これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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六之巻


葛葉貴妃との謁見を終え、土黄の国の会合場所に遅れて到着した松本白虎之守潤と大野玄武之守智の話を聞いて巻物に書き付けながら、櫻井朱雀之守翔は険しい顔つきで深い溜め息をついた。


「やはり魔道か…♭女皇帝様がそう仰ったのであればもはや疑うべくも無い♭時にご両人。そなた達が委蛇(いい)と対峙したと言う双蛇岬だが、主の居らぬ寂れた稲荷神社は無かったか?実はな、我らも先程話していたのだが、それぞれが守護する国にはいずれも不穏な気を漂わせている小さな稲荷神社跡が存在していた事が分かったのだ。


どの稲荷神社も朽ち果て、雑草に埋もれて今では祈る者も無くなった様な場所で、そこが稲荷神社だかどうかも判別出来ぬ様な宮代の残骸なのだが、明らかにかつては建物が建っていたであろうそれらの荒地には底の見えぬ地底深き涸れ井戸があるのだ。


恐らく元々は参拝者の手水舎(ちょうずや)が建てられていたのであろうが、すっかり崩れて今ではただの石の穴の如く成り果てている。僅かではあるがその涸れ井戸の奥から瘴気が漏れ出ていてな、悪しき気配が致すのだ。


祈る者がいなくなれば清浄な場所にも穢れが凝る。もしそこに付け込む強い魔があれば一溜りもなく悪気(あっき)に呑まれてしまうであろう。元々稲荷神は気性が荒く、魔物に転び易い性質があるからな。


あれだけ寂れてしまうと稲荷神社はもはや神社の体を成してはおらぬ故、恐らく守護していた稲荷神はもう悪気に呑まれ、魔界に堕ちたと見なさねばならぬであろうな…」


流石は知恵者と言うべきか、朱雀之守翔は魔道の存在についてかなり確信を得ている様子で、潤と智に己が見解を説明する。互いに顔を見合わせた潤と智は、「やはりあの稲荷神社跡が魔道の根源だったか」と、頷いた。


「委蛇を退治した後、俺達も枯れ草に埋もれた涸れ井戸らしき痕跡を見つけたんだ。未だ瘴気は微々たる物だったが、この斬魔刀の鍔が鳴り、漏れ出す瘴気に獣の匂いが混じっていた。あれは妖狐だったんだろう?」


潤の問い掛けに智は「うむ、妖狐に間違いなかろうのぅ。それで儂はその涸れ井戸が元は稲荷神社の手水舎では無いかと思ったんじゃ」と、返答した。


「そうなると益々恐ろしいですよ~♭私達が見つけた稲荷神社跡が全部魔道の入口だって事になるじゃありませんか~♭そんなボコボコ魔道の穴が開いてちゃ魔物湧き放題ですよ~♭」


麒麟之守和也が嫌そうに眉を顰めて、「一応涸れ井戸には翡翠の岩で蓋をして結界を張りましたけど」と、手抜かりの無い事を主張する。「俺だって一応榊の葉の生垣で涸れ井戸を囲い結界を張ったぞ♭」緑龍之守雅紀が負けじと主張し、香の物をバリバリと噛み砕いた。


「無論私も雑草を焼き払い、涸れ井戸の縁に火を灯して結界を張った。だがあくまでもこれは応急処置だ。それに、いかに寂れたとは言え、神と名乗る者を魔物と化せる程の力だとすれば敵は中々の強者であるぞ。先程の智殿の言葉を借りれば相手は妖狐。しかも稲荷神を操る程の妖狐だとするなら思い当たるのは彼奴しか居まい」


翔の言葉に和也が「何だか物凄く嫌ぁ~な予感がするんですけど♭♭」と、顔色を変える。「やはりそうか…。女皇帝様も案じておられた。それは九尾じゃな?」智が呟く。「きゅ…♭九尾って女皇帝様と同(おんな)じじゃありませんか~♭♭無理無理無理♭無理ですって♭♭ど~するんです?♭♭」


狼狽えまくる和也に、雅紀が「九尾?女皇帝様以外にもそんなのが居るのか?俺は聞いた事ないぞ」と酒盃を傾け、「さぞ美しいのだろうな~♪」などと呑気な事この上ない。


「あなた馬鹿なんですか?♭私達は女皇帝様と同等の敵と戦う羽目になるかも知れないんですよ?♭いくら美しくても魔物ですから♭それも史上最強ですよ?♭そんな呑気な事言ってたら即刻誑(たぶら)かされて魔堕ちしますよ雅紀さん♭♭」


耳を真っ赤にして慌てる和也に、潤が「女皇帝様と同等とまでは行かないと思うけどな」と、救いの一言を発した。「だって九尾なんでしょ?同じじゃないんですか?♭」和也の疑問は尤もである。そこで潤は天竺での修行中に老師から聞いた話を持ち出して一同に説明した。


「いや、断言は出来ないし、九尾の狐が妖狐最強の敵である事には違いないが、唐国の魔を引っ張り出している状況から多分そいつは妲己(だっき)とか言う九尾狐だと思うんだ。


俺が修行中に老師から聞いた話だが、妲己は元々殷の時代に太公望と言う賢者に退治されて身体が三つに分かれたらしい。残りの二つはそれぞれ別の国に飛んで成敗されたと言われているんだ。


だから今の妲己は昔三つに別れた分身の一つと言う事になるんじゃないか?詰まり、稲荷大明神の使徒だった立場から独自の修行を経て九尾となり、神獣界の女皇帝になるまでに徳を積んだ葛葉貴妃様とは成り立ちが違う。幾ら妲己が強くても所詮は三分の一の残りに過ぎないって事だ。だから俺達が力を合わせれば成敗する事は可能だろう」


潤はそこでは未だ葛葉貴妃から聞いた乾坤大覇浄(けんこんだいはじょう)なる秘術の事は口に出さなかった。技を会得する方法が方法なだけに、何となく気恥しかったからである。だが、敵の九尾狐が三分の一だと聞いて、和也の狼狽もだいぶ治まった様子だった。


「あ、そう?三分の一ですか♭それなら未だマシですね♭良かった♭♭所でその妲己ですけど、どうやって倒すんです?♭」和也の問いにすかさず潤が返答する。「それなんだが、女皇帝様は俺と智に期限付きで魔道に立ち入る事を命じられた。恐らく何か方法があるのだろう」「えぇ~?!♭大丈夫なんですか?!♭♭」


仰天して仰け反る和也に「おぬしはいちいち反応が大袈裟だなぁ~♭♭」と、雅紀が呆れ、翔がさも心配そうに2人を眺めた。「成る程…♭その額の宝玉が女皇帝様の証印と言う訳か…♭期限付きとなると、恐らくはそれを過ぎると魔道から戻れぬ危険性があるに違いない…♭いささか厄介な話であるな…♭♭」


魔道から戻れぬとはすなわち智と潤が魔に魅入られ、魔物と化す場合があると言う事だ。和也が悲観的に言った。「二人が私達の敵になるなんて嫌ですよ~♭特に智さんは半妖ですからねぇ~♭♭ひとつ間違えば魔物になっちゃいそうじゃないですか~♭♭」


「心配無用じゃ和也殿。危うくなればこの心眼に念じて女皇帝様に神獣界へ引き上げて頂く手筈になっておる。いずれにせよ魔道の入口だと思われる涸れ井戸が全て稲荷神社の成れの果てだとすれば敵の大将が九尾狐なのは確定じゃからのぅ。これまでの話を纏め、早々に安倍晴明殿に報告せねばなるまいて。対策は女皇帝様が考えて下さるであろう」


智は円卓にある空の大皿に掌を翳し、くるくると回して中を水で一杯にすると、簡易的な水鏡を作り上げ「晴明殿。おられますかな?」と声を掛ける。「いつもながら鮮やかだなぁ~♪」雅紀が水鏡を覗き込んで感嘆した。


「あっ!我が君!」初めに水鏡を覗き込んだのは晴明の式神で、今は智の従者として仕えている侑李である。童子の如く薄桃色の水干姿で水鏡に映る顔は未だ年端も行かぬ幼子の様だ。「何じゃ?侑李ではないか。朝から留守じゃと思うておったが、お前は都に行っていたのか?」


「はい、晴明様からの命で玄武智様のご報告をここでずっと待っておりました。先頃朝廷で大変な災難が起こり、晴明様はそちらの対応に追われております。それで私に玄武智様からのご報告があれば伝言を頼むと言い残されたのです。


もし、東国(あずまのくに)の魔道の入口が妖狐と唐国に密接な関わりあらば、恐らくこちらの騒動にも関係する事柄故、しかと伝えておけと…。実は今朝帝(みかど)のご寵愛する御側室の嘉子(よしこ)様が神隠しに遭われました。


嘉子様は未だ十四歳と歳若く、帝とは親子程も年齢が離れておりますれば、帝はまるで娘御を愛おしむ如く溺愛されておられたのですが、歳若き故に嘉子様には少々お転婆な気質があり、女官が目を離すとすぐにお庭等へ飛び出しておしまいになられるのです。


帝は嘉子様のそんな自由奔放な所もいたく気に入っておられたのですが、此度はそれが仇になりました。お付きの女官の話しでは今日は大層気候もよく、庭先に可愛らしい子狐が姿を現したのを嘉子様が見つけ、女官が止めるのも利かずに追いかけて行ってしまわれたと…。


女官も慌てて後を追ったのですが、その子狐が一瞬でむくつけき武士(もののふ)に姿を変え、いきなり女官を斬りつけて嘉子様を攫って行ったそうです。斬りつけられた女官は一時程高熱で苦しみ、先程息を引き取りました」


「何と哀れな…♭」悲しげに眉根を寄せ、侑李の話を聞いた智は、先程皆で相談した内容を水鏡に向かって報告した。「恐らくその子狐は妖狐が嘉子様の気を惹く為に変化(へんげ)した物であろう。こちらでも最近になって東国に出没していた魔物は九尾狐の妲己が差し向けたのではないかと結論した所じゃ。して?晴明様は何と仰ったのだ」


智の説明に「やはり妲己でしたか?♭晴明様もそう仰いました」と、答えた侑李は続けて晴明から言伝(ことづか)った内容を話し始めた。


「晴明様はもし妲己であれば天門のご両人だけでなく、残りの御三方にも魔道へと立ち入って頂きたいと申されました。何故なら嘉子様を連れ去った妖狐がまるで挑戦状の如き謎の巻物を残して行ったからだと…。


巻物が纏いし瘴気は既に晴明様が浄化されましたが、巻物に書かれた文言は明らかに五国の皆様を指し示していると思われ、ご一同が揃わぬ時は嘉子様のお命が危ういのだそうでございます。


晴明様は他にも東国に開いた魔道の入口は大和ではなく唐の魔界と繋がっているであろう可能性を示唆されております。なので他の御三方にも早急に神獣宮殿へと赴いて頂き、葛葉貴妃様と面会して心眼を賜って貰えまいかと仰いました。


心眼さえあれば立ち入った魔道が唐国の魔道でも言葉の心配は要らぬからと…。嘉子様の身を案じ、帝はすっかり憔悴されて床に伏せっておられます。朱雀之守様、麒麟之守様、緑龍之守様、どうか女皇帝様に御面会下さいまし」


侑李は一通り説明すると、水鏡に向かって一つの巻物を開いて映し、中に記されている内容を一同に見せた。それは黒地に真っ赤な筆文字が記された、いかにも禍々しき様相の巻物である。


そこには確かに東国の守護神である五人の事を指しているであろう内容が書かれていたが、まるで判じ物の如き謎めいた文言であり、解明するのにいささか時が掛かりそうであった。


朱雀之守翔はすぐ手元にある自分の巻物にこの謎めいた文言を書き記すと、完全に及び腰になっている麒麟之守和也と、それとは真逆に何処と無くワクワクしている様な緑龍之守雅紀に順繰りに視線を巡らせ、「嘉子様が心配だ。かくなる上は皆で魔道へと参ろうではないか。これより三人で女皇帝様に謁見しよう」と、声を掛けたのである。


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都での思いがけぬ変事により、急ぎ葛葉貴妃の元へと謁見に行った翔と和也と雅紀は、やや緊張の面持ちでこの美麗なる女王の話を聞いた。「嘉子姫が攫われたか…。妲己めがよほどそなたらの活躍が気に入らぬと見える。あれはもう何千年も生き長らえた古狐だからのぅ。


昔、殷の太公望にやられて三つに分裂してからだいぶ長い間息を潜めていたが、都を追われた魔物共が東国に逃れ、守(も)り神達の力が弱まったをいい事にそれに乗じて大和の国を乗っ取ろうと画策したに違いない。


恐らく魔道の入口を東国の荒れ稲荷に繋いだのは妲己であろう。彼奴の魔力があれば年老いた稲荷神など一溜りも無いわ。だが、これからという時にそなた達若き五行の守り神が東国に姿を現し、奴が東国へと送り込んだ魔物達を悉く成敗し始めた。


業を煮やした妲己は帝の寵愛する嘉子姫を人質にそなた達を魔道に呼び寄せ、一度に始末しようと企んでおるのだ。だがいかに魔力が強くとも所詮は古狐。自分の力が今以上に弱まる前に東国を制圧して殷では出来なかった国の乗っ取りを考えておるのであろう。


本来妲己は帝を籠絡(ろうらく)して皇后の座に君臨し、国政を牛耳り暴虐の限りを尽くすのが常套手段であるが、生憎都には晴明が居て帝に近づく事さえ難しい。だから晴明が目を離した一瞬の隙を狙って嘉子姫を攫い、そなた達を魔道へと招いたのだ。


皆未だ若く、術師としては未熟な所もある。妲己めは自分の本拠地である魔道であれば五名纏めて潰せると思ぅておるのだろう。私も天門の二名が乾坤大覇浄を会得すれば事は容易いと考えていたのだが、嘉子姫の命の期限を考えるにつけ、どうやらうかうかしてはいられぬ急事となった様だのぅ。


そなた達の様な神通力の持ち主とは違い、普通の人間が生きたまま魔道に入れば三日の間に肉体から魂が抜け、亡者と化してしまう。場所が唐の魔道であれば亡者は鬼となり、やがて人を喰らう凶悪な魔物に変じるであろう。


そうなる前に早急に嘉子姫を救い出し、人界へと戻すのじゃ。妲己の成敗はその後で良い。私の記憶が確かなら魔道を進んだ終着点に妲己の城、妖狐魔殿がある筈だ。


だが唐の魔界にはそこに至るまでの道筋に、正しく亡者を導く尸解仙人なる賢者が棲まう尸解道院寺(しかいどういんじ)がある。その尸解仙人と面会し、事情を話して協力を請え。

 

そもそも唐の魔道が大和の国に繋がるなど由々しき事態。妲己めにむざむざそれを許してしまった尸解仙人にも責あるのは明白じゃ。良いか?大和の国の魔界と唐国の魔界は似て非なる物である。


このままにしておけば唐国とて乱るるのは必至。大和の国に繋がる唐国魔道の境界を塞ぎ、それぞれの魔道をしかと分かたねば双方の国が大混乱に陥るぞ。尸解仙人なら妲己が勝手に繋げた境界を分かつ術も心得ておるであろう」


葛葉貴妃は潤と智にした様に翔と和也と雅紀の額にも心眼を与えると、「妲己の使いが残した巻物を直ちに判読し、五名一丸となって嘉子姫奪還に尽力せよ。嘉子姫の命の期限は三日じゃ。急げよ」と、勅命を下したのだった。


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あわわわ~💦すっかり更新が遅くなり誠に申し訳ありませんでした~お願いえーん思いのほか大苦戦してしまい、六話が仕上がるのに実に16日間も費やしてしまいました~ガーンタラーいやはや、浮かばない時は本当に何も浮かばないものでございますね~アセアセ御心配をお掛け致しました🙇‍♀️🙇‍♀️


どうやら敵の大将は葛葉貴妃様と同じ九尾狐の妲己だった様でございますびっくり妲己の伝説も色々あるのですが、遥か昔正体がバレて太公望の術で三つに分裂して逃亡したと言う説が面白かったので今回はそれを採用致しました~ニコニコ


因みに妲己の三つに分裂した一体が天竺の王妃になって、残りの二体のひとつが鳥羽上皇に寵愛された玉藻前なる女官だと言われていますウインク栃木県には今でもその玉藻前が成敗された時に姿を変えたとされる殺生石があるそうですよ~ニヤリ上差し


安倍晴明の時代ではないので、今回玉藻前の伝承は登場しませんが、九尾の狐にも国によって色んな伝説があるんですね~🧐


さて、次回から帝の側室を救い出す為の第一戦が始まりますグッウインク今回苦戦してしまったので、潤智の二人だけじゃなく五人全員で魔道に行く方が話が纏まりやすいかと思い、急遽嘉子姫誘拐の下りを導入致しましたてへぺろ


先ずは嘉子姫奪還の第一戦、次に妲己成敗の為の第二戦と分けてお話を進めたいと思っておりますニコニコそれにはもっとピッチを上げて行かないとね~😅ゞ