これは嵐君の名前を借りた妄想物語です。腐要素有。嵐君好き、BoysLoveにご理解のある雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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【冤罪】

#1

面会室に訪れた智を見て、鶴岡荘司(つるおかそうじ)は明らかに落胆した様子で項垂れた。それまで弁護を担当していた国選弁護人がかなりのベテラン弁護士だったので、とんだ青二才がやって来たと思ったらしい。

「来宮(くるみや)先生は弁護を降りられたのですね…。早く罪を認めて情状酌量を狙った方がいいと僕にアドバイス下さったのに僕がずっと無罪を主張しているからきっと勝ち目が無いと思われたのでしょう。君の様な新人を寄越すようじゃもう駄目なんだろうね…」

白髪混じりの長髪を後ろで束ね、無精髭まみれの青白く窶(やつ)れた顔をした鶴岡荘司は、まるでこの世の終わりの様な顔つきをして面会窓越しの智を恨めしそうに眺めやった。かつては西麻布でカリスマ美容師として評判だったイケメンも今は見る影もなくすっかり老け込んでいる。

それでも髭を剃り、髪を染めて小粋な服装でもすれば未だ充分にカッコイイ風貌になるであろう。ただ今の彼は身綺麗にする気力も無いのか、実年齢の40歳より10歳は歳かさに見えた。

智は即座にこれは危険な兆候だと考える。自分を見て不安な顔をするのはいつもの事なのだが、判決を不服として控訴した後で弁護士が変わってしまうと不安しかないであろう事は容易に想像が出来た。

しかも前回のベテラン弁護士は勝ち目なしと判断してか、罪を認めろと進言していたらしい。これではいつ絶望して自暴自棄になり、やってもいない罪を認めてしまうか分からないのだ。なので智は自分の名刺を面会窓越しに鶴岡に示してからいきなりこう切り出した。

「早速ですが鶴岡さん。決して罪を認めてはいけませんよ。今のまま頑なに無実を主張し続けて下さい。あなたの無罪は僕が法廷で必ず勝ち取ります」「えっ?!♭」智の言葉が余程意外だったのだろう。鶴岡は目を丸くして初めて真っ直ぐに智を見つめた。

「ほ、本当に?♭先生は僕の無実を信じて下さるんですか?♭」「勿論です。あなたがやってもいない罪で警察や検察の圧力に屈する事など金輪際あってはなりません。例え相手が権力者であろうとも、それが法に抵触する行為なら平等に断罪されるべきだ。その為の法律なのですから…」

勿論智にはこの鶴岡荘司が犯人ではなく、冤罪だと言う確信があった。それは今回の事件の2番目の被害者である小諸若希(こもろなおき)が、死の直前に残した証拠のCD-ROMでも既に明白になっている。(潤君お誕生日企画【戦慄】参照☆)

だが、それを法廷で証明するのはいささか厄介だ。何故なら小諸若希の証拠は隠し撮りされた映像や音声であり、法廷では証拠として使用出来ないからである。そこで智は一計を案じる事にした。

小諸若希が残した映像や音声と全く同じ条件の元、弁護側の証拠として新たに映像や音声を完コピして再現した物を法廷に証拠として提出する事である。その為には音声ファイルのクラブが何処なのか、また、吉塩牛刑事と真犯人 “ヨシ” が会話をしていた映像が何処で撮影されたのかを突き止める必要があった。

証拠のCD-ROMの音声や映像の解析を請け負ってくれたのは、小諸若希が最後にメッセージを託した友人、名門陵英光華大学(りょうえいこうかだいがく)に在学中の菊池なる大学生である。

彼はパソコンに長けており、映像や音声から場所を特定するのが得意なのだ。菊池は殺された小諸若希の仇討ちとばかりに、小諸が残した証拠のCD-ROMを渋谷西署のにのあいコンビから預かり、それを綿密に解析して、そこが何処なのか、ある程度の絞り込みを行ってくれた。

今、映像の場所をにのあいコンビが、そして掛かっている音楽や音の響き等を音声から割り出したクラブを『グッドラック探偵社』の潤が探してくれている最中である。勝機はあると智は思っていた。

「鶴岡さん。僕を信じて下さい。僕もあなたを信じます。どうかあなたの知っている事を包み隠さず全て話して下さい。次の公判では僕と共に逆転勝利を目指しましょう」智の力強い励ましの言葉に、鶴岡荘司は大層感激して、これまでの経緯を事細かに智に話して聞かせてくれたのである。

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事の発端は田淵実余子と言う1人の美しい女が鶴岡が店長を務めるヘアサロンに客として訪れた所から始まった。田淵実余子は線の細い、上品な雰囲気の女で、所謂男の保護欲を掻き立てるタイプなのだそうだ。この証言はにのあいコンビが調べた田淵実余子像とも完全に一致している。

小学生の息子がいるシングルマザーで、実余子は夜の仕事を頑張りながら息子を育てていたらしい。まぁ実際は殆ど育児放棄の状態で、男を取っかえ引っ変えしている様な、とんでもない悪女だった訳だが、少なくとも鶴岡は頑張っている健気な女だと思っていた。

実余子の働くスナックの常連になった鶴岡は、その内実余子と深い仲になり、本気で結婚を考えていたらしい。だが、実余子は昔付き合っていたと言うタチの悪い男に付きまとわれて悩んでいた。

別れるなら手切れ金を寄越せと脅迫されていたらしく、鶴岡は自分の定期預金の500万を切り崩して実余子に渡したのだそうだ。ところが、男が殺され、容疑者とされた実余子が姿を消した。

犯人は実余子の店の常連だった前原勝廣(まえばらかつひろ)という会社員だったらしいが、鶴岡は実余子がいきなり失踪した事で、彼女も殺されているか、危険な目に遭っているのではないかと心配し、ずっと実余子の行方を探していたのだそうだ。

余程惚れていたのか、その時点では未だ田淵実余子が犯人だとは思っておらず、ましてや自分が騙されているなどとは考えてもいなかったと言うのだからおめでたい話である。ところが、前原が無実を訴えながら刑務所で自殺をしたと言うニュースを聞いて、初めて鶴岡は実余子に対する疑惑を持ち始めた。

自殺した前原なる会社員とは実余子の働くスナックで、何度か顔を合わせた事のあった鶴岡だが、気の弱そうなおとなしい男で、とても人を殺せる様な雰囲気ではなく、また、鶴岡同様、前原も実余子にかなりの額を貢いでいたと聞いて、もしやと思ったそうだ。

それが決定的になったのは姿を消してから約10年ぶりに実余子から鶴岡のヘアサロンに電話があった時である。その内容が金の無心だったと言うのだから、さすがの鶴岡も呆れ果て、彼女と手を切る決心をしたらしい。

「今でもあの時の事は一言一句覚えています。僕は、昔渡した500万はもう返さなくてもいいから二度と僕の前に顔を見せないでくれと、彼女を突っぱねたんです。

勿論会ってもいません。なのに何故彼女が殺され、僕のスカーフが凶器に使われたのか、僕にも全然分からないんです。あのスカーフは確かに僕の愛用していた物ですが、何処かで紛失してしまったんです」

鶴岡は何処でスカーフを無くしたのか分からない様子だったが、自分のスカーフが実余子殺害の凶器だったと警察がヘアサロンに乗り込んで来た時はかなりの恐怖を感じたそうだ。何故なら刑務所で自殺した前原勝廣の前例があったからである。

しかも自分を逮捕しに来たのもまた、実余子の働くスナックの常連だった男だったもんだから、「お前もか?」と言う気持ちになったと鶴岡は智に告白した。

「たぶんあの刑事さんもどうにかして実余子を殺した犯人を逮捕しようと躍起になっていたのでしょう。動機も証拠もありますから疑われても仕方がないとは思いますが、それでも僕はやっていないんです。先生」

出来れば証拠が出た事を鶴岡に話し、安心させてやりたかった智だったが、裁判の前に情報を開示する事は出来ない。必ず法廷で決着をつけてやる…。智は心密かにそう決意して鶴岡にスカーフを紛失した前後の出来事について尋ねた。

「それでは鶴岡さん。あなたのスカーフですが、紛失する前後の事は覚えていらっしゃいますか?一見関係無さそうなどんな細かい事でも構いません。僕に教えて下さいませんか?」

「はい、それはもう良く覚えています。あのスカーフは僕がヘアサロンを開店した日の記念として買ったエルメスのスカーフで、特別なお客さまがご来店される時には必ず身に付けていた、勝負スカーフだったんです。

確かあの刑事さんが店に乗り込んで来る2日前の事だったと思います。あるアパレル企業の社長夫人が午前中にご来店されましてね、ウチのサロンでは1番の太客なんで、いつもの様にあのスカーフを身に付けておりました。

なので紛失したのは社長夫人の髪が終わってから後の事です。社長夫人をお見送りした後に昼休憩で近所のカフェへランチに出掛けたんですが、その時はスカーフを外して私物のバッグに入れていました。

サロンに戻ってから午後の勤務に就き、次にバッグを開いたのは店が終わってからファミレスへ夕食を食べに行った時ですから、その時にはもうスカーフが無くなっていて…。

カフェにもファミレスにも問い合わせてみたんですが、スカーフの落し物は無かったそうなので、紛失したのはカフェへランチに行った時の道のりの何処かか、ファミレスへ夕食に行った時の道のりの何処かだと思います。

実余子が殺されたのは僕がスカーフを紛失した翌日の事で、その日は月曜の店休日だったもんですから、ずっと家に居てアリバイも無かったんです。刑事さんにもその事は話したんですが、信じて貰えなくて…」

どうやら鶴岡がスカーフを紛失した日の事をもっと調べてみる必要がありそうだ。鶴岡との面会を終えた智は、東京拘置所の廊下で待っていたパラリーガルの小瀧に声を掛け、その足で鶴岡がランチをしたと言うカフェに向かったのであった。

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はいまたまた始まりました今年の嵐君お誕生日企画『時計じかけのアンブレラ』第4弾★今回は大ちゃんお誕生日企画の【冤罪】でございますニコニコ前回までのお話で、事件のあらましも真犯人も大体のネタは出しちゃいましたのでグッグラサン

このお話からは事件を動かした巨悪の皆さんに反撃👊💥と言う事で、先ずは弁護士の智君が法廷で冤罪を晴らします物申す今回の大ちゃんお誕生日企画と次回の相葉ちゃんお誕生日企画でどんどん犯人達を追い詰めて行きたいと考えておりますので、スッキリ痛快な展開を楽しんで頂けましたら嬉しいですウインク