―退屈なこの国に エア・メールが届く

―おまえからのレター 遠くから とても遠くから

  『あの娘のレター』by 忌野清志郎/仲井戸麗一(アルバム『BLUE』より)

 

くろやまんさんとはRCが共通項でしたね。

家では布製のウォールポケットに郵便物を収納しています。これがいっぱいになるとクリアホルダーにお引越しなのですが、「みんな、よくもまあ、こんなに手紙を送ってくるな」と、断捨離の手を止めて感心していたところです。思ったより友達がたくさんいて素直に感謝。中でも姪っ子の手紙が大量にありましてね。手紙ばかりかいろんな動物の折り紙まで。近所に住んでいるのにも関わらずこれなので、単純にお手紙を書くことが大好きなのでしょうね(笑)。

 

 

「ねちゃう」?寝ちゃったらダメじゃないかあ。しかし、エッヘッヘ、ラブレターですよ(嬉)。いけね、また断捨離の手が止まっている(汗)。あっ、フォロワーさん皆さんの記事、全部読めておらずスミマセン。

 

 

さて、「ジャズギターのいま」の第二回はJulian Lageです。

まず初めに、極めて私見ながら、私はジャズ(ひょっとするとクラシックを含めた他の音楽も)を聴く際に、Keith Jaretteのピアノになり得るのか、どこまで近づけるのか、ということを基準のひとつに置いています。Keithの音はそれぐらい凄い。ジャズピアニストでありながら、バッハをクラシックピアニスト同様に弾いてしまう技量。一音鳴らしただけで誰しもが「Keithのタッチだ」とわかってしまう個性。ストックフレーズに頼らない本物のインプロヴィゼーション。敷居が高い。高すぎる(苦笑)。

 

実は前回Milan Angelo NovákにもKeithの匂い、さしずめKeithがNYのパワーステーションで収録した80年代の「Standards」シリーズに似た匂いを感じました。若いだけに曲想に対してまだまだ音数が多いですが、柔らかいピッキングタッチとテクニック、フレーズの入りのところどころに可能性を感じます。Miles Davisの「聴こえる音だけを演奏しろ」、この辺がヒントかもしれません。メロディーを紡ぐ際の考え方ですね。

 

前置きが長くなりましたが、Julian Lageを聴いてみて、私は「これはギターのKeith」だと(マジか…)と、大変に感銘を受けました。これぐらいの技量になるとメジャーなプレイヤーの筈なんですが、スミマセン、シーンを追えておらず。

まずはこちらの演奏から。ジャズのスタンダードナンバーで、作曲者はJohnny Mandelです。Bill Evansが世に広めたのかな?クラシックギターのEarl Klughバージョンが気に入っていますが。

ソロギターで「Emily」。美しきワルツ曲です(kinooさん、踊りの準備を)。

 

 

前回の記事で【0:33~0:44】など時間帯毎に一筆記したものの、縦長になりすぎました。肝心の動画と照合しにくかった。そうならないよう、二段の段組み形式にしてみます。今回は分数刻みの解説も必要ないですね。必要ないぐらい演奏が繋がっている。解説やライナーノーツなんてものは野暮だというかたは、どうぞスルーしてちょ(笑)。

 

【解説】

【感想】
感想は、ただただ素晴らしいです。演奏中声を出しながら弾く様はKeith Jaretteにも通じます(あの声出しには確たる理由があるとのこと)。表情や声も合わせて楽しんでもらいたい。
今歩いているところを見て回り、これから歩いて行く道筋を遠目に眺め、悩んだり、ノったりしながら音を紡ぎあげていきます。
 
こういう表現が許されればですが、キリストとモーツアルトを足して2で割ったらこういう人になるのかな、とも。
一時期、慢性疲労症候群の病に伏したKeithではないですが、「Julian、そんなに弾いていると君が音になってしまうよ?」と心配してしまいます。

 

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【奏法】
ソローギターで演奏する場合、誰もが一度悩むのがピックで演奏するのか、それとも指で弾くのかということです。経験の浅いうちは、単弦での速弾きやコードストロークはピックが有利でしょう。アルペジオは指が有利。指の利点はピックでは出せない柔らかいタッチの音が出せること。爪をどの程度伸ばすかで分岐点がまたひとつありますね。
 
Julianの場合は、親指と人差し指でピックを扱い、中指と薬指は指弾きです。Joe Passもやっていたことで新しいことではない。この奏法だと、ピックと指のタッチの差が気になるところです。ところが、Julianの演奏から違和感は感じない。素晴らしいです。
もう一点注目したいのが、彼の頷くような首振り。これが何かというと―

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「この音をチョイスだ」「ここだ」という確信(楽譜を見てではなくアドリブなので)がひとつ。もうひとつがリズムをとる所作でしょう。
バンドやオーケストラの楽曲をソロギター用にアレンジする際の考え方として、「ひとりギターオーケストラ(バンド)」というものがあります。要は他のメンバー―ドラムス・ベース・ピアノ・ギター・ボーカル…etcの出す音を極力弾くようにする、ということです。
  トップラインのメロディーも、リズム隊が奏でるリズムも、内声を担当する楽器の音も極力拾う。わかりやすい例が、パッティングやスラッピングを駆使して、ギターを叩きながら演奏するテクニック。ドラムス中心に指揮をとっているロック系統の楽曲のアレンジには有効でしょう。ただ、そればかりに頼ると―「頼る」という行為は得てして単調に陥るが―楽曲が本来持っている表現力を殺してしまう。

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Julianの本演奏の場合は、そこに立ち位置を定めていないことがわかります。首を振って頷いて、でもドラムスの分は弾かない。「弾かなくてもわかるでしょう?」と。ワルツ形式の誰もが一度は耳にしたことがあるリズムですからね。弾かないことがかえって有効にすら感じられます。
楽器でも文章でも、自分が演奏したいことを、
  書きたいことを全部、と感情にまかせたパフォーマンスをした結果、気持ち悪いものができあがってくることがままあります。やる気がない時のほうが、我ながら悪くない演奏だったり文章だということさえある。
見逃せないのが、受け手―聴き手だとか読み手の存在です(自分の演奏や文章を後で自分で聴く、読む場合も含む)。

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120%でガーッと走ってしまわず、8割でいく。2割足りなくて物足りないけれど、そこは引いてタメる。足りない分を脳がきっと補完しようと働くんだと思います。まして人に聴いてもらったり読んでもらう場合は、受け手それぞれが違った補完の仕方をするでしょう。8割+2割=20割なんてことも起こり得るかと思います。   Julianの弾き方は新しいものではありませんが、演奏の奥行とは演奏しないことにもあり。一方通行ではなく、受け手からも実に多くのものが返ってくる。改めてこんな所感を持ちました。

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【音作り】
〈使用ギター〉
GIBSON・LesPaul(型番・年式不明)ですね。LesPaulは詳しくないのでスミマセン。ジャズギターにLesPaulとは珍しい。使っている人を見たことがない。ところがJulianFENDER・Telecasterを使用することさえあります。Telecasterといったらテキサスの荒くれ者よろしくブルースロックギタリストが使うイメージです。
 
〈アンプ〉
本棚の上にROLANDBluesCubeZT AmpLUNCHBOXがありますが、そこから音を出している訳ではなさそうです。音色から、ジャズギターアンプの王道ともいえるPolytonemini bruteを足元に置いている訳でもなさそう。勿論ラインで卓に直でもない。FENDERのアンプのような気がしますが判断しかねます。

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〈ピックアップ〉
これが出色です。LINDY FRALINのP-90タイプ。リンク先の通り、激安ギターが一本買えてしまうぐらい高価です。
ピックアップは大まかにいうと、GIBSON系のハムバッカーとFENDER系のシングルコイルに分けられます。フルアコやセミアコは概ねGIBSONのP-90タイプのハムバッカーを搭載しています。
 
ところが私、ハムバッカーのモコッとした音が今一つ好きになれなくて。中低音の扱いって難しいんですよ。下手をすると音が濁りすぎて何を弾いているのかよく聴こえないという…。録音の際にはパラメトリックイコライザーで中低音域をカットし、ドンシャリ気味にイコライジングしています。寧ろFENDERStratocasterTelecasterに搭載されている

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シングルコイルタイプのピックアップに目がいってしまいます。
このLINDY FRALINのピックアップはハムバッカーとシングルコイルの中間ぐらいの音です。驚くことにMIDレンジに嫌な感じがまるでなく、粒立ちが整い凄く艶のある音。アコースティックギターやフルアコではないので聴こえる筈がないのですが、木の音さえ感じます。
  良いですね。惚れました。3:29の1弦12フレットの音など溜息が出ます。うちのセミアコ君のピックアップ換装の候補として、BARTOLINIあたりが頭に浮かんでいましたが、こちらも頭に入れておきます。
もっとも音作りの大半は機材やギターではなく、腕だと思ってます。心と頭と指。あまり凝らないようにしたいものですね。

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興味を持ったかたのためにもう一曲。曲はAutumn Leaves(枯葉)。超有名なジャズのスタンダード曲です。昨秋autumnさんに弾こうかと一瞬思ったものの、「ラブレターととられてしまうとびっくりさせてしまうな、アカンアカン」とやめておきました(苦笑)。

 

少し若い頃ですね。Keith Jaretteの「ブレゲンツ・コンサート」あたりのソロピアノの匂いがプンプンしてきます。ホントにキリストとモーツアルトを足して2で割ったよう。楽しそうで、それでいて神がかりです。

 

 

段組みまでして全然書き足らないな。「専門的なことを避けてライトに」だとKeithと似ている点などをしっかり書けない。論旨がずれているところもあるし。文章の才能がないのでしょう(苦笑)。まどろっこしいので、曲だけ聴いて感動してもらえたら幸いです。

 

ー以上ー