これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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伍之巻


神獣仙界山(しんじゅうせんかいさん)の頂上。天界の入り口にほど近い雲の上の上。九十九の鳥居が立ち並ぶ長き石段を上った先に、葛葉貴妃の住む神獣宮殿がある。


優美な曲線を描く切妻屋根に金飾りの着いた朱塗りの柱。そんな流れ造りの華美な意匠の建物が透かし彫りが施された朱塗りの欄干や回廊で幾重にも連なっており、多方向から神獣界を見渡せる様な様式となっていた。


神獣宮殿には稲荷見習いの若い狐神達が女王の身の回りの世話を行い、その見習い達を管理する全国の稲荷神達が、女王の重臣として身辺警護などを行なっている。それはまるで朝廷の女官や公達達の如く様子だが、見習いの狐神らはフサフサとした尻尾が生えており、未だ人に成りきれぬ状態だった。


宮殿の玄関口で門番に氏名と用向きを伝え、許可が下りれば回廊から回廊を歩き、女王との謁見場に到着する。百畳程の朱塗りの板間には身辺警護の重臣達が控えており、その先には御簾(みす)の掛けられた小高い台座に、金細工の施された朱塗りの玉座が置かれているのが伺えた。


片膝を付き、頭を垂れて女王との謁見を待つのは東国で天門を預かる松本白虎之守潤と大野玄武之守智の二人である。高く結い上げた髪を宝玉輝く銀の櫛で止め、金銀の糸を織り込んだ白い包衣の潤は、彫りの深い白面の美貌も凛々しく、相変わらずの貴公子振りだ。


一方の智は始めに潤と出会った時とは打って変わり、良く梳(くしけず)られた茶色の髪を艶やかに背中に垂らし、鮮やかな縹色(はなだいろ)の内着と、亀甲紋様の透かし織りが施された、たっぷりとした袖の黒い法衣が何とも高貴な風情を醸し出していた。


きっと半妖の智にはこの神獣界の気が合っているのであろう。深い輝きを含むつぶらな双眸も、愛らしい小さな唇も、まるで僧形をした乙女の様で、首に下げた念珠も今は美しい装飾品の如く見える。


常に二人が携えている斬魔刀や錫杖は、この謁見場の外で重臣に預けてあり、今は身に寸鉄帯びぬ状態だった。顔に薄化粧を施した切れ長の目の重臣が大きな声で「女皇帝(じょこうてい)様のおなーりー!!」と、葛葉貴妃の到着を告げた。


「面(おもて)を上げよ」少し低めの美しい声である。そのはっきりとした物言いはいかにも女帝に相応しい強さと利発さを感じさせた。だが、顔を上げた二人が何より驚愕したのはその若々しい美貌である。


玉座に座して二人を見つめる葛葉貴妃は、艶めかしく着崩した、裾を引き摺る様な個性的な意匠の緋色の着物の隙間から、高下駄を履いたスラリと伸びる長い脚を覗かせ、十重二十重に着物を着込む朝廷の女とは真逆の婀娜(あだ)な様子だった。


片肌にフサフサとした白い毛皮を纏わせ、形良く結い上げた長い黒髪からは金銀宝玉の簪(かんざし)。首にも宝玉の首飾りが飾られて、大和の女人には余り見られぬ高い上背の持ち主だと見て取れる。


男の前でこれほど肌を露出する高貴な位の女人は恐らくこの葛葉貴妃くらいであろうが、まるで錦絵に出て来る様なあでやかな美しさは、成る程妖(あやかし)の要素を充分に感じさせる規格外の麗人であった。


「女皇帝様。お初にお目もじ致します。大野玄武之守智と申すしがない坊主にござりまする。これなる公達は天竺帰りの強者で松本白虎之守潤。安倍晴明様の仰せにより東国(あずまのくに)の天門をばお預かりしております」

潤の紹介まですっかり済ませ、恭しく一礼する智に倣って一礼しながら、潤も「天門の守護神としては未だ新参者ながら、これなる玄武之守智と手に手を取り、また朱雀、麒麟、緑龍の仲間達とも共に東国平定に粉骨砕身務めて参ります故、どうぞお引き立ての程御願い申し上げまする」と、中々に意欲的だ。

「若いのぅ」とても数百年の年月を生きてきたとは思えぬ様な皺ひとつない娘の顔で、葛葉貴妃はそんな事言って愉しげに目を細めた。「何とも清々しい華美な天門のご両人ではないか。朱雀之守翔に麒麟之守和也。そして緑龍之守雅紀。

此度の守神は皆美男で活きが良いわ。私も長生きした甲斐があった。おっと、この様な軽口を叩くとまた晴明に叱られそうだの?あやつは私に似ず堅物じゃからなぁ。きっと保名殿に似たに違いあるまい」

携えた金色の扇子で口元を覆い、ホホホと明るく微笑った葛葉貴妃は、「そなた達の活躍は晴明から良く聞き及んでおるぞ。此度の銀白紫と水黒青、双方の国で起こった羅刹鳥(らせつちょう)と委蛇(いい)の騒動では快刀乱麻の如く勇ましさであったらしいの?」と、既に二人が協力して凶悪な魔物を退治した経緯を安倍晴明から聞いている様子である。

「それなんですが女皇帝様。実はご報告致しき事がございます」玄武之守智は先頃、銀白紫の国と水黒青の国の二国に跨って起こった一件についてその詳細を説明しながら、葛葉貴妃にとある懸念を語ったのだった。

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安倍晴明に召喚された松本白虎之守潤と大野玄武之守智は、自分達が守護する事になっていた西の銀白紫の国、そして北の水黒青の国で同じ様な奇怪な事象が起こり、大勢の民の生命が脅かされている事を知った。

それは若い夫婦だけを狙った、眼 球 が 抉 られると言う実に残虐な騒動であり、そのせいで命を落とす若夫婦も多くあったのである。潤と智は早速従者を使い、その原因を探ってみたのだが、失明しながらもどうにか命を取り留めた者などに話を聞くと、どうやらこの騒動が起こる前に多くの人死にが出たと言う。

国の者は皆疫病の類いではないかと恐れ、死んだ者を早急に土中に埋めて簡易的な墓を作ったそうだが、疫病にしてはその家族などに感染の傾向がなく、また地域毎に疫病が広がっている様な様子も無かった。

だが、亡くなった者は皆商売人だったと言う共通点があり、銀白紫の国から水黒青の国へ、また水黒青の国から銀白紫の国へと峠を越えて物を売りに行く小売人が、何らかの事情で亡くなっているのだと判明したのである。

実は銀白紫と水黒青は二国に跨る双蛇峠(そうじゃとうげ)と呼ばれる険しい峠があり、ここにはかねてより双頭の蛇の魔物が現れると言う伝承があった。そこで潤は天竺での修行時代に老師から聞いた話を思い出したのである。

老師の話では唐には委蛇と言う魔物が居て、それは双頭の蛇の姿をしており、見ると死ぬのだそうだ。もし大和の国に戻った時、唐の魔物が現れたら注意せよとそんな教えであった。潤から委蛇の話を聞いた智ははたと膝を打ち、ならば新婚夫婦を襲い、眼 球 を 抉 るのは羅刹鳥だと思い至ったのである。

羅刹鳥は墓などにに巣食う魔物で、鶴と鷺が合わさったような姿形をしているらしい。この魔物は無念の死を遂げた死者の怨念が生み出す鳥型の妖で、幸せな者の目玉が好物なのだそうだ。結婚したての新婚夫婦が狙われたのはそのせいである。

恐らく峠の何処かで委蛇と行き合い、その姿を見て命を落とした商人達の無念が墓場に凝り、羅刹鳥を生み出したのであろうと推察した潤と智は、先ずそれぞれの国にある墓場へと赴き、羅刹鳥を探す事にした。墓場に凝る怨念を浄化し、羅刹鳥が食った若夫婦達の目玉を取り戻す為である。

果たしてそれぞれの国にある墓地には息苦しくなるほどの瘴気が漂っており、尖った嘴に頭が鶴で身体が黒鷺の如く巨大な黒灰色の怪鳥が、翼を広げてギャーギャーと鳴いていた。

斬魔刀を抜いた潤は剣を上段に構え、「オン・アボキャベイ・ロシャノウ…」と浄化の呪文を唱えると、潤の両目を狙って突進して来る羅刹鳥の胴体を真っ二つに叩き斬った。

一方智は両手に念珠を掛け、印を描いてから大蝦蟇の時とはまた違った浄化術『昇華浄水降(しょうかじょうすいこう)』を使い、羅刹鳥の上から一時的な浄化の豪雨を降らせて瞬く間に消滅させたのである。こうして墓に巣食っていた羅刹鳥は見事に成敗され、失明した若夫婦には元通り視力が戻って、また成仏出来なかった商人達の怨念も浄化されたのだった。

だが、二人の戦いはそれで終わらない。羅刹鳥の次は峠の委蛇である。何せ見るだけで命を落とす凶悪な双頭の蛇なのだ。まともに相対峙すれば潤と智に身の危険が及ぶ可能性があった。

そこで二人が考えた秘策が心眼である。実際の目で見るのではなく、心の目で見て委蛇と戦う。その為に潤と智が利用したのが先に倒した羅刹鳥の羽根であった。人の目を養分にしていた怪鳥である。

委蛇との戦いにはきっと役に立つであろうと、潤と智は退治した羅刹鳥が消滅してしまう前にこの魔物の羽根をそれぞれ1枚づつ抜き取って置いたのだった。

二人は共に峠に赴くと、布で目隠しをしてから羅刹鳥の羽根を髪に挿し、山中へと分け行ったのである。するとどうだろう、恐ろしい瘴気を全身に纏わせた双頭の大蛇の姿が二人の脳裏へと明確に浮かび上がったのだ。

智は右方へと飛び上がり、「玄武水妖術!魔弾水砲!滅!!」と叫びながら、念珠を巻いた右手から水の砲丸を委蛇の右側へと連続して放出し、潤は左方へと飛び上がり、斬魔刀を抜刀すると、「オン・サン・ザン・ザン・サク・ソワカ!!」と呪を唱え、委蛇の左側を返す刀で二度三度と斜めに斬り落とした。

地表を揺るがす様な断末魔の声を上げて双頭の大蛇が弾け飛び、消滅する。ストンと地面に降り立った潤と智は目隠しを外し、髪に挿した羅刹鳥の羽根を虚空へと投げ捨てた。羽根は消え、二つの国の民には平穏な暮らしが戻ったのである。

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「成る程のぅ。流石は天門のご両人じゃ。どうやら私が思っていた以上の相性の良さであるな。羅刹鳥の羽根は見事な策であった」葛葉貴妃は満面の笑みで満足そうに頷いた。だが話はそれで終わらない。

智は「女皇帝様。委蛇も羅刹鳥も唐の魔物だと思われます。これなる白虎之守潤が天竺の老師から聞かされた様に、大和の国に唐から来た魔物が頻繁に出現すると言うのは由々しき事態であると思われますが…」と、問い掛け、それに続けて潤も発言した。

「女皇帝様。我が師は大和の国に唐の魔物が現れた時は魔道が開いている懸念があると申しておりました。もしや東国の何処かで魔道の入り口が開いているのではないかと思われますが、如何致しましょうや?」

二人の報告を聞いた葛葉貴妃は二人の意見に同意し、「うむ。確かに天門の二国で唐の魔物が出るとは厄介だのぅ」と、呟いた。「実は木緑の国でも邪魅(じゃみ)が出たそうじゃ。これ程各国で唐の魔物が出たのなら恐らく魔道に間違いはあるまい。

だが、魔道が開くにはそれなりの原因がある筈。五名でようように話し合い、魔道が開いた原因を突き止めるが肝要じゃ。何か分かったら水鏡を使って晴明に報告するが良い。その時は最良の対策を考えよう」

葛葉貴妃はそう言うと少し間を置いてから「時にご両人。例の秘術はもう完成したのか?」と聞いた。潤と智は怪訝そうな顔つきで二人同時に「恐れながら女皇帝様。秘術とは如何なるものでございますか?」と返答する。

「何じゃ、晴明から聞いておらぬのか?だが玄武之守智よ。そなたは半妖であろう?母が人魚だったと聞き及んでおるぞ。それならばそこなる白虎之守潤と交わる事は容易いではないか。何故致さぬのじゃ」

「ええっ?!♭♭」潤と智はギョッとして葛葉貴妃を見上げた。「ま、ま、まじわ…♭いた、致す?♭とは、私が智とですか?♭♭」特に動揺したのは潤である。智の事を憎からず思っているだけにまるで自分の心理を見透かされたが如く感じたのだ。

葛葉貴妃はホホホと微笑って「誠に愛(う)いやつらじゃのぅ。今までの年寄りと違い此度の天門は若くて良く気が合ぅておると晴明から聞いておったからとっくに済ませたと思ぅておったわ」と、実に豪快である。

「まぁ良いわ。その内必要になる時が来る。その秘術とは選ばれし天門の二人にしか創造出来ぬ最強の妖術なのじゃ。但し、互いに情を交わし、一昼夜 睦 み 合 う事が絶対条件でな、特に半妖の玄武之守。

そなたの 身 体 には男の 精 を養分にする女怪の特性が備わっておる筈。そこな白虎之守の 精 をたっぷりとその 身 体 に溜め込んで天帝に匹敵する程の秘術『乾坤大覇浄(けんこんだいはじょう)』の魂気を生み出し、それを互いの技に宿して完成させるのじゃ。

もし魔道を開いた原因が私の思う者の仕業であれば彼奴は恐らく乾坤大覇浄じゃなくば成敗出来まい。それ程の敵が迫っておるやも知れぬのだ。良いか?白虎之守潤、玄武之守智。東国の命運はそなた達五名の妖術師と秘術、乾坤大覇浄に掛かっておる事を忘れるな」

葛葉貴妃には何かが見えているのか、潤と智に乾坤大覇浄なる何やら艶っぽい秘術の手法を伝えてから玉座を立ち、二人に歩み寄って来ると、その額の中心を指先でそっと押した。

すると二人の額がたちまち熱くなり、潤の額の中央には小さな紫水晶の飾りが、智の額の中央には小さな蒼玉(せいぎょく)の飾りが皮膚に貼り付き、美しい煌めきを放ったのである。

「そなた達に心眼を与えて置く。もう羅刹鳥の羽根など無くとも大丈夫じゃ。だがこれはそなた達でなくば成し得ぬ危険な役目の為だ。もし魔道を開いた原因が判明したなら、白虎之守潤、玄武之守智、そなた達二人には期限付きで魔道に立ち入って貰わねばならぬ」葛葉貴妃は労わる様に二人の頬を優しく撫で、力強い言葉で励ました。

「他の仲間とはその心眼を通して会話をすれば良い。そして身に危険を感じた時は迷わずこの心眼に念を込めるのだ。私が仲間達の元へと即座に引き上げてやる故な。

良いか?敵前逃亡は必ずしも恥ずべき事では無いぞ。東国や、引いては大和の民の為に生き長らえる事こそ、そなた達が成すべき何よりの戦術なのじゃ。それを心しておけよ」

柔和に微笑んだ葛葉貴妃は「努めよ、天門のご両人」と言い残し、しなやかな足取りで謁見場から立ち去って行った。こうして神獣女皇帝との謁見は終了し、潤と智は五行の仲間達が待つ土黄の国の会合場所へと向かったのである。

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何とも妖艶な葛葉貴妃様の登場と、美しくも勇ましい潤智のエピソードでとても華やかな回になりましたね~ニコニコそれにつけても平安時代にこんな露出度の高い美女が居たらえらいこっちゃでございますねぇ~💦

何せ九尾のお狐様ですので、歳も取らずお綺麗なままで、挙句にモデル体型の肉食女子と言う規格外のお方ですから、安倍晴明様が奔放なお母様に頭抱えてそうでございます笑い泣き

とは言え、人界ではなく神獣界でのお話でございますから、こんな女王様が居てもまた面白いかも知れませんウインク

さて、潤智の華麗なる魔物退治もさることながら、幻の『乾坤大覇浄』なる秘術のエロさ加減たるや💜💙しかも母ちゃん人魚な半妖の智君には女怪の特性が備わっておると言うオマケ付きですから、何をかいわんやって所でございましょうか?酔っ払い

次回はいよいよ五行の妖術師が勢揃い💙💜❤️💛💚魔道の秘密に迫りますグッウインク