これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し


♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️


第二章『カジノ・ターゲット』


10


『死の迷路』の見取り図を確認しながら、潤と智は始めに出口までの正しい道筋を辿る事にした。迷わず進めば全工程で約15分程の迷路である。途中何度も分かれ道にぶつかったが、見取り図を参考にする事で脇道に逸れるのは回避出来た。


ところが確かに出口だとおぼしき場所の前方には、周囲と同じ色合いの高い塀が出口を塞ぐかの如くしつらえてあり、その手前には左右に分かれる別の道筋が作られていたのである。


「成る程なぁ~♭櫻井の言った通りだぜ♭これじゃターゲットは行き止まりだと勘違いしてその前の左右どちらかの道に行っちまう♭エンリコの野郎、はなから出口に行かせるつもりはねぇんだろうぜ♭汚ぇ手使いやがる♭」


潤が忌々しげに軽く蹴飛ばした塀がゴン!と低い音を立てた。それを聞いた智が「ちょっと待った潤。この塀、どうやら僅かな遊びがありそうだ」と呟いてから一旦後方に下がる。


「マジかよ♭この塀結構高ぇぞ♭」心配する潤に頷き、口元で微笑んだ智は、助走をつけて塀の手前にある横壁をステップに飛び上がり、天井の桟に掴まると、そのまま身体を振り子の様に振って塀と天井の隙間にストンと飛び込んで行った。


「さすが俺の智♪」見上げる様な塀をいとも容易く飛び越えた智に、潤が満足気にガッツポーズを作る。潤の眼前にある塀がスルスルとスライド式に開かれ、⬅ [EXIT] と書かれた出口の下で、智がにこやかに手を振っていた。


「どうやらこの塀を越える事が出来れば、向こうから簡単に開けられるらしい。レバー式の取っ手が付いていた。


要するにエンリコ・フェルナンデスは行方不明になったセレブ達の事で第三者から疑われた際の逃げ道として、何らかの方法で塀の向こうに行く事が出来れば出口に到着するからと、言い訳出来る様にしているんだろう。


彼らは出口を発見して逃げたんだ、自分のせいじゃない。こっちは被害者なんだと誤魔化せるからね」


「成る程な。クソ野郎の考えそうなこった♭迷路にちゃんと出口があれば被害者達は逃亡した事に出来るってか♭智みてぇな離れ業は無理でも、ロープか何か使えば塀の向こうには行ける。


最近殺されたっぽいシンガポールの夫婦みてぇにターゲットが複数だとしても、誰か1人が塀の向こうに行ければ全員が逃亡出来る可能性があるっつ~事だよな?♭だから未だに行方不明扱いって訳か♭何かムカつくぜ♭」


もしこの迷路の出口が完全に塞がれていたのなら、行方不明のセレブ達についての本格的な捜査が始まったかも知れないが、そうならなかったのは、この出口からであれば誰にも見つからずに逃げる事が出来そうだからだ。


何せ被害者達がカジノの負けで作った借金は膨大なのである。それをチャラにする為ならエンリコの持ちかける最終勝負を受けて自ら迷路に入り、ロープでも何でも使って逃亡するのではないか?その可能性を残す事でエンリコは今まで当局の捜査を逃れて来たに違いない。


無論、正しく迷路を進めなかった者が『JEWEL UNIT』の手により殺害されているなどエンリコらが白状する筈もなく、また処刑部屋と称する『JEWEL UNIT』の待機部屋からもその痕跡は発見され難いだろう。限りなくクロに近いグレーと言う訳である。


「でもよ、You-Rの編集した過去の殺しに纏わる防犯カメラの映像を観る限り、『JEWEL UNIT』がエンリコに不都合な人間を始末してんのは明白だぜ?何とか引っ張れねぇもんかね?♭」


そんな潤の疑問に、塀を元の状態に戻した智が再び塀と天井の隙間をすり抜けて戻って来ると、その肩に優しく手を置いて答えた。


「そうだな。『JEWEL UNIT』のメンバーだけなら逮捕するのは可能だろうけど、彼等がエンリコ・フェルナンデスの命令を受けて動いたと証明するのはちょっと難しいだろうね。


多分ルミノール溶液とブラックライト持参で、彼等の待機する処刑部屋を調べたら、そこいら中血液反応だらけになるとは思うけど、一応清掃してあるだろうしね。いずれにせよエンリコが命令してやらせたって証拠にはならないよ」


それまで櫻井の下で働いていた智が言うと妙に信憑性がある。潤は苦笑いして「そりゃそうだ♭『JEWEL UNIT』からエンリコが引っ張れんなら櫻井だってとっくに檻の人だもんな♭」と、納得した。


疑わしきは罰せずと言うのは警察機関の大原則だ。それは例えアメリカであろうと同じである。否、訴訟の国のアメリカだからこそ悪党を悪党として法で捌くには絶対的な証拠が必要になるのだろう。優秀な弁護士は金のある悪党が雇うのだから…。


「だからこそ翔さんの協力が絶対なんだ。僕達がこうして自由に動いてもバックに翔さんが居てくれれば当局の関知は確実に少なくなるに違いないからね。極論この『エレガント・テティス』内で『JEWEL UNIT』のメンバーやエンリコ・フェルナンデスが死んだとしても、それが表沙汰になる事はないだろう。


それこそ足がつきそうになって何処かへ逃亡したんじゃないかと翔さんが証言すれば、僕達が調べられる事もない。何故なら同じ裏の顔を持つ大物実業家でも、翔さんの『Dead line』はある程度お偉いさん方とWIN WINの関係だけど、エンリコ・フェルナンデスは厄介者だからさ。


ただでさえエンリコ・フェルナンデス絡みの犯罪は立証し難いんだ。厄介者のあいつが消えてくれたら警察機関の手間も省けるし、何より沢山税金を納めてくれる罪なきセレブ達の命が救われる。同じラスボスならエンリコと翔さんとどちらが得か、当局にだって忖度ってのはあるからね」


実に説得力のある説明だった。前のチャイニーズマフィアの事件の時にも実感したが、櫻井は政財界との繋がりをしっかりと築き上げており、磐石な土台の上で暗躍するダークヒーローの様な位置付けの悪党なのに対し、エンリコ・フェルナンデスはゴリゴリの凶悪犯罪者だ。


日本でもそうだったのだからアメリカなら尚の事、警察組織からしてみればそれこそ両者の立ち位置はジョーカーとバットマン位の差があるに違いない。ジョーカーをバットマンが殺しても何ら罪には問われないのである。


だからこそ櫻井はこの船がロサンゼルスの港に到着するまでの間にエンリコ・フェルナンデスの牙城を崩して置こうと考えたのだ。海の上なら何が起ころうと有耶無耶に出来る。これまでエンリコ・フェルナンデスがやって来た事を逆手に取ったやり方だった。


こうして『死の迷路』のカラクリを知った2人は次に各処刑部屋を探索する事にした。出口から入り口の方角へと遡りつつ、1部屋1部屋を丁寧に調べてみる。


まるでマンションのドアみたいな無機質なグレーの鉄のドアには、ペンキで “D” や “R&S” “E” “P” “A&O”と、『JEWEL UNIT』達の頭文字が描かれており、中は10畳程の広さのある打ちっぱなしのコンクリートで、いずれの部屋も床の一部が舞台の奈落の様に、下に沈む仕掛けがしてあった。


恐らく殺害したターゲットの遺体はこの一角に置いてそのまま海中に沈めるのだろう。その仕掛けの側にはポンプ式の高圧洗浄機が備え付けられており、これで海水を吸い上げて壁や床の血痕を洗い流していると思われた。


だが部屋によっては壁の一部などに清掃し残したらしき血痕も残っており、行方不明とされるセレブ達の悲惨な末路を物語っている。


どの部屋にも家具などの調度品の類いは一切置かれていなかったが、ルビとサフィーロの双子の兄弟の部屋などは、派手なストリートアートがペンキで描かれていたり、ペルラの部屋には壁に中国風の柄のタイルがビッシリと貼り付けられていたりと、殺し屋達の個性が伺える場所もあった。


特に今までどんな武器を使うのかが不明だったアマティスタ&オニック父子の部屋に射撃用の人型の的と弾痕があったのは収穫である。これで2人の内のどちらかが銃を使う事が分かったからだ。


ただ、少し気になったのが黒人美女のエスメラルダの部屋である。他の殺し屋達と違い、彼女の部屋だけが少し綺麗過ぎたのだ。特に例の奈落仕掛けの床に奇妙な点が伺えた。


本来この部分の仕掛けは、殺害したターゲットの遺体を海中に遺棄する為に使われる筈である。だからどんなに綺麗に清掃してあっても、この部分を良く調べると、僅かながらも被害者達の血痕等、痕跡が残りがちになっていたにも関わらず彼女の部屋だけはそれが無かったのだ。


「潤。おかしいと思わないか?この床の仕掛けには境い目に細い溝があるから、他の部屋にはこの溝に被害者達の何らかの痕跡が残されていた。ディアマンテの部屋なんて清掃が雑で血の匂いが酷かったろ?だけどここには何も残っていない」


エスメラルダの待機部屋は入り口付近の三叉路の右端にあった。出口から辿って来た潤と智には、実質最後に調べた部屋がこのエスメラルダの部屋となっている。だからこそ、この部屋の違和感に気づいたのだ。


ペンライトで奈落仕掛けの床を照らし、境い目の溝をつぶさに調べながら言う智の言葉に、潤も小さく頷いた。「ああ、確かに妙だな。ディアマンテの部屋は壁にも血痕があったから問題外としても、他の連中の部屋は比較的綺麗に清掃されていたぜ。


でもこの溝は洗い流しただけじゃ完璧に痕跡が消せねぇから血痕や毛髪が残ってたり、『JEWEL UNIT』達の殺人の証拠がバッチリだった。だがこのエスメラルダの部屋はまるで新居だぜ。あの黒豹美女、よっぽどの潔癖症なのかあるいは…」


「ここで殺しをやった事がないのか…」続いて答える智に、潤はYou-Rの編集した昔の映像でのエスメラルダの殺人現場に言及する。「でもよ、You-Rの映像じゃペルラと一緒になってエンリコ・フェルナンデスの対抗勢力だった若いギャング共を殺しまくってたぜ」


「その通りだ。でも彼等とこの船に乗っているターゲット達では属している立場が違う。若かろうが年輩だろうがギャングはギャング。必ず誰かを殺している連中だ。でもこの船の乗船客達はエンリコの私利私欲の犠牲者だからな。もしかしたら彼女…。殺害する相手を選んでいるのかも…」


智は奈落仕掛けの入り口を開け、床収納の様な箱型のボックスに酸素ボンベが隠されていたのを発見した。「見てみろ潤。これがエスメラルダの正体だ。彼女ここからターゲットのセレブ達を海中に逃がしているぞ。エスメラルダは恐らく何処かの組織の潜入捜査官…」「マジか?♭」


大きな目を更に丸くして、ダストシュートに隠された酸素ボンベを覗き込む潤に、智が「面白くなって来たじゃないか…」と低く呟いた。


♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️♠️


やっと書けた~泣くうさぎ毎度遅くて申し訳ございませぬ~🙏🙏アセアセ挙句に『死の迷路』の詳細が長くなってしまい、カジノ対決まで行けなかった~えーんホンに要領の悪い書き手でございますタラー


因みに作中に登場した出口の塀を越える智君のアクション場面は何気に『嵐にしやがれ』での『this is MJ』対決のスペシャルバージョンで(24時間テレビの時だっけ?タラー)ドア上部の小窓に飛び込んでたアクションを想像しながら書きましたグッウインク


あの時はちょっとだけ失敗しちゃったけど、このパラドシリーズの智君は超人なので大丈夫チョキグラサンキラキラどんな塀でも軽く越えちゃいます😁今回は『JEWEL UNIT』の黒人美女エスメラルダの秘密が明かされましたびっくり


果たして彼女は敵なのか味方なのか?次回はカジノ対決書きたいな~ウインク