これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。勿論、完全なフィクションですので、登場人物、団体等、実在の人物とは無関係である事をご了承下さい。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ。下差し


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「松本さん。『春水船』が杜甫の漢詩である、春の雪解け水の事だと言うのはご存知でしょうか?」櫻井の言葉に、松本巡査長は頷き、「ええ、知っております。だが、その杜甫の『春水船』を何故鳥飼子爵が便箋に書き殴っておられたのかが分からないのです」と答えた。

櫻井は「でしょうね…」と呟いて、「貴方の様な生真面目そうなお方には見当もつかないでしょう。が、我々の様な商売をやっている者に取っては実に興味深い言葉なのですよ」と陰を含めた言い方で先を続けた。

「あれはいつ頃だったか、私も詳しい事は分からないのですが、中国が未だ清国と呼ばれていた頃の事です。

今の御前様のお父様である、相葉雅暁(あいばまさあき)公爵が、日清戦争後に仕事の関係で彼の国に行かれた際に、現地で聞いた話が始まりでした。

男なら誰でもそうでしょうが、友人同士で酒等を飲んだりすると、自然と話題になるのが女性ですからね、清国の女性について現地の人間と話が弾んだそうです。

例えば纏足(てんそく)と言う慣習についてだとか、江戸時代に将軍様の為に女性が集められた大奥の様なものが清国にもあったのだとか、まぁ、その様な話です。

そんな会話の折に語られたのが『春水船』でした。何でも当時、清国の若者の間で流行っていた巷説集の様な春本があったそうでしてね。そこに書いてあるのだそうですよ。

杜甫の漢詩の言葉をもじってそう呼ぶらしいですが、これは女性の身体…それもかなり特殊な身体の持ち主の事を差すそうなんですよ。

百万人に1人いるかいないかと言う程の所謂『名器』を持つ女性だそうでしてね、あえて露骨な言い方をさせて頂ければ、

『春の雪解け水の如く 淫 水 が溢れ、また、溢れれば溢れるほどに 締 まり が良くなり、吸 い 込み が強くなる極上の 名器』それが春水船なんですよ。

相葉雅暁公爵はその話に大層興をそそられたのだそうです。この土地に遊郭を作ろうとしたのは本来御前様のお父上なんですよ。春水船の肉体を持つ女性。元々はそんな女性をこの日本で探す為に相葉雅暁公爵はこの地に遊郭を建設しようとされたのです。

ところが相葉雅暁公爵は急な流行り病で床に臥せられる様になってしまわれた。公爵は病床で側近の者と、当時中学に御入学したばかりだった雅紀様にお話になられたそうです。

「大阪の宗右衛門町にある『楽市茶屋』を訪ねて欲しい。そこに雪乃と言う名前の芸姑がいるから、彼女を身請けして、我が屋敷に迎える様に…」と…。

そう、相葉雅暁公爵は見つけておられたのですよ。百万人に一人と言う春水船の女性をね…。そこで側近の者は雅紀様を連れ、その雪乃と言う芸姑を大阪に訪ねて、内縁の妻として相葉家に迎え入れました。

雅紀様も未だ十三歳でしたので、お母上の恋しいお年頃でしたから、雅暁公爵がもし、みまかられた折には、亡くなられたお母上の代わりに雅紀様のお世話をしてくださる女性が側にいた方が良いだろうと、側近の者は考えたそうです。

ただ雪乃…本名は大野友紀子(おおのゆきこ)と言うそうですが、彼女には雅紀様より二つ歳上の息子がいた。それがサトシです。無論友紀子さんの連れ子で相葉家とは縁もゆかりもない。

友紀子さんが本妻になれなかったのもそのせいです。入籍すると、友紀子さんにも財産分与がされる。血縁の者は口さがなく色々と言うでしょう。

『芸姑上がりの何処の馬の骨とも分からぬ 淫 売 が雅暁様をたぶらかし、財産を狙っている』とね。相葉家は友紀子さんに取って、決して居心地の良い場所ではなかった筈です。息子の智君には尚更でしょう。

何かにつけて直系の雅紀様と比べられては口汚く罵られる様な嫌な想いも随分したと思いますよ。現に雅暁公爵がみまかられた途端、友紀子さんと智君は裸同然で相葉家から追い出されたのですから…」

櫻井はここで一旦話を止めて、卓上の紅茶で喉を潤した。「ひどい話ですねぇ♭勝手に呼びつけといて、病床の公爵様の看病をさんざんさせた挙げ句に、用が無くなれば追い出すんですか?♭」

焼き菓子を食べかけたまま、知念巡査は憤って文句を言った。「知念君。食べるか怒るかどちらかにしてくれ」松本は少し嗜めてから「友紀子さんや智君に対する血縁の者のそんな対応を、ご子息の雅紀様はどう思っておられたのでしょうか?」と櫻井に聞いた。

「無論快くは思わなかったでしょう。雅紀様は友紀子さんを大層慕っておられた様ですから…。実際雅紀様はお父上の後を継がれ、相葉家の当主となられてからすぐに友紀子さんと智君を呼び戻そうとされている。ですがね、そんな簡単な話ではなかったのですよ。

雅暁公爵の側近の者…友紀子さんを迎え入れた人ですが、雅紀様がご当主になられてからその事を初めて打ち明けました。友紀子さんを相葉家から出したのは自分だとね。それは友紀子さんがそう望まれたからであると…。

友紀子さんは雅暁公爵を本当に愛しておられた。例え血縁の者が何と言おうが、雅暁公爵がご存命の内は誠心誠意尽くそうと決意されて相葉家に入られたのです。

ですが、雅暁様がご崩御された今、自分の役目は終わったと…。勿論側近の者は友紀子さんを引き留めたそうです。せめてご子息の雅紀様が戴冠されるまでは相葉家に留まって欲しいとね。

でも友紀子さんは首を縦には振らなかった。これ以上相葉家に留まれば皆さんにご迷惑を掛ける事になる。智の為にもこれ以上相葉家のお世話にはなれないのだと…。側近の者はそこで初めて知ったのです。友紀子さんの身体の秘密を…。

雅暁公爵が友紀子さんを見初められた本当の理由…。それが彼女の春水船の身体であったと友紀子さんから聞かされた側近の者は少なからず衝撃を受けたそうです。まさかそんな生臭い事情が裏に隠されていたとは思いもよらなかったのでしょう。

春水船…この特殊な肉体を偶然にも持ってしまった事により、友紀子さんは若い頃からとても苦労をされていた。男を狂わせる魔性の身体…。彼女と一度でも肌を重ねれば、たちまち男は夢中になり、まるで 情 交 に取り憑かれた 淫 獣 の如く有り様に成り果ててしまう。

誰のせいでもない、この忌まわしい身体が悪いのだと友紀子さんは言ったそうです。友紀子さんには芸事の才があり、三味も小唄も日本舞踊も玄人はだしでしたから、身を売らずとも充分に暮らし行きが成り立っていた。

だから芸姑とは言え、遊女の様に身を売る様な事はなるだけしないようにしていた。惚れた男は何人かいたが、どの男も身体の関係が出来てしまえば友紀子さんの意思などは無関係にただ単に身体だけを求める獣に変わってしまう。友紀子さんにはそれがたまらなく嫌だったのです。

そしてそうならなかったのは智の父親だった舞台役者の男と、相葉雅暁公爵、たった二人だったのだと…。雅暁公爵も始めは他の男と同じ様に友紀子さんは思っていたらしい。

でも何度か逢瀬を重ねる内にこの人は違うと言う事に気付いた。だから相葉家の申し出を受けて、雅暁公爵の最期を看取る役目を引き受けてくれたのです。

が、しかし雅暁公爵が病気なのをいいことに、友紀子さんに言い寄っていた男がいた。相葉公彦(あいばきみひこ)伯爵。雅暁公爵の弟に当たる男です。しかもこの男は普段から友紀子さんや智君を散々に蔑んでいた血縁者の筆頭だった…。

雅暁公爵亡き今、もし相葉家に私が留まれば、公彦伯爵に何をされるか分からない。表向きは友紀子さんを 淫 売 と罵りながら裏では言い寄っていた様な男です。

何か間違いでも起こったら公彦伯爵は必ず自分に執着すると、今までの経験から友紀子さんには分かっていた。そしてそれ以上に友紀子さんが恐れていたのは息子の智君の事でした…」

櫻井の話は続く。

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長くなりそうなのでここで一旦切らせて頂きますウインクこのしょさんの話は物語の肝になるので、細かくなりますが、全文書かせて下さいねお願いまだ続きますので挿し絵は次回に…照れ