Bad★boy クリスマス特別編『Wish』Second day

これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ

Second day

「どうせそんな事だろうと思った♭」ここは相葉がJMIの活動をするメンバーの為に武器や便利アイテム等を製作する工房『相葉ドットコム』である。

潜水艦の様な円形の形をした、割に大きな工房で、ガレージも完備しており、まるで６０年代～７０年代のオールドアメリカン風な明るい内装が相葉のキャラと良く似合っていた。

ミタゾノなる人物から潤の元に送信されて来たクリスチャンと智の映像を見て、これはただ事ではないと悟ったニノが、怒り心頭の潤と、あまりのショックにうちひしがれる班長の櫻井を置き去りにして、JMI本部を後にしたのが今から２時間程前の事である。

既に日は傾き、『相葉ドットコム』の周辺も夕暮れの気配がまったりと漂っていた。明日のクリスマスパーティーに合わせ、お役立ちアイテムを制作中だった相葉の元にズカズカと乗り込んで来たニノは、開口一番「ジェイと大野さんが大変だからすぐに手を貸して」

と、無理やり作業を中断させ、工房のパソコンを使ってクリスチャンのスマホの番号を探り出すと、そこからここのアドレスを伝えてクリスチャンと智を呼び出したのだった。

まぁ要するに、本部のパソコンから英国情報部員のスマホアドレスを探る様な真似をしたら、逆にJMI本部の情報を英国情報部に調べられる可能性があるので、調べられてもちっとも困らない相葉の工房をスケープゴートにしたと言うやや理不尽な理由から取った行動である。

「ジェイならまだしも大野さんが浮気だなんて変だと思ったんだよね♭てかさ、あんたら英国情報部の事情も分からなくはないよ？分からなくはないけどさ、命懸けで英国情報部に協力してやった俺達のチームにそんな重大な事件を相談しないってど～ゆ～事よ？♭」

呆れた様な口調でチクチクと責めるニノに、クリスチャンは苦笑して頭を掻き、智はクリスチャン以上にしょんぼりと項垂れている。「まぁまぁ、そんなに言わなくてもいいじゃん。おおちゃんこんなに萎れちゃって可哀想でしょ」

相葉は智を抱いて頭を撫で撫でしながら「泣かないでねおおちゃん。ニノは怒ってるんじゃなくて、おおちゃんを心配して言ってるんだから」と優しく慰めた。

「それよか問題は松潤だよねぇ♭ニノの話だとすっかり誤解しちゃってるみたいだし、今おおちゃんが違うと言った所で信用するかどうか…♭」「今は頭に血が昇ってっから無理だろうね？♭ショウ隊長はショック強すぎて全っ然使い物にならないし、だからかろうじて使えそうな相葉さんトコに呼んだのよ♭」

毒舌混じりに状況を説明するニノに相葉は納得しかねる様子で首をかしげ、それでも真剣に話を聞いた。「何かちょこちょこ引っかかるんだけど…♭まぁいいや♪要するに松潤の誤解を上手に解いておおちゃんには全然罪が無いってすんなり分かって貰えればいいんだよねぇ…」

相葉はこめかみに指先を当て、暫く思案していたが、やがて「そうだっ♪ここはやっぱりボノボに学ぶべきじゃないの？♪」と嬉しそうに顔を上げた。「ボノボって何よ？♭」ニノがさも胡散臭げに尋ねる。

「ボノボって言うチンパンジーに近い動物がいるんだけど、彼らの社会は喧嘩がなくて滅茶苦茶平和なんだよねっ！♪何故かって言うと性欲が強いからっ！♪」相葉が淹れた紅茶を思わず噴きそうになりながらクリスチャンが「Why？♭♭」と聞く。その気持ちはニノにも良く分かった。

「いや、だからさ♭相葉さんはいつも結論だけ勢い良く言ってちっとも説明してくんないけど、我々はボノボの性欲と仲直りの関連性が聞きたい訳よ♭」「アヒャヒャヒャ♪そりゃそうだ♪」ニノのツッコミに明るく笑った相葉は、智の頭をもう一度よしよしと撫でてから、ボノボの生態について話し始めた。

「ボノボって言うのはね、チンパンジーに似ているけど、チンパンジーと違ってオス優先じゃない…てか、縄張り争いとかも殆どない平和主義な訳♪フツーに隣近所のコロニー同士でメシ喰ったりしてんの♪

とは言え、そんなボノボの社会にも気まずい瞬間ってのがあってさ、お互いの雰囲気が悪くなったりすると性行為をして丸く納める習性があるんだよね♪これ、オスメスだけじゃなくて老若男女全部やる♪

例えば同性同士だと性器をこすり合ったりして、お互いで気持ち良くなってそれで喧嘩はお仕舞いになんの♪これって、１番本能的で単純だけど、確かに仲良くなれそうじゃない？♪すごいでしょ？♪」

得意気に説明する相葉に、さっきまで打ち萎れていた智は「すごぉ～い♪」と頻りに感心している。だが、ニノとクリスチャンは今一つ釈然としない様子で、複雑な表情を浮かべた。

「え～…と♭相葉君…？♭だったかな？♭私の勉強不足で大変申し訳ないのだが♭その…ボノボ？♭だったか、チンパンジーの仲間達の性的行為での争い解決法と、サトシとジュンの仲直りについてはどう関係してくるのだろうか？♭」

クリスチャンの質問にニノも同感して強く頷き、「あのさ♭ボノボの性生活の話なんかどーでもいいのよ♭そもそもジェイの誤解を解かない事にはセックスもクソも無いでしょ～に♭」と至極真っ当な意見を述べた。

「そんなの簡単じゃん！♪おおちゃんの言う事は信じらんなくても上のほーからの話しだったら松潤だって信じるでしょ？！♪だったら言って貰えればいーいんだよ！♪芹沢警視総監にっ！♪丁度明日のパーティーに来るじゃん！♪ボノボはそのあと！♪」「はあぁっ？！♭♭♭」

＊＊

単純な思考と言うのは時として奇跡を起こす。芹沢浩市(せりざわこういち)警視総監に、智と潤の仲違いについて説明するスポークスマンとしての役割を押し付けられたのはクリスチャン・ブレスだった。

元を正せばクリスチャンが極秘任務を智に依頼したのが発端なのだから、クリスチャンには個人的に警視総監に報告する責任があると相葉に迫られたのである。クリスチャンにしてみればいささか無体な注文ではあるが、正直智に対して下心など全く無かったかと言えば答えはNOだ。

出来ればクリスマスの夜に日本でディナーでもとデートに誘う気満々だったのだから、智を泣かせた責任は少なからず感じていた。上司を通さず直接警視総監に会う事など出来るものだろうかと心配していたクリスチャンだが、受付で英国情報部員であるライセンスを提示し、「サトシ・オーノ」について話があると伝えると、驚く程すんなりと通してくれた。

「…成る程♭それで君が訪ねてくれた訳か…♭全く、あの連中にも困ったもんだ♭仕事は優秀なんだがまるで高校生みたいに腕白でね♭こんなくだらんいさかいに現役の英国情報部員なんて巻き込んだりする♭」

芹沢警視総監は５０代前半くらいのナイスミドルで、紺のスーツが良く似合う背のすらりとした好男子だった。もっと年配の頑固そうな人物を想像していたクリスチャンは芹沢警視総監の歯切れのいい、若々しい雰囲気を見てかなり意外な気がしたが、続く彼の言葉にはもっと驚愕した。

モノトーンで統一された警視総監室のモダンなソファーで、クリスチャンと向き合った芹沢は「実はね、ブレス君。ここだけの話だが、智は…大野智は私が若い頃に愛していた女性の忘れ形見なんだよ。詰まり隠し子と言うやつだ」と切り出した。「何ですって？♭」

芹沢は智の亡くなった母親との経緯について簡単に説明し、智が実の息子であると言う事実は『FIVE STORM』のメンバーでは智本人と恋人の潤しか知らないのだと言った。

「だから英国情報部員の君からサトシ・オーノについて話があると聞いて何事かと思ってね。今まで父親らしい事をしてやれなかった分智の名前を出されると弱い♭話の内容を聞いて幾分ホッとしている所だ♭」

道理ですんなりと通してくれた筈である。だが、それを聞いてクリスチャンもだいぶ安心した。幾ら直属の捜査官だと言っても所詮は使い捨て。少なくとも英国情報部ではそうだから、いち捜査官の揉め事などに警視庁のトップが耳を貸す筈はないと、門前払いも覚悟していたのだ。

「いや、申し訳なかったなブレス君。智の痴話喧嘩などに巻き込んでしまって君には迷惑を掛けた。明日はYOKO―bay city本部の方にも顔を出すから松本君には私から今回の極秘任務について説明をしておこう」手を差し出す芹沢と握手を交わしながらクリスチャン・ブレスも改めて今回の智の働きについて感謝の意を伝える。

「こちらこそ。ご子息には脱獄したメヘッド・サーリム捕縛に協力して頂きまして本当にありがとうございました。年末までには英国情報部局長から『FIVE STORM』の皆さんに感謝状と女王陛下の勲章が贈られると思いますので、彼等の功績を褒めてあげて下さい」

こうして無事役目を果たしたクリスチャンは警視庁を出、クリスマスムードたっぷりに彩られた、夜の東京都心の景色をしっかりと目に焼き付けた。智とのクリスマスデートは叶わなかったが、不思議と気持ちは晴れ晴れとしている。

潤に誤解されたかも知れないと涙する智の様子を見ていたら、ジュン・マツモトに対するサトシの愛情がいかに深いのかと思い知らされた様な気がしたからだ。

「…大丈夫だよサトシ。君はあんなにジュンを愛しているのだからその想いはすぐに伝わるさ…。ジュンとサトシにサンタクロースから素敵なプレゼントがあればいいね…♪」クリスチャンは静かに呟くと、そのまま空港へと向かって行った。