これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


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四之巻


東国(あずまのくに)は中央に位置する土黄の国を取り囲むように山脈が連なっており、その山脈は中央から始まり、東西南北の境目に枝分かれして続いている。そんな山脈の境い目の山肌には洞穴が開いており、洞穴の入り口には黄、緑、白、赤、黒と、色分けされた鳥居が建てられていた。


鳥居を越えた洞穴の奥には麒麟、緑龍、白虎、朱雀、玄武、それぞれの神獣が祀られた小さな祠があり、祈り場の如く空間が設けられているが、その実、色分けされた鳥居と、神獣を祀った祠は安倍晴明が敷いた二重の結界であり、祠の更に奥には天界と人界(俗世)の丁度狭間にある異界への入り口があった。神獣界だ。


ここは大和古来より神として崇め奉られていた神獣や、それに纏わる異能の力を持った人成らず者達の暮らす異界の地であり、安倍晴明が召喚した五人の能力者達は皆この神獣界に集められていた。


但しこの神獣界には厳しい制約がある。神獣は時と場合により、魔物と化す場合があるからだ。狐などが良い例であろう。稲荷となり、神獣界に住む者もいれば妖狐と化し、魔界に堕ちる者もいる。


例え昔は神獣界に集っていても、きっかけひとつで魔界に落とされるのだ。面白半分で人に祟る、空腹を満たす為に人を喰らう、己が欲望のままに人を誑かし、人を堕落させる、そんな悪行を働けば、同じ異能の力を持っていたとしても魔のものとして扱われ、天帝の命により魔界へと追放されるのである。


因みに安倍晴明は神獣界でも最高峰の神通力の持ち主だが、彼の母親もかつては白狐で、この神獣界での修行で九尾となった九尾の狐だった。魔物の印象も強い九尾の狐だが、晴明の母の様に、この神獣界で更に徳を積み、女皇として君臨する様な九尾の狐も存在するのである。


そう、この神獣界を統率する神獣女皇帝こそ、安倍晴明の母、葛葉貴妃(くずはきひ)だった。白狐の葛の葉はかつて稲荷大明神の使徒だったのだが、人との間に子を成した事で稲荷大明神の怒りを買ったのである。


人を誑かし、子まで成した葛の葉は神獣界の掟を違(たが)えたとして稲荷大明神が天帝に進言し、魔界に落とされる寸前になっていたのだが、夫である安倍保名との純愛の経緯や、それに伴う童子丸(晴明の幼名)との別れの経緯を哀れに思った天帝が、二度と人界に下らぬ事を条件に神獣界に留まらせ、尾が九つになるまでの数百年を修行させた。


やがて九尾になり、稲荷大明神をも凌ぐ程の神通力を身に付けた葛の葉は、葛葉貴妃とその名を変え、漸く天帝から息子の晴明が活躍する時代へと立ち戻る事を許されて、今の神獣界を統率する神獣女皇帝となり、この異界の地を任される事に相成ったのである。


そんな神獣界への入り口として、東国の五色の鳥居の奥に神獣を祀る祠が据えられているのだ。人も魔物も立ち入れぬその異界の地は、自然豊かな美しい場所であり、そこには人界で神と呼ばれている神獣や、その力を受け継ぐ人成らず者達が、人界に暮らす全ての者共の平穏を常に見守っているのである。


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安倍晴明が召喚した五人の妖術師達は直ぐに意気投合した。神獣界に於いての彼等の住処は、それぞれの能力を最大限に活かせる最適な状況下にあり、決して豪華絢爛な御殿では無いにしても、限られた従者と暮らすには充分過ぎる広さがある。


それぞれの屋敷には納戸の裏や床の間等、屋内の何処かに人界へと繋がる入り口がしつらえられており、各々の国にある神獣を祀った祠へと出入り出来る仕組みになっていた。


各屋敷の配置も東国の五つの国の位置と同じ配置になっており、二宮麒麟之守和也(にのみやきりんのかみかずなり)の土黄屋敷を中心に、東に相葉緑龍之守雅紀(あいばりょくりゅうのかみまさき)の木緑屋敷。


西に松本白虎之守潤(まつもとびゃっこのかみじゅん)の銀白紫屋敷。南に櫻井朱雀之守翔(さくらいすざくのかみしょう)の炎赤屋敷。北に大野玄武之守智(おおのげんぶのかみさとし)の水黒青屋敷が建設されている。


特に中心にある麒麟之守和也の土黄屋敷は巨大な岩山を切り出した石造りの一際立派な屋敷となっており、高床式の二階には主の和也や従者の住む部屋があり、巨石の柱に囲まれた一階部分が大広間になっていた。


大広間の床には黄金色の色石で五芒星が描かれており、東西南北に伸びる石造りの回廊が設えられている。


それぞれ東へ伸びる回廊の床には緑の色石が、西へ伸びる回廊の床には白と紫の色石が、南へ伸びる回廊の床には赤い色石が、北へ伸びる回廊の床には黒と青の色石が敷き詰められており、その石の回廊を一町(約110m)程進んだ先には敷石と同じ色で五芒星が描かれた岩の引き戸があった。


この岩の引き戸には女王である葛葉貴妃の時空間移動が出来る妖術が掛けられており、引き戸を開けたら一瞬で別の屋敷へと移動する事が出来る様になっている。五人の妖術師達は常にこの引き戸から土黄屋敷の大広間へと集い、自分達が守護する国の現状を語り合うのだった。


「あのお化け蛞蝓(なめくじ)は本当に大変でしたよ~♭こーんなでっかい岩塩の塊を三つも砕いてやっとですよ~♭ぬめぬめで気持ち悪いったら♭嫌だねぇ~♭♭」石造りの円卓には金繻子で織った布が掛けられており、その円卓を取り囲む様に座布団の乗せられた同じ石造りの椅子が五脚置かれている。


円卓には簡単な香の物と酒盃が並べられ、麒麟之守和也は時折香の物をつつきつつ、酒盃を傾けては嫌そうに眉を顰めた。元々は村長の息子として育てられた農民の和也が、今では蘭茶色の単(ひとえ)に金糸を織り込んだ梔子色(くちなしいろ)の狩衣姿で、従者から “我が君” などと呼ばれる立場である。


安倍晴明に召喚され、この神獣界に初めて足を踏み入れた時は流石に仰天したが、生まれた時から自分が普通では無い事は自覚していただけに、思いの外すんなりと現状を受け入れる事が出来た。


まるで無用の者の如く父から山に捨てられた和也に取って、安倍晴明は自分の力が人を助ける役に立つのだと教えてくれ、和也が進むべき正しき道へと導いてくれた恩人である。


父や村の者が言った大犬之真神(おおいぬのまかみ)の子では無かったが、よもや自分が神獣、麒麟の能力を受け継ぐ最強の妖術師だったなど、きっと晴明に会わねば一生分からぬ事であっただろう。


おかげで今の和也はまるで何処かの若君の如く雅な風情の青年となり、元来の愛らしい童顔ややんちゃな軽口も相まって、周囲の者達から大層親しまれていた。


「成る程。土黄の国に蔓延っていたジメジメした湿気と生臭い瘴気は蛞蝓の魔物だったか。岩塩の塊と言うのも面白いが、無事成敗出来たなら民の疫病もだいぶ治まったであろう?」和也の話を聞いた朱雀之守翔は早速持参した巻物に事の詳細を記している。


「未だ完全じゃないけどね~♭怪しい気配のする所があるんですよ。それでも私が土黄の国の守護に就く前よりは随分と良くなりましたけど。ずっと降り続いていた小雨も止んだし、作物の根腐れも無くなって野菜や米の収穫も始まってますから」


少し得意げに胸を張った和也は、「そっちこそどうなんです?炎赤の国って翔さんが守護に就くまでは妖虫だらけで大変だったんでしょ?」と、朱雀之守翔に尋ねた。


「うむ、それはもう悲惨であった♭二頭虫(にとうちゅう)に芥虫(あくたむし)。足高蜘蛛(あしたかぐも)に土蜘蛛(つちぐも)。小さい物から大きな物まで、ようもまぁあれ程の数の妖虫が湧いて出たものだと感心する。


国の民の三割が妖虫に喰われたり、噛まれて病気になったりしておったからなぁ~♭人家の小さな妖虫には火の粉を操る風塵火炎(ふうじんかえん)の術を使い、家屋を燃やさぬ様気を付けて妖虫だけを焼き尽くしたが、森に居た土蜘蛛と足高蜘蛛には手こずった♭


土蜘蛛は地面に糸を張り巡らせ、足高蜘蛛は森の木に糸を張り巡らせて、立ち入る者を皆絡め取り、餌にしてしまう。巨大な親蜘蛛は毒の気を吐くし、子蜘蛛はガサガサと動き回っているし、あれは本当に不気味であった♭


何せ下手に立ち入るとこちらがやられてしまうからな。苦肉の策で一旦森を焼く事にしたのだ。


先ずは火流放炎(かりゅうほうえん)の術を使って張り巡らされた蜘蛛の糸と子蜘蛛を焼き払い、陽光火球砲術(ようこうかきゅうほうじゅつ)で炎の塊を何発も撃ち込み、親蜘蛛を打ち倒した。


森の大半は焼けてしまったが、森に住む生き物は全部蜘蛛共が食い尽くしていたし、妖虫のせいで荒れ果てていた炎赤の国を立て直すには仕方がなかったのだ。だが、国中に蔓延していた腐臭漂う瘴気は消え、病気の民も健康を取り戻した」


翔は少し間を置いて「とは言え、こちらも未だ完全とは行かぬ。先程の和也殿の言葉ではないが、どうも気に食わぬ場所があってな」と、静かに苦笑した。朝廷では桜の君と呼ばれていた眉目秀麗な秀才振りもそのままに、鴇羽色(ときはいろ)の単に宝相華(ほうそうげ)の柄が織り込まれた濃紅色の狩衣も良く似合い、今も尚貴族の如く風情である。 


「幸い私が焼き払った森は先頃雅紀殿が元に戻してくれた。あの時は世話になりましたな、誠にかたじけない」翔は右隣の席に視線を移し、ボリボリと威勢よく香の物を噛み砕いて酒盃を空ける緑龍之守雅紀に頭を下げた。


「何の♪草木の息吹は清浄な気を運ぶ故、国も直ぐに元気になるぞ♪土蜘蛛は土中に潜って捕食する餌を待ち受ける性質があるからな♪おかげで森の土が良く耕されていて草木の根付きが早くなったわ♪」


元は森に住む樵(きこり)の息子だが、出自がいかつい山男とは思えぬ程に穏やかで優しげな風情をした青年だった。だが見た目と違いその口振りは豪放磊落(ごうほうらいらく)で中々に勇ましい。

 

濃い常磐色の単に、光の角度で色が変わる鱗紋(うろこもん)が織り込まれた上等な苗色の狩衣姿は雅紀のすらりと高い上背に良く似合っているが、本人は着慣れてないのか、樵時代の直垂(ひたたれ)姿の方が動き易いと不満げだ。


「それにしても人の欲という物は実に厄介だなぁ~。俺の父も欲で死んだんだ。とは言え俺には父や樵仲間が死んだ時の記憶が無い。だからあれは自分がやったのではないかと思っていた。


緑龍の宿った神木を、欲に駆られた父や樵達が切り倒した事で、緑龍の木霊が怒り、俺に取り憑いたんだってね。父や仲間達を殺してしまった罪悪感で、いっその事死んでしまおうかと思っていた時に晴明様の使徒が俺を迎えに来たのよ。


晴明様にこの神獣界に召喚され、初めてお会いした時に晴明様が教えてくれた。それまで木緑の国を守護していた緑龍は、年老いた事で自分の霊力が弱まっている事に気づいたんだと。そもそも自分の住処たる神木を人に切り倒されるなど神獣なら有り得ない事らしい。


それだけ守護神たる緑龍の力が弱くなっていた証拠。だから山火事が起きた。緑龍は最後の力を振り絞り、後継者の俺を助けたんだそうだ。父や樵仲間を殺したのは俺ではなく、霊力の衰えた緑龍が森を守りきれなかったが故の天災だったとな。


幼き頃よりあの大檜に緑龍が棲んでいると見抜いていた異能の力を持つ俺に緑龍が後を託した。だから俺は緑龍に選ばれた正式な後継者なのだと、気に病む必要は無いんだと、晴明様が諭してくれたんだ。


だが、あの天災には魔の力が働いている可能性もあると晴明様は仰っていた。年老いた緑龍の霊力ではとても守護出来ない程の恐ろしい妖力を持つ魔物が数多の魔を操り、東国を征服しようとしていると。


実際その晴明様の危惧を裏付ける出来事が木緑の国で起こっていた。木緑の国では人の争いが絶えず起こり、盗賊が暴れて、大勢の民が命を落としていたんだ。だが俺には分かった。人による悪行の原因は悪行を成す者の体内に巣食う悪気(あっき)が、人から人へと伝播し、その者に悪行をさせているのだとね。


そこで俺は町の高台から緑龍風浄香(りょくりゅうふうじょうこう)の香りを散布して、争いを起こしていた民に浄気を含んだ香木の匂いを嗅がせ、体内にある悪気毒(あっきどく)を抜いたんだ。


民の体から抜けたそれは、禍々しい瘴気を孕んだ黒い煙玉で、民の体内から抜けた後、山の方角に向かって集まっている様に見えた。木緑の森がおびただしい瘴気に汚染されていたのは知っていたが、その瘴気の正体が判明せぬままで闇雲に森へと立ち入っては、何が起こるか予測不能だし危険だろう?


だが、民から抜けた悪気毒が黒い煙玉だと分かった事で、やっと民を惑わし、悪意を伝播する魔物の正体が見えた。あれは邪魅(じゃみ)だったわ」


「邪魅とな?!♭」緑龍之守雅紀の話を巻物に記録しながら、朱雀之守翔が驚嘆した。どうやら思い当たる節があるらしい。

 

「邪魅は唐国から来た魔物だな。魑魅(ちみ)の使徒で山に棲み、人心に悪意を植え付ける妖だ。やはり東国には唐から渡って来た魔物共が増えておる様だ。時に雅紀殿。その邪魅はどうなされた?」


「無論成敗した。黒い毛で覆われた獣の姿であったが、邪魅は如何様にも姿を変える故、恐らく木緑の国に居た邪魅がその姿だっただけだ。緑龍葉斬(りょくりゅうはざん)の術で浄気を宿す榊葉(さかきば)の手裏剣を飛ばして百八に刻み、消滅させた。


民の争いは収まり、今はどうにか落ち着いてはいるが、元凶となる魑魅を成敗せねばまた邪魅は湧くだろう。だが、魑魅は何処に潜んでいるのか未だ姿を見せん。恐らく魑魅が潜める特殊な場があると思われるが、どうもなぁ~」


雅紀は難しい顔つきをして考え込み、「先程翔さんが言った、気に食わぬ場所と言うのが俺にも気掛かりなのよ。心当たりはあるんだが、あの場所がまさかと思ってな…」と、首を傾げる。


「魑魅だが邪魅だか知りませんけど、唐国の魔物まで来ちゃったら困るなぁ~♭そんな相手に大和の言葉で念仏唱えて効くもんなんですか?♭」不安げに聞く和也に、翔は「我らの様な術者が操る念であれば大和だろうと唐国だろうと成敗出来るであろう」と断言した。


「所で翔さん。あの派手な男前とお爺さんみたいな話し方する童顔のお坊さんは何をしているんです?肝心要の天門の御両人が居てくれないと魔物達の動きが把握しきれませんよ」この会合の場に来ていない白虎之守潤と玄武之守智の動向が気になるのか、和也はここで一番の知恵者である翔に、二人の事を尋ねた。


「二人なら恐らく葛葉貴妃様の所であろう。天門での結界は特に重要だからな。我らよりも先ずは貴妃様に魔物の動勢をご報告せねばならぬ。後で合流すると申していたからそろそろ到着する筈だ」


翔はこれまでの話を巻物に書き付けながら思案顔で独りごちる。「唐国の魔物か…。天門の御両人にも確認せねば何とも言えぬが…。少なくとも土黄、炎赤、木緑の三国に関しては怪しき場所があると言う事だな?まさか…魔道か…?」


和也と雅紀が「えぇっ?!♭魔道?!♭♭」と言って顔色を変えた。


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大変お待たせ致しました~😅ゞ神獣界のエピソードや、三人のエピソードが長くなってしまったので、ここで一旦投稿致しますm😌m潤智のくだりは次回に持ち越しますが、今回はどうやって5人を合流させようかとかなり頭を搾りました~💦


結果、神獣界などと言うとっても都合のいい異世界を生み出してしまった訳ですが滝汗安倍晴明のお母さんが白狐の葛の葉だと言う伝説を大胆にアレンジして、神獣界の女王様にしたのには後の展開に繋がりを持たせる為でございますニコニコでも安倍晴明が九尾の狐の息子ならあの強い神通力も納得ですよねグッウインク


今回も色んな魔物が出て参りましたが、必ずしも伝承通りではなく、その殆どは私が魔物の特徴などを参照にして勝手に作り出したエピソードでございますのでウシシゞお気軽に楽しんで下さいましたら嬉しいですニコニコ