これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
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第二章『カジノ・ターゲット』
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《OHアミーゴ!♪ようこそ我が女神の宮殿へ!♪》大袈裟な程の喜びを全身で表現しながら両手を広げ、櫻井にハグをしたのは南米屈指の巨大海運会社、『グランディア・コーポレーション』の代表取締役社長であり、『カジノ王』との異名を持つエンリコ・フェルナンデスだ。
恐らくはマルティネス・ケンドリッジの粛清があってからすぐにマイアミを離れ、東南アジア辺りに停泊中のこの船に乗り込んだのであろう。暗殺部隊、『JEWEL UNIT』の殺し屋達も潜伏していた国のそれぞれの港から乗船したものと思われた。
《ミスター…いや、あなたにはセニョールと申し上げた方がいいでしょう。セニョール.フェルナンデス。こちらこそお招きに預かり光栄です。ロスまでの1ヶ月間ですが、この素晴らしい海の女神の宮殿を大いに楽しませて頂きます》
暑苦しいおじさんのハグに嫌な顔ひとつせず、ビジネスライクな笑顔で握手を交わす櫻井は背後に従える面々を流暢な英語で1人づつ紹介した。とは言え、あくまでもショービジネスの仲間達としてではあるが…。
エンリコはそれぞれに握手とハグを繰り返しながら、ラテン系西郷隆盛みたいな極濃顔を綻ばせる。だが、ただ1人二宮にだけは一瞬怪訝そうに眉を寄せ、鋭く双眸を光らせた。恐らく5069番コンテナの摘発をすっぱ抜いたのが彼の所属する『真相報道Weekly』だと知っているのだろう。
そう言う意味では見事なまでのポーカーフェイスで「Nice to meet you!♪」と自らエンリコに握手を求め、エンリコがミックス・チャイナの黒幕だと疑う素振りを微塵も見せずに「大変素晴らしい船ですねぇ♪是非とも我が誌面でご紹介させて下さい♪」などと愛想良くお世辞を並べる二宮の方が一枚も二枚も役者が上であった。
櫻井が二宮の言葉を翻訳し、あくまでもこの素敵な豪華客船の紹介の為に乗船したらしいとエンリコに印象付ける。それで安心したのか、エンリコ・フェルナンデスは豪快な笑い声をあげて、握手をした二宮の手を上下に揺さぶりながら《それは嬉しい事だ!♪どうぞこの船の隅から隅までしっかりと取材してくれ!♪》と喜んだ。
とは言え、南米のカジノ王ならぬギャングスターなどと裏の顔を噂されるエンリコの事だ。こんな上機嫌の笑顔を何処まで信じていいのかはその場に居る誰もが疑っている。それが証拠にエンリコの背後にひっそりと控える面々はどれも一癖も二癖もありそうな連中ばかりであった。
櫻井は社交辞令をそうとは出さず、親しくエンリコと会話しながらそれらの人物達を観察する。アッシュカラーに脱色した白銀の髪を短く立てた長身の、端正な顔立ちをした若い男。
恐らくは東洋人だろうが、国籍は良く分からない。櫻井の印象では最近のKPOP歌手みたいな雰囲気であった。耳にダイヤモンドのピアスを付けている所から恐らくは彼がディアマンテと呼ばれる殺し屋だと推察出来る。
ディアマンテの隣で妖艶な微笑みを見せているのはエスメラルダだろうか?スタイル抜群な黒人系の美女で、柔らかくカールした黒髪のショートヘアが良く似合っていた。
彼女は鮮やかなグリーンの、身体にピッタリとした露出度の高いミニのワンピースドレスを身につけており、スレンダーながらもバランスのいい体型をした、大きな眼のコケティッシュな雰囲気の女である。右手の中指に特徴的な大粒のエメラルドリングを嵌めていて、さながらメスの黒豹と言った感じがした。
ディアマンテとエスメラルダの後ろに立つのはルビとサフィーロであろう。ルビーとサファイアは元々色の違う同じ石だそうだから、この2人もそっくり同じ顔をした双子の兄弟で、両者の違いはその髪の色で判別するしかなかった。
双子は炎をイラストで描いた様な、スプレーでガチガチに固めたビジュアル系ロックバンドみたいな髪型をして、それぞれレッドとブルーに染め分けられている。2人共胸の中央にゴールドの蔦模様の刺繍が施された黒い詰襟のスーツを着用しており、黒のゴツイサングラスを掛けているので、顔の造作は良く分からないが、鼻の形と肌の色から30代前後のヨーロッパ系の白人だと推察された。
最後尾に控えているのはアマティスタとペルラとオニックだろう。最も分かり易いのはペルラで、淡いパールピンクのチャイナドレスを身にまとった中華系美女だ。かなり小柄な女で年齢は20代後半位。切れ長の瞳が特徴的な個性的美人で、両耳にはパールのピアスが揺れていた。
ペルラは手に淡いピンクの房がぶら下がる、細かい彫り細工にホワイトパールをあしらった金属製の扇を持っており、恐らくはあれが彼女の使う武器だろうと思われる。チタンか、銀か、材質は良く分からないが、軽量化された鉄扇の様に見えた。
確かディアマンテは鉤爪、エスメラルダは細いワイヤー、ルビとサフィーロは変わった形の刃物を使うらしいと記憶していたが、具体的な暗殺のやり方は櫻井にも詳細は分からない。だがそれも間もなく判明する筈だ。
何故なら現在『dead line』の情報収集担当であるマサチューセッツ工科大学所属のコンピュータの天才、You-Rが彼等『JEWEL UNIT』に関する資料を集めてくれている最中なのである。数日後には『JEWEL UNIT』のあらゆる情報が櫻井の持つノートパソコンに送られて来る手筈になっていた。
それにしてもアマティスタとオニックだが、彼らのどちらがアマティスタでオニックなのかが外見では判断出来ない。1人は歳かさ、1人は20代前半位の若者で、顔の造作から2人がラテン・アメリカ系の父子だとは何となく推察出来るものの、アメジストやオニキスに関連するアクセサリー等は身につけておらず、櫻井にも判別しかねた。
顔立ちはベネチオ・デル・トロとその息子と言った雰囲気で、中々の曲者っぽさを感じたが、他の連中に比べると、髪型も服装も普通の外資系サラリーマン風で落ち着いた様子があり、さほど自己主張が際立ってはいない。だがそんな目立たなさがかえって底が知れず、手強そうな印象があった。
このベネチオ・デル・トロ似の親父の方がどうやらインターネットで『PARADOX』のPR動画を観たらしく、智の紹介の際にボスのエンリコ・フェルナンデスに向かって《彼のパフォーマンスは本当に素晴らしいんですよ。まさしく日本のマイケル・ジャクソンなんです》と絶賛してくれたので、益々櫻井に対するエンリコの警戒心が薄らいだ形になったのは、櫻井に取っても有難い状況であった。
エンリコは早速明日のナイトショーに智の出演を決めると、一同を伴ってカジノやレストラン等の船の施設を自ら案内してくれた。二宮もジャーナリストらしく、あちこちの施設を持参したカメラに納め、エンリコのご機嫌を伺っている。こうして櫻井とそのエージェント達はまんまと豪華客船のVIPゲストとして “海上のラスベガス” 『エレガント・テティス』に迎え入れられたのであった。
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その日のディナーは生バンドがラテンミュージックを奏でる船上レストランのVIP席で行われた。勿論エンリコ・フェルナンデスが櫻井を歓迎しての豪華な酒宴である。
出港は明日の早朝だと言う事で、今は未だ横浜港に停泊中の『エレガント・テティス』だが、乗船客の殆どはアメリカへの帰路の客なので、金持ちそうな外国人ばかりであり、日本に居るとはとても思えなかった。
《明日のステージではサトシのみならず、是非とも彼のジャグリングも見てみたいものだ。ナイフ投げの達人と聞いたが、今も持っているのかね?》エンリコに話を振られた相葉は元気良く「オフコース!!♪」と答え、パンツのベルトに装着した革ケースから美しい細工のナイフを取り出した。『JEWEL UNIT』の面々が一瞬ピリついた表情をその顔面によぎらせる。
だが、エンリコ・フェルナンデスはそのナイフの造形に《これは素晴らしい!!》と瞳を輝かせた。数多くナイフをコレクションしている相葉だが、とりわけ気に入りのナイフが、持ち手部分に装飾彫りの象牙を使っている、このアンティークナイフである。
先端が少し湾曲した乳白色の象牙の持ち手には、花と象形文字の様な装飾彫りが成され、縦1列にエメラルドが嵌め込まれていた。刃渡り20センチ程の片刃で、左右一対になっており、それぞれ右手用、左手用と2本揃っている。
これは相葉がテキサスに潜伏中の頃にホームステイさせて貰っていた、インディアンの血筋を持つネイティブ・アメリカンのカウボーイから貰った伝統のナイフだった。そのカウボーイは相葉の事を息子の様に可愛がってくれた牧場主のおっさんで、『dead line』のOBでもある。
馬の乗り方や獣の倒し方、サバイバルのテクニックや、防御、攻撃、ありとあらゆる技術を相葉に教えてくれた恩人で、『dead line』引退後はテキサスの牧場で悠々自適の生活を送っている。
そんな恩人が、テキサスを去る相葉の為に餞別としてくれたのがこのナイフなのだ。無論手入れも欠かした事がなく、常にピカピカに研がれていて、古い物だが、美しい造形美に似合わぬ程の殺傷能力があった。
これまでも大事な勝負事には常に相葉の手に握られ、数多の血でその刃先を濡らして来たのである。だがこのナイフがそんな物騒な武器だとは思ってもいないのか、エンリコ・フェルナンデスは《何と美しいナイフだ!何処で買ったのかね?》などと実に興味深そうな様子だった。
相葉は持ち手の先端の、湾曲した部分を使って、そのナイフをクルクルと器用に回し、食卓にあるサラダのミニトマトを空中に3個投げると、高速回転するナイフの刃先で、スパスパと切り分けた。皿に落ちた3個のミニトマトは見事な左右対象で6個に分かれ、エンリコは大きな拍手で「ブラボー!!」と喜んだ。
《見事な技だ!サクライ!君がアメリカのショービジネスで大成功を収めている理由が良く分かった!明日のナイトショーが益々楽しみになって来たぞ!》膝に乗せたナプキンでナイフの刃先を拭き、革ケースに納める相葉にテキーラのワンショットを勧めたエンリコ・フェルナンデスは《サトシも何か見せてくれるだろう?》と中々に厚かましい。
勿論、表向きはパフォーマーと言う触れ込みなので、智はすぐに席を立ち、《ではフリオ・イグレシアスの名曲。『ナタリー』を1曲》と、演奏する生バンドの方へと歩み寄って行った。
他の乗船客も見守る中、フリオ・イグレシアス往年のヒット曲『黒い瞳のナタリー』を智は物怖じする事無く、スペイン語で歌い上げる。恐らくエンリコ・フェルナンデスに歌えと言われる事をちゃんと予測していたのだろう。
智の伸びやかな美声はエンリコのみならず、レストランで食事をする乗船客達全てを魅了し、歌い終わった時には惜しみないスタンディングオベーションが智に送られていた。
《アマティスタはさっき彼の事を日本のマイケル・ジャクソンだと言っていたが、フリオ・イグレシアスも完璧じゃないか!スペイン語の発音もいい!実にいい声をしている!!》
席に戻る智に、またぞろテキーラのワンショットを勧めたエンリコは、今度は自らが席を立ち、生バンドのマイクを握ると、他の乗船客達に向かって声高に呼び掛けた。エンリコの言葉を聞いて櫻井は漸くベネチオ・デル・トロ似の親父の方がアマティスタだと理解する。
エンリコは《みんな聞いてくれ!彼等はこれから終点のロサンゼルスまでみんなと一緒にこの『エレガント・テティス』で旅をする日本のナンバーワンパフォーマー達だ!マスターは『サクライ・グローバルCO.』のショウ・サクライ!》と櫻井を紹介すると、明日の夜7時からシアターでナイトショーをやる事を宣伝した。
どうやらこの船のオーナーがエンリコ・フェルナンデスなのは乗船客にも周知の事実らしい。黒い噂もあるがエンリコは有名な実業家でもあるのだ。当然そんなエンリコが紹介する櫻井も今や有名な青年実業家である。横にも縦にもデカいエンリコ・フェルナンデスの隣に立つと、櫻井は大層可愛らしく見えるのか、乗船客達は櫻井の余りの若々しさに驚いている様子であった。
今の所エンリコ・フェルナンデスも、部下の『JEWEL UNIT』の面々も、智達エージェントの本当の狙いに気づいている様子は無い。恐らくジャーナリストの二宮が一緒なのも功を奏しているのだろう。だがこんな優雅なひとときの中でも南米ギャング殲滅作戦は確実に進行していたのである。
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バタバタしている間にもう11月になりました〜
今月は嵐君達のデビュー記念日がありますし、大ちゃんのお誕生日もありますから、中々忙しい月になりそうですね〜

幸い家の片付けはあらかた終わりましたので、もっと早めに更新出来る事もあるかと思いますが、大ちゃんお誕生日企画の大まかなプロットなんかも考えないといけませんので
未だ先は遠いかもです
とは言えいつまででも出航しない訳にも参りませんので
次回はパフォーマーSatoshiのナイトショー場面を含め、作戦を開始したチームの働き等も描いて行き、華やかながらもクールな船出にしたいと思っておりますよ〜
