これは潤智妄想物語です。腐要素有。潤智好き、大ちゃん右なら大丈夫な雑食の方向き。尚、妄想ですので苦情は受け付けません。以上を踏まえてからどうぞ。




























5
『FIVE STORM』のメンバーは、チーフ櫻井の指示により、それぞれアイバチャン、ニノ組とMJ、エス組に分かれて、来るべき『鬼神同盟』との直接対決に向け、着々と準備を進めていた。
アイバチャンの潜入先はペットショップなので、午前中から夕方にかけて、ニノの潜入先はマジックバーなので、夕方から深夜まで、各自情報収集に務め、空いた時間はアイバチャンの自宅ガレージで秘密兵器の作成にいそしんでいた。
アイバチャンの自宅は都心から少し離れた一軒家を安く買い叩き、丸々リフォームした、まるで潜水艦みたいな形状の、なかなかにファンキーな外観の家である。隣に結構広めな正方形のガレージがあり、アイバチャンはその中でチームで使う武器の作成や、乗り物のカスタマイズやらを行っていた。
中には本当に使えるのかどうかすらよく分からないヘンテコリンな発明品みたいなのもあるのだが、アイバチャンはこのガレージに『相葉ドットコム』などと言う名称をつけて、チームに役立つ新兵器を今までにもたくさん産み出している。
JMIのメンバーは拳銃の携帯も許可されているのだが、"犯人を殺さず捕縛"が基本ルールとされているので、アイバチャンのようなメカニック担当のメンバーが作成した、ハンドメイドの武器の方が使い勝手がいい場合もあった。
今回は麻酔銃を改良した新兵器を、手先が器用なニノの手を借りてメンバー分作る予定になっている。アイバチャンが潜入捜査でペットショップに勤務している間はニノがここで、設計図とにらめっこしながら組み立て作業を行っていた。
その間、ハッキングした敵アジトのカメラを監視する作業も怠らない。ニノはハンダゴテで細かい導線等を接続しながら、本部のパソコン映像をダウンロードしたiPadを時折覗き、敵のアジトを注意深く観察していた。
「あ"~もう♭忙しい♭ウチのショウ隊長、人使い荒いんだよなぁ~♭っつ~か早く帰って来いよアイバカのやつ♭」ニノはブチブチと文句を言いながらチマチマと導線を繋げ、一際大きなため息をついた。
「それに引き換えジェイと大野さんの組みはいいよなぁ♭ドラマのロケしながらの下準備なんて超楽じゃねーか♭暇さえありゃイチャイチャ出来るし、愛情満タン腹も満腹だよ♭あ~お腹空いた♭ハンバーグ食いたい♭」ニノのブチブチはこの後も暫く続いていた。
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ニノがアイバカなる不名誉な名称でひたすら文句を垂れていた頃、当のアイバチャンはペットショップ『ポピーキャット』の子犬達を散歩に連れて行くついでに海浜工業地帯の周囲を外側から調査していた。
MJとエスがロケをしている内側からは2人が調べてくれているが、分厚いコンクリートフェンスで囲まれているらしく、今の所これと言った情報は得られていなかった。
だが、ニノがハッキングしたアジトの内部映像を見る限り、絶対何処かにアジトへの入り口が存在している筈なのである。
アイバチャンは嬉しそうに歩く3匹の子犬を引き連れて海浜工業地帯の周辺を歩き、そこだけがやたらに静かな一帯を重点的に調査していた。
「本当にデカイフェンスだなぁ♭隙間なんて何処にもないよ♭マジで入り口何処なんだ?♭」アイバチャンは外壁のコンクリートフェンスを時々スマホで撮影しながら、半端ない圧迫感で威風堂々と聳えるそれを唖然と見上げた。
だが表向きには廃墟だと伝わっているからか、外を監視しているカメラのような物が設置されている様子はなく、こちらの動きが悟られる心配だけは無さそうだった。
「陸側じゃないとすると海側か…?♭この一帯で海に面している部分ってあったっけ?♭」道路に面した外壁を全部調査し終わったアイバチャンは元来た道をペットショップへと引き返しながら、一旦立ち止まり、「妙だなぁ~♭」と深呼吸をした。
一瞬、アイバチャンの姿勢が背中を反らした状態でピタリと停止する。そこは人家もなく、車も入れない様な細い道路の角だった。一羽の鳩がパサパサと飛んで来て、フェンスの向こうにほんの少しだけ覗く止まり木の様な所にフワリと舞い降りる。
よくよく目を凝らさないと分からない程のそれは、鉄製の梯子の取っ手の様に見えた。「まさかの上か…?♭」アイバチャンはハッとしてスマホを構え、鳩の止まるそこを数枚写すと、コンクリートフェンスの上側を注意して見回った。
するとどうだろう。人家のない道路に面している部分、部分に、先ほどと同じような鉄製の出っ張りが少しだけ覗いているではないか。アイバチャンは全ての取っ手をスマホで撮影し、そのままペットショップへと戻って行った。
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そして、アイバチャンからの最新報告を受けたチーフ櫻井は、スマホで撮影された梯子の取っ手らしき写真を、ニノやMJ、エスにも転送すると、意を決した様にとある屋敷へと赴いて行った。それは元警視総監の息子である櫻井にしか出来ない仕事である。
純和風の大きな木製の扉の前で来訪を告げると、ギィーっと言う重厚な音を立て、観音開きの扉が左右に割れた。良く手入れされた広い日本庭園と石畳の回廊。玄関に辿り着くまでの距離の長さ。どれを取ってもこの屋敷の主が持つ強大な力を感じずにはいられない規模であった。
ボディーガードだろうか、堅苦しいスーツをビッシリと着こんだ大柄な男が、櫻井の前を歩き、玄関口から奥座敷の方へと案内してくれる。さすがに緊張を覚えた櫻井は、銀の眼鏡フレームを指先でちょっと持ち上げた。
「やあ、いらっしゃい櫻井君。君の父上とは古い友人でね。良く君の自慢話を聞かされていたんだよ。その若さで警視とは、随分優秀らしいじゃないか」「…胡桃沢(くるみざわ)先生。ご無沙汰しています」櫻井は恭しく挨拶をして、促されるまま、胡桃沢の向かいの座布団に腰を下ろした。
胡桃沢…警察関係者ならこの名前を知らない者などいない程の有名人である。もう齢100歳にもなろうかと言う年齢だが、その面差しは未だ充分に血色が良く、この老人が全く衰えていない事を示していた。
胡桃沢兼次(くるみざわかねつぐ)かつては統合幕僚長として日本の陸海空全ての自衛隊を動かせる地位にいた重鎮である。櫻井は久しぶりに実家の父に連絡を取り、この胡桃沢元幕僚長との面談を世話して貰っていた。
言うまでもなく例の『鬼神同盟』のアジトについての情報を得る為である。あの場所がその昔、大日本帝国軍が所有していた毒ガス工場なら、どういういきさつでテロ組織などの手に渡ったのか、調べる必要があると思ったからだ。
「先生なんて堅苦しい呼び方はよしてくれたまえ櫻井君。今では老い先短いただの死に損ないだよ」胡桃沢はカラカラと陽気に笑い、白い顎髭に覆われた皺くちゃの顔を綻ばせた。
「父上から大まかな話は聞いておるよ。しかしまさかあの薬品工場が未だ残っておったとはな…。怪しげなテロ組織が占拠していると言うのは事実かね?」
皺萎んだ目の奥の鋭い眼光が櫻井を威圧する。櫻井は小さく頷き、だが、しっかりとした口調で言った。「事実です胡桃沢さん。あの施設を所有していたのは元々旧日本軍だと思われるのですが、その後誰が何の為にあの土地を買い取ったのか、そのルーツを教えて頂きたく参上致しました。
もしかしたらそのルーツの中に、あの場所に潜伏中の『鬼神同盟』なるテロ集団のリーダーと関わりのある事実が潜んでいるかも知れないのです。恐らくは胡桃沢さんもご存知の事と思いますが、警視庁には現在ある秘密機関が極秘に組織されております。
私はその秘密機関の班長として表向きの仕事とは別に活動しているのですが、調べによると廃墟の筈のあの場所で薬品の天才と呼ばれた元科学者が旧日本軍の製法を真似て密かに毒ガスを精製している可能性が出て参りました。
我々は何としてでも連中の野望を阻止しなくてはならない。あなたに取って、戦時中の兵器工場についての情報は恐らく墓場まで持って行きたいであろう極秘事項であることは重々承知しております。
だがしかし、そのような危険な物がもし公の場でばら蒔かれる様な事態に陥ってしまったら、何の罪もない善良な国民に多大なる被害をもたらすでしょう。そんな恐ろしい事は断じてあってはならない。聞かせて下さい胡桃沢さん。どうかお願い致します」
櫻井は座布団を外し、畳の上に直接座り直すと、その場で平伏低頭した。胡桃沢がそんな櫻井の態度を見て感嘆の呻きを漏らす。
「…何と…。まさか櫻井さんのご子息がこのようにご立派に成長されているとは…。よろしい、私の知っている事は全てお話ししよう。ただしこの事は大日本帝国の恥部とも言うべき事柄だ。くれぐれも黙秘でな…」
胡桃沢はそう釘を差してから古い記憶をたどり始めた。「戦後の時代になってからと言うもの、日本では戦時中に残していた負の遺産を悉く取り壊した。
特に当時の大日本帝国軍が行っていた軍事的行動を示す物や資料は極秘扱いとされ、決して表沙汰にはせぬ様、歴史の裏に固く封印された。だが、あの海浜工業地帯内にあった薬品工場だけは様々な薬品の研究開発の場として民間の薬品会社に寄贈され、暫くはまともに機能していたんだ。
あれは今から50年も前になるだろうか、あの薬品工場で大きな事件が起こった。研究開発チームの1人が工場の倉庫から極秘と書かれた古い資料を発見したんだ。恐らくは当時の軍関係者が処分を恐れて密かに隠していた物なのだろうが、現在自分達が使っている薬品工場が、戦時中には軍事兵器の開発所として日本軍が所有していた事が記されていた。
しかも、そこで指揮を取っていた軍曹は、近隣の女子供を労働力として半ば強制的に働かせていた事も、その労働内容の過酷さも全て事細かに記されていたのだ。その上…」
胡桃沢はここで少し言い淀んだが、思い直した様に再び語り始めた。「その上当時の軍曹は戦争に勝つ為の手段の1つとして強力な毒ガスの開発も進めていた。過酷な労働で逃げ出そうとした女子供を非国民と見なし、毒ガスの威力を試す為の人柱にしたとも記されていたようだ…。
さぞかし残虐な事だと思われるだろう。しかしあの時代の軍人は皆そうだった。戦争に勝つことだけが全てだと上官から徹底的に教育されていたのだ。逆らう者は国を、天皇陛下を裏切ったのだとこれを罰し、ひたすらに富国強兵を謳っていた。
だが、戦争に敗北した事で戦時中の血塗られた歴史の闇は国家機密として永遠に葬り去られた。研究員が偶然に発見した文書はこの国が隠したかった歴史の闇を暴き出す、とても危険な物だった。
その研究員は発見した文書を上司である研究所所長に提出し、どうすればいいのかと指示を仰いだ。だが、所長はこの文書の事は誰にも言わない様にと厳命し、それを国に提出せずに横領したんだ。
恐らくそこに記されてあった毒ガスの製法を盗みたかったのだろう。もしかしたら研究費用を稼ぐ為に海外にでも売ろうとしていたのかも知れない。所長は他の研究員に知られない様、密かに毒ガスの研究を始め、そして失敗した。
極秘で精製されていた毒ガスは研究所内に漏れ出し、研究所所長を含む研究員十数名を死亡させてしまったのだ。文書を盗んだ所長は自分の研究ノートに文書の詳細を記録していた為にその事が発覚したが、肝心の文書は遂に発見されないままだった。
あの場所が廃墟と呼ばれる様になったのはそれからだ。あそこは50年前に1度毒ガスで汚染されている。下手に売却など出来ないからあそこはずっと手付かずのままだったんだ。
もしあの場所が何者かの所有物になっているのなら、そいつは恐らく死んだ研究所の所長から50年前に文書を受け取った人間の関係者に違いない。『鬼神同盟』かね?そのテロ組織のリーダーの身元は判明しているのかね?」
胡桃沢の話した国家機密の全容に、思わず息が詰まりそうになりながらも、櫻井は気丈に対応する。「判明しています。ですが未だ35、6歳の若い男です。ただこの男は8年前に焼身自殺をした事になっているんです。誰が身代わりにされたのかは未だ分かっておりません」
「…成る程…実は紛失した文書については私も警察庁などの関係者を通じて密かに探索していたんだが、分かっているのは、死んだ研究所所長には妻と当時10歳だった幼い息子がいたと言う事だけだった。
だが、妻は既に病気で亡くなり、息子は児童養護施設に預けられ、現在は消息不明となっている。生きていれば60歳くらいか、確か名前は海藤俊作(かいどうしゅんさく)だ」「海藤ですって?!♭」
櫻井は身を乗りだし、やや興奮した面もちで胡桃沢を凝視した。「そ、それは『鬼神同盟』のリーダーの父親です!♭20年前に亡くなっている!♭ST区一家惨殺事件の被害者だ!♭容疑者は当時14歳だった長男です!♭」「何と…♭」
胡桃沢は呆然として、目の前の櫻井を見つめた。「で、では文書は父親の手から息子に渡ったと言う事か…♭その息子が8年前に別人を仕立てて焼身自殺を装ったと…?♭何の為に…♭」
「…恐らく別人に成り済まし、自分の犯罪歴を隠蔽する為…。もしかしたら家族を殺害した動機も国家の秘密文書を父親から奪い取る為なのかも…♭」「信じられん…♭中学生がそんな理由で自分の家族を皆殺しにするのか…♭」胡桃沢は戦(おのの)き、呟く様に「恐ろしい時代になったものだ…」と、言った。
「胡桃沢さん。1つあなたのお力をお借りさせて頂いてもよろしいでしょうか?文書は必ず我々が取り返し、然るべき機関に引き渡します。だが、少々荒っぽい事をしなくてはならないかも知れません。例の建物…国家の遺産たるべきあの場所を破壊する許可を頂きたい。如何でしょうか?」
櫻井の言葉に元幕僚長は「君達のチームにあの場所における全権を委ねよう。存分にやってくれたまえ。政府のうるさ方は私が何とかしてあげよう」と、請け負ってくれた。「ありがとうございます」
櫻井は深く頭を下げて胡桃沢の邸宅を後にした。これで思う存分暴れ回る事が出来る…。櫻井は会談の詳細をメールにして『FIVE STORM』のメンバーに送信した。
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「おっ?班長からメールが来たぜ智♪これであのクソ忌々しいアジトを吹っ飛ばす事が出来んな♪」櫻井からのメールを読んだ潤が、撮影の合間に控え室の椅子に座って、台本を読み耽る智を、背後から抱き締めて言った。
「それにしても入り口が梯子だったなんてね。外から見ても分かんない筈だよねぇ。中にいる仲間と連絡を取ってから、梯子を下ろして貰ってそれをよじ登る仕組みだろうって翔くんのメールにあったけど、それじゃあ外部の者が外から侵入するのは不可能だね」
智の返事に潤がちょっとだけムッとする。「翔くんって?お前班長の事翔くんって呼んでんの?♭」「えっ?だって翔くんがそう呼んで欲しいって。駄目なの?」何で?と首を傾げる智の顔を後ろから覗き込み、潤は「お前が名前を呼ぶのは俺だけでいーの。だろ?」と言って優しくキスをした。
「…ん…じゅ..ん….誰か入って来たら……マズ….ふ….」軽めのキスは少し深いものになり、智はほんのりと頬を染めて、胸で交差された潤の手に自分の手を重ねた。
「もぅ…何だよぉ…そんなチュ~されたら撮影になんないじゃんか…」「ヤりたくなったろ?♪お前も近頃段々 エ ロ くなって来たな♪」「だってぇ…潤が俺のこと苛めてばっかいるからこんななっちゃったんじゃん……」「ん?いっぱい苛められて 悦 ん でんの誰だっけ?♪」
手を離した潤は、智の座る椅子を回して、自分の方に向けると、その頬を両手で挟んでもう一回キスをした。
「この分じゃ今日の撮影が終わったらそソッコー帰宅して始めなきゃな♪…それにしても…あのアジトにそんな黒歴史があったなんて驚きだぜ。旧日本軍の秘密文書に、毒ガス事故、それを引き起こした張本人はあの崎山航の祖父だったとか、出来すぎだろ?」
「何か真相に近づけば近づく程、崎山航ってやつの恐ろしさが浮き彫りになって来るよねぇ…♭何か人間の話をしているとはとても思えないよ…♭まさに鬼神って感じ…♭」
「ま、人じゃねぇならぶちのめすのに何の遠慮もいらねぇだろうけどな。とにかく休憩時間の間にさっさと片付けちまおうぜ智。んでもって撮影後にゃ残業無しの即ベッドだ。あれ、持って来てるんだろ?」
せかす潤に智は自分のバッグの中から、大きめのランチボックスを取り出した。蓋を開けると、中には黒光りする、やや大きめの黒蟻みたいな形状の不気味な代物が、ぎっしりと詰まっていた。
「うわぁ~♭気持ち悪ぃ~♭メイクさんが見たら腰抜かすぜ♭」潤が顔中を嫌そうにしてランチボックスに詰まったそれを指先でつつき、「相葉のやつリアルに作り過ぎだろ♭」と全身をワナワナさせた。虫が大の苦手なのだ。
「これ触るのやだよねぇ~♭作り物だと分かっててもためらうレベルだよ♭でもあのフェンスが外からどうにも出来ないと判明したからには準備しとかないとだね♭」智は椅子から立ち上がり、潤を伴ってロケ現場の第7ファクターから外へ出た。
始めに探索した通り、現場から10メートル先には巨大なコンクリートフェンスが禍々しくも堂々と立ちはだかっている。
智はフェンスに近づくと、ランチボックスの蓋を開け、中に詰まった黒蟻的な代物を指先でつまみ上げ、横腹の辺りにあるスイッチを押してからフェンスにくっつけた。
するとその黒蟻はフェンスをカサカサと這い回り、コンクリートのちょっとしたひび割れを発見するとそのひび割れの中に入って行った。
「『千畳の堤も蟻の一穴から』相葉ちゃんはこのことわざからこの秘密兵器を思い付いたんだってさ。すごいよねぇ。
このアリンコ1号はコンクリートのひび割れや、ちょっとした隙間を見つけて入り込むと、濃度の高い酸を吐き出してコンクリートを内側から溶かして行く仕組みになってるらしいよ。
こんなバカデカいフェンスでも、2、3日もすればボロボロになって、蹴飛ばすだけで崩れる位に脆くなるって。潤も手伝ってよ」「お、おぅ♭任せろ…♭」
潤はポケットから軍手を取り出し、ランチボックスの中からアリンコ1号を嫌そうにつまむと、隣のフェンスにくっつけた。
2人は手分けしてランチボックスの中にあるアリンコ1号を見える範囲のコンクリートフェンスにくっつけて回ると、ハイタッチをして、控え室に戻って行った。
そこに丁度いいタイミングでニノからのメールが送信されて来る。『崎山航が身代わりに殺した男の身元が分かった。さっき店に来た客からの情報だ。
丁度8年前に失踪した身寄りのない30歳位の日雇い労働者がいたらしい。今日の客も若い頃手っ取り早く稼ぐ為に一時日雇い労働をやっていたとかで、その男と一緒に働いていたそうだ。
男はかなりヤバイ筋から金を借りていたらしく、返済日までにどうにか頭金だけでも入れないとマズいからと言って必死で働いていたそうだ。ところがある日を境に現場に来なくなった。
客は借金取りがどうにかしたんじゃないのかと思っていたらしいが男を探して借金取りが現場にまで押し掛けて来た事で、男の方が逃げたのかと最近まで思っていたんだそうだ。
客はある建築会社に就職して、営業マンになったんだけど、その営業先で貰った名刺が、逃げた筈の日雇い労働者と同姓同名で滅茶苦茶驚いたらしい。
でも営業先で会った人物は失踪した労働者とは似ても似つかない顔をしていて、借金取りから逃げる為に整形でもしたのかと客は思ったそうだ。だから俺は偶然じゃないのかと客に言った。
でも客はそんな筈はないと言う。何故かと聞いたら失踪した労働者ってのはかなり珍しい名前だったからだと答えた。野副亜久里(のぞえあぐり)失踪した労働者の名前だ。
今は広告代理店で働いているWebデザイナーらしいが、客はそれもおかしいと言っていた。失踪した男はパソコンどころか携帯電話もまともに使えなかったと言うんだ。
客は不思議な事もあるもんだと首をひねってたけど、失踪した時期を聞けば丁度ジェイの言っていた化学教師が焼身自殺をした時期と一致していた。
俺は早速ショウ隊長に報告してその広告代理店に探りを入れて貰ったが、野副亜久里って社員は間違いなく崎山航だったらしい。これで大体の材料は揃った。そっちも行動を開始してくれ』
ニノからのメールを消去した潤は、同じくメールを読み終わった智に言った。「どうもソッコー帰宅って訳にゃ行かなくなったな智…♭」「そんなぁ~♭」残念そうに口を尖らせる智を潤はムギュっと抱き締めた。
どうしましょう、書けば書くほど内容が大規模になって行く
一応潤智コンビの活躍で対決の下準備は終了させる予定になっているんですが、さて2人には何をやらせましょうか?(考えとけよ
)
なんにせよ次のお話は潤智メインで進行させるつもりではありますので、イチャイチャも含め、どんな展開になっていくのか、相変わらずの出たとこ勝負でやって行きたいと思います_(^^;)ゞ