これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在する人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ
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「…『菅沼貿易』との初めての取り引きの時、フォン・リューユーがゲイだと勘違いしていたお前が接待相手として智を連れて来た時は正直驚いたよ。しかもお前は「前もって仕込んでおいたから好きにしていい」なんてしたり顔でほざきやがった。俺はな、修司。初めて智を見た時から妙な気がしていたのさ。
俺もそれまで色んな相手と取り引きをして来たから、人を見る目はそれなりに持っているつもりだ。中にはゲイの男だっていたし、そう言う男には必ずと言っていいほどパートナーが一緒に付き添っている。
喋り方だったり、仕草だったり、男と寝る男ってのはたいてい雰囲気で分かるんだが、智には全くそんな感じがしなかった。仕込まれていると聞いていたが、智の立ち居振舞いは凛として、とても優雅で上品だったし、何より無垢な少年の様な清らかさがあった。
英語の発音はネイティブ並みに流暢で、話の受け答えには聡明さが感じられる。そのくせ、ふとした仕草や表情に、思わずドキリとするほどの豊潤な色気があった。何にせよとてもじゃないが男を相手に身体を売るようなタイプには見えなかったんだ。
何があったのかと思ったよ。智にはきっとやむにやまれぬ深刻な事情があるに違いないとね…。取り引きに来た修司、お前と『TO-Aカンパニー』の赤松始め社員連中…。『掃き溜めに鶴』と言うがまさにそんな感じでね。『菅沼貿易』が引き連れて来た面々の中で、智だけが極めて異質だった。
俺が智を食事や買い物に誘ったりしたのは、お前たちと智を引き離して個人的に話を聞きたかったからだ。「好きでやっている訳ではないだろう?何があったんだ?」とね…。そこで俺は智が外科医で『菅沼貿易』の会長を医療ミスで死なせてしまい、責任を取る形で『菅沼貿易』の為に働いているんだと言う事情を聞いた。
てっきり大学生くらいかと思っていたから外科医とは驚きだったが、これは怪しいと感じたよ。智は騙されたんじゃないだろうかと直感した。ちゃんと訴えて早く連中と手を切った方がいいとアドバイスした。
我ながら悪党らしからぬ意見だったが、智は契約書があるから難しいかも知れないと言う。3年の契約を菅沼修司と結んでいるので、それまでは修司に逆らえないんだと…。地下室での『慣らし』の事も聞いたよ。まるで安物のSMポルノみたいな酷い内容だった。
そんな悲惨な話を智は淡々と、まるで夢物語を語っている様な、やけに穏やかな調子で話すんだ。腹が立たないのか?と聞くと、「腹を立てた所で状況は何も変わらない。身体を穢される事にはもう慣れたから、これからも医療に携わる事を優先したい」と答えた。
「契約期間の3年は人を癒し、治療する医療者としての本分を全うする為の修行みたいな物だと思う事にしている」とね…。愛しくてたまらなくなった。智はナイチンゲールの生まれ変わりなんじゃないかと本気で思った位だ。
抱くつもりなんてなかったが、智と話していると、未だ黒に染まって無かった純粋な時代の自分を思い出すんだ。俺みたいな悪党でも、これ程優しい気持ちになれる事があるんだと…。まるでディズニーの世界みたいに、『美女と野獣』の野獣が、ヒロインのベルと触れ合う事で、人としての思いやりや優しさを次第に取り戻して行く様なね…。
いささか感傷的に過ぎるだろうが、何て言うか…。智と繋がりを持てば、天使を抱いた様な気持ちになるんじゃないかと思ったのさ。清浄な物に触れる事で、俺の中にある負の感情も優しく赦される様な気がした…。それに…」真中は智に視線を向け、「話していいか?」と確かめた。智は潤の顔を見上げ、静かに頷いた。
「智も…と言うより智の身体もそれを望んでいた。お前みたいなクズを褒めてやるつもりはさらさらないが、確かに見事な仕上がりだった。まるで食べ頃の果実みたいに、男を満足させ、天国に行かせる術を完璧に心得た身体だ。まさか男を抱く事になるとは想像もしていなかったが、自分でも驚く程智の魅力に堕ちた。
だから余計にどうにかしてやりたいと思ったんだ。先程のジュンの話じゃないが、智に対するお前の酷い扱いが許せなかった。出来る事なら智を『菅沼貿易』の理不尽極まりない契約の呪縛から解き放って俺の恋人にし、智の喜ぶ事を何でもしてやりたい。
だから徹底的に調べた。『菅沼貿易』の事を、菅沼修司、お前とお前を巡る様々な事柄の裏側を…。そして分かったのさ、智の勤めていた大病院の院長が、かなり以前からお前と昵懇(じっこん)の間柄だったとね。智の医療ミスは始めから仕組まれた事だった。
それどころか、お前が院長に紹介した薬品会社は日本で無認可の薬品を実験的に院長に流し、何も知らない入院患者を使って人体実験を行っていた。高い薬代を患者から巻き上げては山分けし、薬品会社からも多額のマージンを受け取っている。
それを智に気付かれた為に医療ミスをでっち上げ、医学界から追い払った…。親父が死ねば遺産も入る、行き場を失った智に巧みに取り入り、契約書を書かせて好き放題出来る道具として無償奉仕させる…。全く、お前と言う野郎はどこまで腐っているんだ。なぁ、修司?」
真中は身動きの取れない菅沼修司の頬をなぶる様にペチペチとはたき、冷酷な笑顔を浮かべた。「だが、おかげで復讐と言う方向に梶を切る事に何の躊躇いも無くなった。
その頃は未だお前が沙弓の一件に関係しているとは思っていなかったから、『銀星会』のクソガキや『TO-Aカンパニー』の赤松を葬る事で、取り引き相手である『菅沼貿易』に迷惑を掛けるかも知れないと、俺なりに気遣ってもいたんだが、『銀星会』や赤松と、お前が共倒れにでもなれば智を今の苦界から救ってやれると思ってな。
俺みたいな闇の世界の住人でも、せめて一生に一度くらいは誰かの為になる事を…。俺らしい闇の流儀で天使を救うのもまた粋ってもんじゃないか?
『菅沼貿易』との取り引きは2回、詰まり俺が智と会ったのもたった2回だ。智は2回しか会ってないのにどうして?なんて不思議に思うかも知れないが、俺に取っては智と過ごせたそのたった2回のデートがどんな宝物よりも眩しく輝いている貴重な経験だった…。
でもまさかお前が沙弓の自殺にほぼ主犯として関わっていたなんてなぁ…。『銀星会』のクソガキを始末するまで全く知らなかったよ。俺は真中領として活動する復讐鬼としての自分に『キング』と言う渾名をつけた。闇の世界に君臨する闇の王と言う意味だ。光の当たる表舞台には二度と戻らないと誓って…。
『キング』が手始めに葬ったのは『銀星会』の組長の息子だ。沙弓の一件だけじゃない。あのクソガキは親父が極道の大物なのをいいことにそれまでも似たような事を何度もやらかしていた。俺は密かに来日し、あのクソガキを待ち伏せしてスタンガンで眠らせた。
そして先に下調べしておいた山奥にあいつを運び、マフィアの流儀で始末した。あのクソガキ、俺の持ったハンティングナイフを見て震え上がり、沙弓の自殺に関わる未だ表沙汰になっていない事実をベラベラと喋ったよ。
『菅沼貿易』の副社長と商売がしたくて女をお膳立てしたんだとね。沙弓を調達したのは赤松治朗だとも言っていた。口の軽い野郎でな、菅沼修司と言う男は沙弓の一件以外でも色々とやらかしていて、何人も犠牲になっていると、お前の悪行を洗いざらい吐いてくれたよ。
中学の時のイジメ殺人。『菅沼貿易』に入社してからの煽り運転事故死。お前が間接的に関わった薬物実験や父親の菅沼徳治郎の死。お前の辿ってきた道のりには理不尽な死がゴロゴロと転がってやがる。
驚いたのはお前が中学時代にやらかしたイジメ殺人の一件だ。成績優秀でスポーツ万能なクラスメイトにいつも負けるのがムカついてお前と筆頭に3人の仲間でイジメてたんだよな?表向きは自殺となっていたが実は違う。
修司お前が、彼を、殺したんだ。成瀬勇気(なるせゆうき)君をね…。智が今身に付けているシルバーのペンダント…。街の彫金師のハンドメイドで、勇気君がカッコいいと気に入ったのを、当時小学校だった弟の友雄君がお年玉やらお小遣いをコツコツと貯めて勇気君にプレゼントした物だ。
当時の彫金師を探し出して聞いたよ。値段には少し足りなかったが、見るからに頑張って貯金したみたいな細かいお金を、小さな手で差し出した小学生位の男の子の、「兄ちゃんにあげるんだ」って目をキラキラさせて言った様子があまりにいじらしくて格安で売ってあげたのだと…。
勇気君は嬉しくてそのペンダントを小さな巾着袋に入れて肌身離さず大切に持ち歩いていたそうだ。中学を卒業して、高校生になったらバイトして小遣いを貯め、そのペンダントを身に付けて、弟をディズニーランドに連れて行ってやるんだと親しい友達に話していた。
そんな大切なペンダントをお前はイジメの延長で細工が面白いと、勇気君から取り上げようとしたんだ。激しく拒んだ勇気君に腹を立てたお前は勇気君を、いつもいじめていた場所である理科実験室の窓から突き落とした…。しかも勇気君の靴を屋上に運んで自殺したように見せ掛ける小細工までしやがった…。
お前親父に泣きついたらしいじゃないか。「飛べと言ったら本当に飛んだ。殺すつもりはなかった」と嘘八百並べ立ててな。親父はお前のイジメ仲間の親に1人5千万もの大金を握らせ、お前の名前だけを伏せさせた。
だがな、お前のイジメ仲間達は後悔していたよ。お前の親父は町の有力者で両親も逆らえなかったが、自分達だけが表沙汰になった事で人生を棒に振ったとね。
お前のイジメ仲間は近所から白い目で見られ、高校にも大学にも行けず、就職の内定も全部取り消されたんだそうだ。大人になってからみんなして勇気君の遺族に謝罪しようと探したが見つからなかったと…。
そりゃそうだろうぜ。成瀬勇気君の両親は離婚してバラバラになり、父親は別の女と再婚。弟の友雄君は母親と暮らしたが、母親は友雄君が中学に入学した時に病気で亡くなり、友雄君は施設で育って行方不明だ。
だが、この話には続きがある。2度目の取り引きの時、俺は智からそれを聞かされて衝撃を受けたよ。成瀬友雄君は行方不明になったんじゃない。戸籍が変わったんだ。裕福な里親に引き取られ、外科医の大野智として立派に成長していた。全く信じられないような偶然があったもんだよな。
智は自分の兄貴を殺した男に、そうとは知らずに再び傷つけられていたんだから…。あまりの怒りに全身が震えたよ。もう絶対に許せない、お前との契約期間が終わり、智が晴れて解放された暁にはなるだけ急いで始末をつけようと決めたのさ。
俺は智に忠告した。菅沼修司との契約期間が終わったら、二度とあいつには関わるな…と…。例え何があろうとも絶対に契約を結んではいけない。もし困った事になって、どうしようもなくなったら俺に連絡しろと伝えた。例え世界の果てにいようとも必ずお前を助けに行くとね…。
俺は日本にいる手下に智の動向を密かに見守らせながら、修司、お前を葬る準備を早急に始めた。ところが、俺の計略に横槍を入れて来た奴らがいたのさ。ジュン、君と君の仲間達だよ。手下の話では、智は契約が終了したと思われたその日の夜にコンビニの前で倒れ、若い男に助けられて、病院に運ばれたと言う。
どうやらその若い男は渋谷の高級店のナンバーワンホストで、智を保護している様だ。しかも、何を思ったか、仲間だと思われるソタイのデカや『菅沼貿易』の顧問弁護士、町医者らと手を組んで、修司とその一味を捕縛しようとしているらしい。
そこで俺は君達の動きを暫く傍観する事にした。実際、君達は見事な連携プレイで迅速に動き、それぞれの得意分野を駆使してこの男を確実に追い詰めて行った。手下からの報告で、ジュンと一緒にいるようになってからと言うもの、智がえらく幸せそうだと聞いてね、少々悔しかったよ」
真中は拳銃を持っていない方の指で、潤に向かって撃つ真似をすると、コンテナ倉庫の閉じられた入り口に視線を巡らせた。「…俺は赤松治朗を葬る為に掃除屋『キング』を名乗り、堂河原壮亮(どうがわらそうすけ)に近づいた。殺し屋の売り込みさ。案の定堂河原は直ぐに食いついて来た。
ちなみに以前、階段の踊り場でドライブレコーダーの事を堂河原と話していたのは『キング』を名乗っていた俺だ。女性の目撃者が居たのを知った上で、あえて堂河原がそれを持っている事を匂わせた。ジュン、君の役に立っただろう?
赤松を始末した時の仕事は簡単だった。俺はフォン・リューユーとして「日本に行く用事が出来たから商品を見せてくれ」と赤松に注文するだけで良かった。赤松が『菅沼貿易』所有の倉庫に俺をすんなりと案内したのはその為だ。トカレフは日本の手下に調達させた。後は警察の調べ通りだ。
掃除屋『キング』の正体に関しては俺の自白が無い限り、きっと判明しないだろう。何せ真中領は既に死んだ事になっているからな。『キング』はゴーストみたいなもんさ。可笑しな話だぜ。死んだ奴が生きた奴を殺すんだ」
真中は菅沼修司の額に銃口を当て、潤と智に合図を送った。「ジュン、智を連れてここを出ろ。智がこいつを刺そうとした果物ナイフは俺が指紋を拭いておく。ま、跡形も無くなるだろうがね」真中領はスラックスのポケットからリモコンの様な物を取り出して潤と智に示した。
「言ったろ?Count down はもう始まっているんだ。こいつから助けを求めるメールが来た時、俺は既に日本へ入っていたのさ。このコンテナ倉庫には至るところに爆弾が仕掛けてある。この菅沼修司をここにおびき出して最後の始末をつける為にね」
リモコンのデジタル数字が、カチカチと秒数を刻んでいる。爆発まで後10分であった……。
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はぁやれやれ
(* ̄◇)=3
これで大体のネタバレは出来たでしょうかね?(書き落としがありそうで怖いわー
)智君がフォン・リューユーの正体にいつ気づいたのか?的な細かい部分は後で書き足す予定です
先ずはこのまま菅沼修司や真中領を死なせてしまうかどうかと言う所でしょうか?
←(引っ張るね~
)