【仮想大江戸】異聞録 第09話 親子の絆 | 今も昔も

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「自作歌詞&曲」と「声劇台本」が主食のごった煮ブログ。


<キャラクター一覧>
男女比 ⇒ 4:3:1

・麗奈(れいな):女声
妓楼に住んでいる芸姑。酒豪で姉御肌。本作のヒロイン…のはず。
本名は浅葱。千草のことは「ちぃ」というあだ名で呼んでいる。

・清白 千草(すずしろ ちぐさ):男声
麗奈の住む妓楼の店主。オカン気質で本作品一番の苦労人。

・嘉萩 ミカン(かしゅうみかん):女声
嘉萩家の当主代理。お猫様の下僕。現在の最高権力者。

・梔子 剣(くちなし つるぎ):男声
嘉萩家の護衛を務める家の長男。永遠の思春期少年。読んでるのはジャ○プかエ○本か…

・梔子 徹(くちなし とおる):不問
剣の弟。天真爛漫だが頭は切れる。兄とは異なり、どちらかと言えば頭脳派。

・紅 夜子(くれない やこ):女声
芸能を生業とする一家に生まれた跡取り娘。独特な口調で話す変わった子。

・風間 常磐(かざま ときわ):男声
風魔一族の当主。イケメン、イケボ、仕事もできるハイスペックで恋に一途な男だが、どこか残念。

・先代・風魔小太郎:男声
常磐の父にして先代の風魔当主。ロリコン?誰か呼んだかね?

・梔子 重蔵(くちなし じゅうぞう):男声
剣の父親。






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※名前略語+M⇒語り、もしくは内心
※立ち位置がかなり複雑なので、場面の説明が必要な部分はご指摘ください。



【仮想大江戸 異聞録09話】

<SE:戦闘音>MIX師さんのお好みでどうぞ


夜子:はぁあああああ!!!

風魔:掛け声までも勇ましいお嬢さんだな

夜子:戦闘中に大声出す理由、まさかご存知ないんッスか?

風魔:ただの護衛ではなく、我々は忍びなものでね。

夜子:ここまで派手に戦闘してたら、忍者もへったくれもねーッスけど。警察は呼んでありやすし。

風魔:それでは、連中が来る前に片付けよう。



<タイトルコール>
常磐:仮想大江戸 異聞録 第09話 親子の絆


<BGMフェードアウト>


<BGM:>
<SE:>探しものして物を移動させる音

ミカン:確か…この辺りに古い書物がたくさんあったはずなんです。

千草:本当に、巻物という形になっているのかな?

ミカン:何が言いたいんですか?

千草:もし万が一にも、当主に口で伝えられているものだったら、どうする?それにそもそも、本当にその情報が目的かは分からないじゃないか。それなのにミカンさんはそれを探すべきだと言う。

ミカン:……っ

千草:ねぇ、何を知っているの?

ミカン:徹といい、私の周りには賢い方が多くて困ります。

千草:オレは徹くんほどじゃないと思うけどね。

ミカン:実は、嘉萩が受け取ったという情報の中身は分かっているんです。

千草:分かっている?…風魔小太郎に狙われそうなものなのかい?

ミカン:本来、忍者と呼ばれた一族は身体能力や便利道具を使う形で、戦いを有利に進めます。決して怪しげな、魔法のようなものを使うわけではありません。

千草:それは、オレも常磐と付き合い長いから知ってるよ。

ミカン:その便利道具たちが世の中に出回れば、戦のバランスは崩れる。中でも特に秘術とされていたものがあります。一見すると医学書なのですが…

千草:あれ、もしかしてこれかな?著者が「風魔小太郎」、タイトルは…「人体解体白書」?気味の悪い挿絵がたくさんだけど…

ミカン:見つけたんですか!!その本の最後…実現可能かは分かりませんが、とある忍術……とも呼べないような術が書かれています。

<SE:本を捲る>

千草:これは…

ミカン:恐らく、風魔小太郎が探しているのは、その術式の使い方。

千草:…麗奈のためには、これを風魔に渡したほうが良いのかな……

ミカン:馬鹿を言わないでください!麗奈さんのことを思うのなら、尚更……実際、こんなオカルトじみた術式が成功するわけがないじゃありませんか!風魔小太郎というネームバリューだけで、こんなチンケな冊子がイタズラに世間を騒がせてしまう。それを恐れたとある当主が我が家に預けたのですよ!!

千草:ごめんね、分かってる…分かってるんだ。よし、ミカンさんも安全な場所に行かなければ。

ミカン:はい。



<BGMフェードアウト>
<BGM:>



<SE:足音>


剣:おかしい…なんでこんなに人が居ないんだ?

徹:兄ちゃん、あっちや!あっちから父ちゃんの声がする

剣:親父が来てるのか…?いや、そりゃ嘉萩家が襲われたってなれば来るだろうけど…

徹:あと…イガイガのおじちゃんの匂いがする

剣:は?イガイガって…うちに居候してるあのおじさんか?…っとぉ~、流石にそうやすやすと移動させてくれねぇよな!徹、行くぜ!


<SE:足音(砂)>
<SE:戦闘音>


徹:分かった!

剣:男なら、拳で語れ!!せいやっ!!

徹:ほい!兄ちゃん、後ろ!

剣:任せろおおおおおおおおおおおお!!

徹:に、兄ちゃんが強い!!

剣:当たり前だろ!なんといっても兄ちゃんだからな!あっちは…まだやってるのか。徹、手助けに行くぜ!

徹:うん!

夜子:くたばれええええええええ!!


<SE:戦闘音>クレッシェンドさせる
<SE足音止める>


夜子:がっ…

徹:風魔のお姉ちゃん!

風魔:確かに、強いようだな、お嬢さん。私の嫁に来るかね?

夜子:げっほ…お生憎様。おじ様のことはお義父様って呼びたいかなぁ。

風魔:残念だ。まぁ私も、お嬢さんのような子には興味は無いが…ね!!


<SE:蹴り飛ばす>


夜子:っ!?


<SE:地面に膝をつく>


剣:夜子さん!!


<SE:足音(砂利or砂)>


風魔:我らの一族と名乗っても疑えない程の実力はある。私が認めよう。

夜子:っへへ、そりゃどうも。

風魔:しかし、その程度だ。さらば、未来の娘よ。


<SE:金属で金属を弾く>


風魔:ほう、鉄扇で小太刀を弾くとは…なかなか腕の良い。

麗奈:そこのロリコンクソオヤジ!!


<BGM:>


麗奈:私の大事な同僚に手出ししてんじゃねー!!

風魔:おや、浅葱…随分と可愛く育ったじゃないか。ますます樹音に似てきたなぁ…

麗奈:気持ち悪いぞ、ロリコンめ。私は樹音じゃない、浅葱だ!お主、生きていたとは思っていなかった。そして私を探していたとも。本当に最低な野郎だな!

風魔:当たり前だろう?愛しいと思う者を追いかける、これは誰でもすることだ。


<SE:足音(走る)>


常磐:夜子!……何故留まった、逃げて助けを呼ぶくらい簡単だったろうに

夜子:えへへ、常磐のお父様がちょーっち気になったってのもあるんだよね。分かったのは、やっぱ常磐のお父様は強いってことと、ケホ……おんなじくらい一途ってことかな

麗奈:そこぉ!一途とか綺麗な言葉で片付けるな!気持ち悪いだけであろう…

風魔:常磐…お前も随分逞しく育ったようだ。そのお嬢さんは"盾"か?自分に惚れている女を先鋒に使うなど…流石は手段を選ばぬ当主殿、と言ったところか。

常磐:べらべらと煩いその口を閉じろ。行方しれずになってから、随分と忍びらしさが無くなってはいないか?

風魔:父親に向かってなんという口の聞き方だ。私はお前をそんな子に育ててしまったのか?今からでも遅くない、私を見習いたまえ。


<SE:足音>


剣:常磐さん、夜子さんはおれが。行ってください。

常磐:すまない、任せるぞ。

徹:風魔のお姉ちゃんに…なんてことするん?イガイガのおじちゃん、嫌いや!!

風魔:おや、梔子の坊やたちにも嫌われてしまったか。まぁいいさ。私には樹音だけが居ればいい。そのために今!お前たちが邪魔でしょうがない…ここでくたばってもらおうか!さあいでよ、我が眷属たちよ!!


<SE:着地音>※複数


常磐:っく…先代についた忍びがこれほど多いとは…。

麗奈:ロリコンのくせに人望はあるようじゃのぅ。

常磐:麗奈、下がっていろ。一般人相手ならばともかく、お前には荷が重すぎるだろう。

麗奈:言われずともじゃ。ヒーローは遅れて登場するものじゃからの!

常磐:千草の苦労がかいま見えた気がするな…

風魔:お前たち…殺れ。


<BGM>
<SE:戦闘音>MIX師のお好みでどうぞ
<SE音量落とす>


夜子:剣、もう平気ッスよ。ウチも行かなくちゃ…

剣:でもそんなボロボロで!血も出てて!

夜子:せめて、あの手下たちを常磐から引き離さないと、戦い辛そうじゃないっすか。

剣:だったらおれが!

※夜子、(声色を訛る前に戻す)

夜子:剣。剣がミカンのことを守るのは、家系で定められているからかしら?

剣:違う!そんなの、ミカンさんのこと大事に思ってるからに決まってるだろ!

夜子:それじゃ、あたしが言いたいことも分かるわよね。あたしは常磐の為に戦いたいだけなの。音楽も戦闘も全部そう。あたしが知っている世界は、全部常磐が見せてくれるものだから。あたしは常磐のために使う。例えそれが、命をかける戦いであっても。

剣:夜子さん…おれも、おれもミカンさんを守りたい!強くなってミカンさんを守る!好きな奴守れなくて、何が男だよ!

(営業モードに声を戻す)
夜子:だからほーら、雑魚戦、行くッスよ!

剣:はい!!おれも、自分の思うことのために行きます!


<SE:戦闘音>


風魔:あの怪我であそこまで動くのか。随分と健気な子に惚れられているようだ。羨ましい限りだよ、常磐。私があの子を手に入れたいくらいだ。

常磐:っ!…っく……黙れ、そんな目であいつを見るな!

風魔:お前にも分かるだろう。愛する者が死ぬ恐怖が。愛する者が他の男を愛する恐怖が。どうだ、想像してみろ。あのお嬢さんが別の男に寄り添っていたらどうする?

常磐:黙れ、黙れえええええええええ!!!!

風魔:心を無にせねば忍びは務まらん。お前にほんの僅かでも感情を残させたあのお嬢さんを恨むのだな。

常磐:お前に分かるものか!愛されずとも、守りたいと思うことが!惚れた相手を静かに守り続けることが、どれほどの幸せであるか!!

風魔:理解に苦しむ。永久に寄り添い合っていなくては意味がない。そのためならば、多少の無理は通させてもらおう。


<SE:砂をずる音>
(常磐が一旦風魔から距離をとる)


常磐:お前、何をするつもりだ

ミカン:反魂の術、ですね。
※渡り廊下から庭で戦う二人に呼びかける

常磐:ミカン殿!おい千草、何故逃げなかった!!

千草:やっぱり麗奈を放って置けなくてね。戻ってきちゃった。

麗奈:ば、馬鹿者!自分で隠れているくらいできる!

風魔:おや…樹音の次は浅葱までもが、そのように低俗な俗世の男に絆されるのか。嘆かわしい。嘆かわしいことよ。

ミカン:まさか、こんなことをしようとしているだなんて。

麗奈:その本は、何じゃ?

ミカン:風魔一族が残した医学書。記載されているのは…『反魂の術』

常磐:なっ!?貴様…そんなことをしようとしていたのか…!自分を当主と慕った連中を使って、そのような非道。許されると思うのか?

麗奈:反魂の術…?

ミカン:簡単に言えば、死んだものを蘇らせることです。差し詰め、麗奈さんのことは反魂の術に失敗した際に、樹音さんの代わりに連れ帰るつもりだったのでしょうね。

風魔:何を言うか!愛する人と永遠に共にありたいと願うのはおかしいことか?

常磐:禁術を使って蘇った人間がどうなるか、誰も成功したことがないから分からない。

風魔:あぁ、分からぬな。だから……予備として浅葱を手に入れる。

常磐:狂っている

風魔:何を言うか!常磐、お前もそうであろう?愛した者と永久に寄り添い合い生きて行く。この素晴らしさが分からぬお前ではあるまい!

常磐:貴様……母上に、何も思うところはないのか!里の外から来て、ただ貴様のそばにあり続けた姿勢が、今でもどれほど一族を支えていると思っているんだ!!

風魔:絢音(あやね)への愛、だと?なにを分かりきったことを。

千草:しかし、一族以外の人間と血を混ぜるのはご法度では……

風魔:愛故に、時として掟を破るべきこともある。

麗奈:絢音…?待て風魔!今、絢音と言ったか!!絢音とは……まさか…

風魔:そうさ!私は樹音を愛してなどいない。私が求めるのはただひとり、七色絢音。浅葱、お前の叔母だよ。だがね、私が反魂の術の存在を知った時には遅かった。術には絢音の血と骨が必要だったのだ。だから私は樹音の村へ向かった。そうすれば、瓜二つの樹音を殺め、新しく絢音として育てることができる!

麗奈:お前が……お前が母さまの大事な姉君を奪ったのか…!

風魔:あぁ、そうだ、素晴らしいよ浅葱!さぁ、そうやってもっと私に感情を向けてくれ!!

常磐:見損なった…いや、呆れすらも通り越して憎い。母上がお前に尽くしたこと!兄達がお前に認められようと必死になっていたこと!忘れたとは言わせない!

風魔:青臭い。常磐、お前もまだ子供だ。この愛の崇高さは…分からんようだな。術に失敗したとしても…私には浅葱がいる。決して一人ではない。

麗奈:…っく…お母さんはもう居ない!浅葱も…昔の弱い私も、もう居ない!

常磐:お前は生かしておけないな!剣をとれ!


<SE:戦闘音>


風魔:何故だ!何故分からぬ!

常磐:永久に共にが全てなら、何故俺は生まれた。何故人は子を残す。永遠の命とは、続く一族の血統ではないのか?

風魔:そこに!私とあいつが居なければ!何の意味もない!!

常磐:俺は一族のためにお前というガンを排除する。樹音殿も、妻を愛せぬような奴には応えまい!


<SE:肉を切る音>


(腹を刺されれ吐血)
風魔:ぐ……器用に重要な臓器を避けたか?やはり、お前は兄弟の中でも一番の腕利きだ……殺すこともしないというのか。


<SE:刀を体から引き抜く音>


麗奈:私もお前なんかと一緒に行かない!私の居場所は千草の隣だ。だから…ミカン、お願い

ミカン:任せてください。こんなものあるから、馬鹿が群がるんです。消し炭にしてやります。

風魔:貴様…その書物を燃やせば、風魔が嘉萩を守る理由は無くなるぞ

ミカン:願ったりかなったりです。こんな悪しき習慣、無くなるべきですよ。我が家には、梔子という存在も居りますので。えいっ


<ここまでにBGMフェードアウトさせる>
<SE:燃える音>


風魔:ああぁ…あぁ……術が、私たちの宝が…

麗奈:私はもう、樹音の娘、浅葱ではない。――ここにいる千草に雇われている芸姑、麗奈だ。お前の知る樹音の娘はもうどこにも居ない、お前があの時、母と…樹音と共に殺したんだ!

風魔:私は…ただ、絢音を。何故だ…何故……


<SE:砂をずる音>


風魔:何故だああああああああああああ!!!

常磐:なっ!火薬玉!?まだ持っていたのか!?っく


<SE:足音(砂、走る)>
<SE:爆発音>


夜子:っく…あ…

ミカン:夜子!?何して…!


<BGM:>

※爆発で傷が深くなった先代風魔、とっさに常磐と爆発の間に入った夜子は負傷

風魔:馬鹿な……身を挺して、なぜ、そこまで……常磐をかばう!!

夜子:お義父様、あたしには分かるよ。絢音さんが、すごく大事だったんでしょう?……でも、本当なら、本当ならお義父様は、絢音さんの忘れ形見を大切にすべきだったの

風魔:何を……

夜子:だってそうでしょう?絢音さんはきっと、生きていたら……常磐をとても愛してくれたはずだから。歪んだ親子関係なんて、あたしたちだけで、十分……なの。


<SE:倒れこむ音>


常磐:夜子!!


麗M:燃え盛る木々の合間に、炎よりも赤く鮮やかなものが舞い上がった。私達が嘉萩家の周囲にまで火事が広がってきていたことに気づいたのは、夜子がそっと目を閉じ、先代の風魔小太郎が気を失ったのと同時だった。


<BGMフェードアウト>







おまけ

常磐:次回予告!
夜子:次はついに10話だね。
常磐:これで次回予告も最後か。感慨深い…
夜子:ちょっと!少しはあたしの心配してよ!これ超気になる終わり方してるでしょ!
常磐:ん?ヒロインである夜子が死ぬはずない!
夜子:ねぇ、知ってる?早死ヒロインって人気が出るんだよ。
常磐:え、それは困る!!は、早く次回の台本を渡すんだ!
夜子:次回、仮想大江戸異聞録、最終回。「月と星と太陽と」
常磐:夜子の人気が出たら俺は…俺は嫉妬で狂うかもしれない
夜子:そっちの心配かよ!