ダルマ

幼少時よりたくさん相撲をとって遊んだせいか、それからウン十年経った今でさえ、身体が相撲の感覚を覚えているので不思議だ。大学の時も(1年だけだが)細身の体ながら相撲部に所属していた。

《出典:photoAC:ニッキーミナージュ様》

 

私は左四つなので、左腕を相手の右脇に差すところから相撲が始まるイメージだ。この左差しは深く肩まで差せれば最高だ。深く差せなければ右の上手まわしを狙う。右上手が肩越しでは懐に入られてしまうのでだめ。できるだけ浅いところをとる。上手がとれたら釣り気味に寄る・寄る・寄る。

 

が、このパターンになることは少ない。左半身(ひだりはんみ)の姿勢が癖としてしみついていて、右の上手がどうしても遠くなってしまうのだ。右の上手がとれないまま四つに組んでいるのは、次の攻めが下手投げ一択になってしまう。下手投げを打っても相手を懐に呼びこむ結果となり、そのまま寄られジ・エンド。

そうならないよう小手をまいている右を巻き替え、もろ差しを狙う。2本入ったら、相手の懐に入って寄る・寄る・寄る。

 

「プロとそのへんの人」の実力差は置いておいて、この取り口、有名どころでは嘗ての元関脇・益荒雄関の相撲が一番近かったように思う。体を柔らかく使って自分有利な態勢を作っていくところや、土俵際でのしつこい粘りも似ている。正攻法とは言えないので、大関以上は難しく、怪我もしやすい相撲ではないかと思う。

 

益荒雄というと、益荒雄旋風が有名であり、初の三役ながら横綱大関を総なめにしたことがあった。多少力が落ちていた頃とはいえ横綱千代の富士をも破ったが、小学生の頃に筋骨隆々の加藤君とよく相撲をとった身からすると、十分あり得ると思っていた。

 


 ダルマ

加藤君はみんなに恐れられている孤高のボス的存在で、生まれ持った筋肉の質が他とは違う子だった。足も恐ろしく速く、筋肉の付き方も子供ながらミニチュアの千代の富士といったところだった。

《出典:illustAC:ホルヘルイス様》

 

加藤君と相撲をよくとるようになったのは、初めての一番で、益荒雄のコンニャク相撲を駆使して私が勝ってしまったのがキッカケだった。加藤君は私になど負ける筈がないと思っていたので、カッとなって「もう一番」「もう一番」…∞と増えていった。

 

加藤君と組んでみるとそれは力が強かった。瞬発力が桁外れなので一気に土俵際まで持って行かれたり、投げも暴力的な投げだった。が、筋力があるゆえの体の使い方のかたさがあったと思う。脇も甘かった。膝や腹筋・背筋を柔らかく使う、足技を駆使することでその間隙を突き、6:4ぐらいで私に分があったと覚えている。

 


 ダルマ

大学の時を思い起こすと、苦手なのが低い姿勢で頭から突っ込んでこられること。特に100kg超の体格の人に、猪突猛進でこられると左は浅くしか差せず、当時70kg程度しかなかった軽量の身にはひとたまりもなく、体重差そのままに一気に土俵際まで吹っ飛ばされたものだ。

《出典:illustAC:KIMASA様》

 

低い姿勢で押してこられるのは苦手だったが、つっぱりに関してはそれほど苦ではなかった。必ずどこかに隙ができて、うまい具合に組ませてもらえることが多かったので、そうなれば勝機がでてくる。

 

好青年(相撲には関係ないが)だけれども、張り手大好きな奴がいた。往復ビンタを二往復ぐらい食らわされて、「ひどいな、オイ」と思いつつ何とか四つに組む流れが多かったが、決まって組んだ時に「ゴメンネ」と謝ってくるのが可笑しかった。

 

総じてみんな私よりは体重があったが、タッパがそうなかったので、懐に入れて胸を合わせてしまえば圧力はそれほど感じなかった。そして寄るコツというのか、うまく腰を使って相手の体を浮かせる術を子供の頃に身に付けていたことが大きかった。やっぱり自分より体重がある人間を寄り切るとそれは爽快だった。

 


 ダルマ

この相撲のクセは、公私関係なく誰かと向かい合わせで立っていると、この年になってもナチュラルに呼び起こされてしまうのが我ながら可笑しい。左腕を相手の右脇に差すイメージが何となくもやもやと喚起されるのである。私といる人はなにとぞ右脇は閉めておくようお願いしたい。

 

姪っ子とは会うたびに相撲をとっていて、派手にやられて白目を剥いて倒れ、涎を垂らして昏倒する役を演じているが、この左差しにはすっかり慣れられ、滅多に差すことができなくなってしまった。更には左差しどころか右差しさえ許してくれない。悪漢から身を守る感覚をこの時期から身につけてくれたので、おじさんとしてはしてやったりだ。

 


 ダルマ

早朝に相撲をとれる所はないのかな?

土日祝の相撲大会イベントではなく、平日にルーチンでひと相撲とれる所。

朝の5時、寺社の境内や道場の凛とした空気の中で相撲がとりたいな。身も心も引き締まること間違いない。

 

四股と鉄砲、すり足の基礎運動から始まって、受け身の練習をして、最後は10番程とって終了。ご飯茶碗一杯程度の軽くでよいのでちゃんこ鍋を食べれたら尚良し。

まわしだけは自分のまわしを使いたい。大学の時、使いまわしかつ洗濯が十分に行き届いていないようなまわしを使っていて、鼻の曲がる臭いだった。あれだけは勘弁願いたい。

 

以上です。