥゥゥゥ!!僵屍達は次々と消滅し、光の塊となって本堂の中へと吸い込まれた。
すると灰色の世界は次第に色付き始め、潤が最後の僵屍を斬り捨てた頃には、五人が身に纏った着物の色もすっかり元通りとなって、それぞれの心眼や双眸も瑠璃色、紫、紅、黄金色、翠色に輝いていたのである。
「やれやれ♭どうにかここに屯していた僵屍達は全員成仏させる事が出来た様だな♭」大きな溜め息をつく翔に和也も「はぁ~♭疲れた~♭♭」と、その場にしゃがみ込む。雅紀は未だ未だ元気で「楽勝だ!」などとふんぞり返り、智と潤は寺の本堂を指差して、荒れ寺だった尸解道院寺が元通りの美しい寺に戻っていたのを喜んだ。
「お見事!天晴れな腕前であったのぅ~!♪流石は葛葉ちゃんお墨付きの魔道士達だわい!♪僵屍が増え過ぎてどうにも手が回らず困っておったところじゃ!♪いやはや助かりましたぞ御一同!♪」
思いの外元気な声を上げて五人に近づいて来たのは杖をついた1人の小さな老人である。薄灰色の唐服を纏い、白く長い髪を背中で三つ編みにして、白い眉毛と髭を長く伸ばした、絵に描いた様なお爺さんだ。
老人は穏やかそうなニコニコ顔で「こんな遠い場所までよくおいで下された。儂が尸解仙じゃよ」と、それは嬉しそうに名乗ったのである。
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キョンシーとのバトルが終わりました~それぞれがそれぞれの得意技でキョンシーを成仏させるシーンは、「もしこれが映像だったら超かっこいいだろうな~」などと1人で妄想しながら書いておりました(*¯︶¯♥)
潤智はこのお話では他のメンバーと着物が異なりますが(ちなみに潤君の白銀色の包衣は平安時代の狩衣姿よりもやや中華寄りな、ヒラヒラと丈の長いスタイリッシュな着物イメージで描いております💜伝われ~)
翔君、ニノみぃ~、相葉ちゃんはそれぞれメンカラの華やかな狩衣姿を纏っている設定でございますてか、そもそも嵐君達ってみんな平安衣装似合いそうですけどね~
さて、ここに来て尸解仙人のお爺ちゃんも登場して参りました次回は意外な妲己の秘密が分かるかもです✨