これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、もうそうですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
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遠くで自動車のエンジン音が聞こえる。高い位置にある小窓からは陽の光が差し込んでおり、フローリングの床は比較的綺麗に掃除されていた。内部はほぼ何も無くガランとしているが、半円形のステージの様な場所があり、壁にはインディーズバンドの物らしい、剥がれかけたポスターがあちこちに貼り付けられている。
その事からここは恐らくは都内の何処か、それも廃業したライブハウスか何かの跡地だと思われた。それだけを冷静に分析した潤は傍らの智に視線を向け、「大丈夫か?智」と聞いた。
マンションのエレベーター前で襲われてから数時間。気付いた時はこの場所に居て、隣合わせた木製椅子の背もたれに、潤と智は縄で後ろ手に縛り付けられていたのである。「俺は大丈夫だ。あいつは?」
智の言う『あいつ』とはストーカー、須賀谷渉の事だ。とうとう実力行使に出たか…♭智を守ろうと側に居たのにこんな事になるとは情けない…♭囚われたと分かった時、意気消沈して肩を落とす潤を励ましたのは他でもない、最も危険な立場に置かれている筈の智本人だった。
「ごめんな潤。俺のせいで巻き込んじまってさ。でも潤が居てくれて俺は良かったよ。何か頑張れる気がする」そう言って笑顔を見せた智は潤が思わずホロリとする様な名言を残したのだ。
「何の根拠もねぇけど、俺はピンチの時こそやんなきゃ駄目だって思うぞ。投げ出すのは簡単だけどさ、ちょっとでも可能性があんならどうにか突破してやろうぜ。諦めねぇ奴が最後には勝つよ」「智…」
「俺と違って潤は頭いいんだから料理してる時みてぇに集中して何か考えてくれ。俺は頭より体だ。ブルース・リーも言ってたろ?『考えるより感じろ』って。俺はそっちで行く。フォローは宜しくな」
智は信じられない位に落ち着いていた。『諦めねぇ奴が最後には勝つ』か…。すげぇなこの人。かなわねぇ…。そう思った途端、潤の張り詰めていた気持ちは嘘みたいに楽になったのだ。必ずこのピンチを突破する…。そんな決意は同時に勇気に変わった。
見える範囲で自分達が何処に囚われているのかを判断し、潤は思考を研ぎ澄ませる。須賀谷の姿は今は見えないが、目的は智だ。一思いに殺さなかったと言う事は須賀谷にも何か思惑があるのだろうと考えられた。
「多分須賀谷は智に何か要求して来るぞ…。智だけじゃなく僕まで拉致されたのは、自分の方が智との絆が深いんだとマウントを取りたいんだろう。もしかしたら身体を触ったりして来るかも知れないけど、智の縄が解かれるとしたらその時が最大のチャンスだと思う」
潤の意見に智は「お、おぅっ♭分かった♭ちょっと気持ち悪ぃけど隙を狙ってみるわ♭」となかなか勇ましい。その時、入り口のドアだと思われる場所が開き、紙袋を持った須賀谷が歩み寄って来た。2人の会話が止まる。
「いいだろう?ここ。投資信託で大きな儲けが出た時に買って置いたんだ…。元々ライブハウスだった場所でね。防音設備もバッチリだし、ここで『名探偵ポメット』のオタク向けパロディー映像の撮影をしたいんだ。勿論主演は智だよ」
頬骨の高い長い顔。ヒョロヒョロヒョロした痩せた体躯。背は高く、髪もさっぱりと短く刈って、高級ブランドのサマーセーターとスリムパンツを身につけており、一見何処ぞのうらなり瓢箪みたいな若旦那風情なのだが、腫れぼったい細い目や、やや出っ歯気味の分厚い唇のせいか、この男を今ひとつ残念な感じに見せている。
工科大学を卒業したくらいだから頭脳も明晰なのだろうが、漂うムードに偏執的なオタクっぽさが拭えないのは性格の問題なのだろう。その表情から男の感情は殆ど伺い知れなかった。
「何で俺なんだよ?♭『名探偵ポメット』って中学生なんだろ?♭俺おっさんだぜ?♭」縛られたまま抗議する智に、須賀谷は表情筋を全く動かさずに答えた。「知ってる…。でも智なら大丈夫さ。それに僕達が運命で結ばれた2人だってそいつにも教えてやらないといけないしね…」
須賀谷は無言で睨みつける潤に視線を移すと、ほんの少しだけ片方の眉毛をピクつかせた。「いい男だね。すごいイケメンだ。だから智もつい浮気してしまったんだろうし、今回だけは許してあげてもいいよ。でも次はないから…。分かってると思うけどね…」
完全にイカれてる…♭♭思わずゾッとする潤だったが、智は負けていない。「浮気もクソもお前と付き合った覚え全っ然ねぇんだけど?♭」と、ド直球にハッキリと言いのけ、潤をヒヤヒヤさせた。つい心の中で〖智♭あんまり刺激するな♭♭〗と訴えてしまう。
「今はね。でも心配いらないさ。これからは僕だけが君の恋人になる。もう決まってる事なんだよ」そう言って須賀谷はパンツのポケットからジャックナイフを取り出した。「決まってねぇじゃんか♭そうやってナイフ出して脅してるじゃねぇか♭」「智♭」たまらず潤が声を掛ける。だが、須賀谷の表情に激昂した様子は見られなかった。
「どうやらこっちのイケメン君の方がこの状況を良く把握している様だね。未だ飼い始めのポメラニアンも懐くまではキャンキャンと煩く吠えるし、僕のポメットにだってそれなりの躾は必要だろう?」「要するに懐けって言ってんだな?♭」
どうやら智にも事の次第が見えて来たらしい。視線で合図する潤にチラリと目を向け、「良し分かった!お前に懐いてやる!」と偉そうに宣言した。
「思ったより物分りがいいじゃないか…。それでこそ僕の恋人だ」須賀谷はニコリともせずに智をじっと見詰めると、持って来た紙袋を智の足元に放り投げた。「その地味な服を全部脱いでこれに着替えるんだ。いい子にしてくれたら痛い思いはさせないよ」
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それから遡る事2時間前。IT戦略部の櫻井は休日返上で調べていたストーカー、須賀谷についての新情報を潤に報告するべく潤のスマホに連絡を入れた。だが、通話口に出たのが潤ではなく智の住むマンションの住人だった事から潤がそこにスマホを落としていた事を知ったのである。
さぞかし困っているだろうと潤の実家に連絡をしてみたが、通話口に出た社長夫人の芙美代から、釣った魚を持って昼過ぎに智と共に訪ねて来たが、夜には一緒に帰ったと聞き、2人の異変に気付いた。
芙美代夫人は2人が『相葉ランド』にも立ち寄っていたと教えてくれたので、念の為『相葉ランド』にも電話した櫻井だったが、2人の所在は確認出来ず、加えて相葉から智にお礼を言おうと電話しても留守電になると聞いて、これはヤバいと悟ったのである。
櫻井は警察に通報する事も考えたが、事件に巻き込まれた確たる証拠が無い以上、たかが成人男性2人の行方不明など、まともに取り合っては貰えない可能性もあると思い直し、通報は明日の出社時間になっても2人が現れない場合にしようと考えた。
とは言え、もし2人の身に何かあったとすればその行方を早急に探索する必要がある。櫻井は一体どうすれば最も最短ルートで2人の足取りを追えるのだろうかと必死で頭を搾っていた。
そもそも櫻井はポメット智の動画の事を潤から聞き、『ポメラブ』なるハンドルネームの須賀谷のコメントを調べ、そこから須賀谷の足取りを辿っていたのだ。
そして須賀谷が普通のアニメサイトだけではなく、『名探偵ポメット』の主人公、健太少年に関連したCGイラストや創作漫画などのBL系18禁サイトの類に頻繁にアクセスしている事も突き止めた。
櫻井はそれらのサイトにあるHN『ポメラブ』の書き込みを全て調べ上げ、須賀谷が『名探偵ポメット』の実写版パロディー映像の撮影を、オタク仲間にほのめかしているのを発見した。しかもかなり本気で考えているらしく、近い内に動画サイトにアップしたいと、あちこちで喧伝していたのである。
その上、須賀谷が警備員として会社に潜入していた翌日に、通販でスタンガンやジャックナイフを購入した形跡まであった。これはいよいよ危ないと、潤に注意を促す為に連絡を入れたのだが、それが繋がらなかったと言う訳だ。
もし須賀谷が既に行動に移した後だとしたら大変である。「待てよ…。松本は今智君の直属だったな…。それなら直接メールや電話のやり取りをしている筈…。上手く行けば松本のスマホから2人の居所を辿れるかも…」こうしてはいられない。
櫻井は部屋着の上から適当な上着を羽織り、マーケティング部の二宮に連絡を入れた。今のところ、ストーカーの存在を知っているのは社内でも二宮だけである。協力を仰ぐべきだと考えた。
「ああ二宮君か?櫻井だ。夜分にすまない。確証は無いが、もしかしたらマズイ事になっているかも知れない。協力してくれないか?」事の次第を報告して自宅を飛び出した櫻井のデスクでは、スクリーンセーバーに加工された智ポメットの映像がエンドレスで流れていた。
櫻井部長、やけに必死だと思ったら、どうやらポメット智君の映像を観てハマり、本気になったみたいです(*^艸^)これでやっと我が家の翔君キャラらしい感じになって参りました
今回は大ピンチの中で、何気に大物感を見せる男気智君も登場致しました(๑• ̀ω•́๑)✧こんな時大野部長ならどんなセリフを言うのだろうかと考え、『諦めねぇ奴が最後には勝つ』と、まるでドラゴンボールの孫悟空が言いそうなセリフとなった次第でございます
それにしてもストーカー、潤君の眼前で智君に着替えさせるなんてヘ○タ○ですねぇ〜←(私が(灬º 艸º灬))と言う事で次回は智君の生着替え(言い方)とオタクストーカーとの直接対決となります
果たして潤と智はストーカーの魔の手から逃れられるのでしょうか?櫻井部長も二宮部長も皆さんファイトです💪(`・ω・´💪)