これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ下差し

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〜STORY 1〜

「一体どうされました?」先の婦女暴行事件で晴れて無罪になり、誤解が解けて元の職場に復職出来る事になって、さぁこれからだと張り切っていた人物だとはとても思えない程のやつれっぷりである。

応接室のソファーにうずくまる様に腰掛けて肩を落とす元被告人に、潤は自慢のコーヒーを振る舞いつつ、心配そうに声を掛けた。「確か…櫻井さんでしたよね?やはりあの事件のせいで未だ大変な御苦労があるのでしょうか?」

1度ついてしまった悪評はなかなか払拭出来ずに苦労する事はあるものだ。例え無罪だと証明されたとしてもこの櫻井なる人物の職業は大学教授である。学生達の手前、立場的には未だ未だ針のむしろなのかも知れない。

潤がそう同情して声を掛けると、櫻井は意外そうな顔つきで顔を上げ、いえいえと首を振った。「大学ではすこぶる順調です。事件が事件でしたからもっと学生達や保護者の皆さんから白い目で見られる事はある程度覚悟していましたけれど、全くそんな事もなく、無事いつも通りの生活に戻れました」

裁判からそろそろ1ヶ月だ。秋も深まり、この北品川もそろそろ冬の気配が匂い始めた頃である。ほとぼりが覚めるにはいささか早い気もするが、恐らくこの教授は日常的にも学生達に人気があり、周りの評判も良かったのだろう。

だから無罪だと判明した途端に同情の声が一気に集まり、かえって評判が良くなった可能性もある。傍聴中にも思ったが、見るからにエリート系で、目元に愛嬌のあるイケメンだ。これでは今回の狂言女性の様に、身勝手な恋の対象にされたとしても何ら不思議ではない様な気がした。

「ではどうしてまたそんなに参ってらっしゃるのですか?貴方は無実だったんですからもっと堂々としていればよろしいのでは?」「それはその通りなのですが、島田那岐子(しまだなぎこ)君が…♭」「ああ〜…♭」思わず声が出た。

島田那岐子と言うのはこの櫻井教授を嵌めた張本人である。櫻井教授の学部の学生だったそうだが、普段から虚言癖があり、櫻井教授の事を自分の恋人だと勝手に片想いした挙句の狂言暴行だった。

罪状的にはたかが書類送検とは言え、世間を騒がせた挙句に虚偽の証言をして人の運命を壊しかけたのだ。その動機からしてもストーカー禁止条例に抵触する可能性があるとして警察から再捜査され、大学も退学になって接近禁止にされた筈である。

「島田那岐子が貴方に脅しでも掛けましたか?警察に不信感を抱かれる気持ちは分かりますが、あの時と今では状況も違いますから、もしメールなり電話なりがあれば即刻警察が動いてくれると思いますよ。何も心配は要りません」

すると櫻井はまた首を振り、妙な事を言い始めた。「私の事はいいんです。那岐子君ももう付き纏ったりしませんし、脅しもありません。私ではなく危険なのはサトコちゃんでして…♭」「サトコ?誰ですそりゃ?♭」

良く分からない展開に、潤は目を点にしながら櫻井の話に耳を傾ける。要領が悪い訳ではないのだが、櫻井の話は本題に入るまでの説明が長くてどうにもまどろっこしい。だが淳平のモットーは親切&丁寧である。潤もそれに倣い、我慢強く櫻井の話を聞いた。

「私の初恋の相手です。どうやら那岐子君は私に振られた原因がサトコちゃんにあると思い込んでいるらしく、よからぬ輩を雇って彼女の行方を探しているらしいのです♭私のせいでもしサトコちゃんに何かあればと気が気じゃなくて…♭♭」

応接室が少し暖か過ぎたのか、櫻井教授は羽織っていたツイードのジャケットを脱いでガックリと項垂れた。カシミアだろうか、薄手のニットカーディガンをワイシャツの上に重ねているが、長袖のロックTシャツ1枚の潤と比べ、どう見ても着込み過ぎである。

しかもかなりの撫で肩なので、ジャケットを脱ぐとこれぞ落胆と言うレベルに肩が落ちていて、その痛ましさもひとしおだった。「そのサトコですか?そんなにご心配なら彼女に知らせてあげれば良いではありませんか?」

「そうなんですよ松本さん♭私も彼女に危険だと知らせてあげたいのです♭だから訪ねました♭あの証拠を探し出したのがあなただと弁護士の先生からお聞きして、それであなたなら彼女を見つけて下さるのではないかと…♭」

ようやく合点が行った。恐らくこの櫻井教授もサトコなる女の行方を知らないのだ。とすると何故島田那岐子は、櫻井自身も行方を知らない様なそんな謎めいた女性が自分の振られた原因だと思い込んだのであろう。潤がそう尋ねると櫻井はまたしてもくどくどと長い説明をし始めた。

「あれは那岐子君が私を告発する3日ばかり前の事でしょうか?成績は悪く無いのですが、那岐子君は少しエキセントリックな向きのある、扱いが難しい学生でして、思い込みが激しい所がありました。他の学生との揉め事も多かったものですから、教授達もいささか持て余し気味だったと思います。

ですが、私の講義は真面目に受けに来ていたので、私は彼女を敬遠したりも、特別扱いしたりもせず、極力他の学生達と同じ様に接して参りました。ですからまさか那岐子君が私と恋愛関係にあると勘違いしていたなんて、私には予想もつかなかったのです。

そんな状況ですから、講義が終わり、後片付けをしていた私に近づいて来た那岐子君が、まるで婚約者にでも接する様に、結婚の日取りを決めたと告白した時は何を言っているのかと正直驚愕致しました。

ですが、私の態度に彼女をそう思い込ませた何かがあったのかと反省し、申し訳ないと謝罪して、どうにか那岐子君の思い込みを訂正しなくてはならないと、丁寧に説得致しました。が、しかし、彼女は私が彼女の心を弄び、一方的に断ったのだと憤慨して、その理由は何なのかと激しく問い質して来たのです。

取り乱す那岐子君にほとほと困り果てた私は、自分には昔から心に決めた人が居るのだと、君がどう思おうと、私が結婚するのはその女性なのだと、そう言って彼女を諦めさせようと致しました。

実を言いますと私には来年、アメリカの研究所へ出向の話がありまして、それを受ける為にも那岐子君の思い込みに巻き込まれたくはなかったのです。ですが、もっと上手い断り方があったのかも知れないと今となっては反省しています」

聞けば聞くほど気の毒な話だ。櫻井の言い分が事実なら島田那岐子は生徒思いの櫻井教授の優しさを勝手に脳内変換して(私だけが特別扱いされている)と思い込み、それが高じて(付き合っている)→(婚約した)と感情がエスカレートして行ったのだろう。これはストーカーにありがちの心理である。

男女の差はあるものの、そんなストーカーに依頼人女性の恋人だと勝手に思い込まれた兄の淳平が、そのストーカーに殺害されたと言う凄惨な過去を持つ潤に取って、島田那岐子がいかに危険な思想の持ち主なのかは容易に想像が出来た。「もしかして櫻井さん。その説得中にサトコさんの名前をあげたのですか?」

「…そうです♭具体的な名前をあげないと那岐子君が納得しないと思ったものですから、高校時代の初恋の相手の名前をつい…♭」「それは…♭やらかしましたねぇ…♭」多分その時の櫻井は島田那岐子が後に婦女暴行事件をでっち上げて自分に報復しようとする程危ない女だとは思いもしなかったのであろう。

だが、櫻井への復讐が失敗し、思いを遂げられなかったストーカー心理の持ち主が、その怨みの矛先をサトコなる女性に向けるのは必然である。櫻井もそれが分かったから潤の元を訪れたのだろう。

「分かりました。それで?サトコさんの苗字は何と言うのでしょうか?」「知りません…♭」「知らない?初恋の人でしょう?」「私の高校は男子校だったもので…♭サトコちゃんとは彼女の学校の文化祭で知り合った時が最初で最後なんです…♭」「はぁ?♭♭」

**

思っていたよりも厄介な依頼だと思った。櫻井の初恋の相手、『サトコ』ちゃんなる謎の女性で分かっている事は、彼女が神奈川県にある名門『秀皇(しゅうこう)高等学校』の生徒だったと言う事。そして演劇部に所属していたと言う事。高校3年の春に転校したと言う事。櫻井より1学年上だったと言う事。たったそれだけだ。

苗字も分からなければ写真も無く、しかも『サトコ』と言う名前も本人がそう名乗った訳では無く、その女生徒の同級生らしき女の子がその子を『サトちゃん』と呼んだので、櫻井が勝手に『サトコ』だと思っていただけであった。

それじゃあ本当に『サトコ』だかどうかも分からない♭『サトミ』とか『サトエ』とかだったらどうするのかと問うと、櫻井曰く「顔立ちが『サトコ』っぽかった」と良く分からない返しをしてくれた♭

どうやら『秀皇高等学校』には可愛い女生徒が多いらしいと、櫻井が通っていた男子校で有名だったらしく、ナンパ目的で友人と共に文化祭に行ったのがサトコとの出会いらしい。

見物中に友人達とはぐれ、たまたま体育館でやっていた演劇部の出し物である寸劇を観て、メイド役を演じていた女の子に一目惚れしたそうだ。栗色のセミロングヘアで少し大人びた雰囲気のその子が『サトコ』である。

「天使が居るのかと思ったくらい可愛かったんですよ。なんて言いますか…こう、ふんわりした感じのチンチラみたいな女の子でしてね。芝居が終わるのを見計らってすぐに付き合って欲しいと頼みました」

櫻井の告白にサトコはとても困っていたらしい。モジモジしている様子がまた滅茶苦茶愛くるしかったのだと櫻井は夢でも見ているような目で潤に語った。その時迎えに来た女生徒が彼女を『サトちゃん』と呼んだ事で櫻井はその子が『サトコ』と言う名前だと感じたそうだ。

結局サトコは一言も発さないままに櫻井にペコリと頭を下げて逃げる様に去って行ったらしいが、返事を聞かせて貰っていなかったからか、櫻井は諦めきれず、高校が終わると神奈川県まで電車で赴き、もう一度会えないものかとサトコを探していたそうだ。

「結局サトコちゃんとはそれっきりでしたけど、あの時彼女を迎えに来た女の子とは会ったんですよ。サトコちゃんが転校したと聞いたのは友達の女の子からです。結局私は振られたと言う事なんでしょうね。

それでようやく諦めがついたのですが、サトコちゃんの事は今でも気になっているんですよ。高校時代の綺麗な思い出です。ですが、もし可能なら再会してあの時の答えを聞いてみたいものです。

ですから松本さん、どうにかサトコちゃんを探して頂けませんでしょうか?那岐子君が彼女に何か危害を加える前に彼女と再会させて欲しいんですよ。そうじゃないと私はサトコちゃんが心配で心配で夜も眠れません…♭♭」

まぁ要するに櫻井教授もサトコなる初恋の君に未練があると言う事であろう。だが、島田那岐子が何やら怪しげな連中まで雇ってサトコを探しているらしいとなると確かにその女性の身が心配になって来る。

それで潤も依頼を受けたのではあるが、さてどうやって探したもんかと思わず頭を抱えてしまいそうになった。だが、サトコなる謎の女生徒は思いがけない程のスピードでその正体が判明する事になったのである。

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何と、暴行事件の被告人は翔君でしたびっくり!因みに神奈川県に『秀皇高等学校』なる高校は存在致しませんタラー(あくまでも私の創作ですアセアセ)さて、謎の美人女生徒ですが、皆さんはもう見当がつきましたでしょうか?そうです星サトコとはあの方ですグラサン上差し