花潜花粉に塗れ生を終え/心音

先日　いつも読ませて頂いているアマンバさんのところで

「神さまのカルテ」の読後感想文をシリーズで読んでいたら

懐かしく思い出した先生の顔があったので書き留めたくなりました

昔の事　父が地元でとても評判の良い総合病院に通っていて

肝臓が少し悪いようだからと定期処方のお薬を頂いて飲んでいました

一年に一度検査をし　虚弱ながらも元気で過ごしていたある年の事

父が母に内緒で私の処に訪ねて来ました

「先々週定期検査をして　院長にも大丈夫変わりなしと言われたのに

急にお腹にぽこっと拳くらいの大きなものが出来たんだ

パパはもうダメかも知れない」

すぐに診てみると　硬くて丸い突起のようなものがお中にあります

嫌な予感がしました

病院では院長は逃げ　外科の先生が担当医になりました

「肝臓癌であと３ヶ月です　悔しいですね　医療ミスだと思います

院長を訴えますか？それならできる限りの協力を･･･

でも　ずっと診ていてこんな事　本当に悔しいです」

先生は正直ですぐに涙が出てしまう人でした

家族で相談して　セカンドオピニオンを受けましたが同じ結果で断られ

顔が観えなくなるまで９０度に頭を下げ　ごめんなさいと言われたようでした

結局争いの嫌いな気弱な父に告知をすることはせず裁判もせず

初めの病院で　６人部屋を１人で使わせて貰い

家族や親せきが絶えず何人かいて

最後まで　賑やかで楽しい時間を過ごすことにしました

院長は廊下などで出くわすと　走って逃げて行きます

私たちには外科のМ先生が便りでした

痛みを減らす以外　何もすることはできないけれど

М先生がしょっちゅうしてくれた事がありました

１１時４５分にふらりと病室に現れて　М先生は父のベッドに座ります

その頃は癌が腰に転移し痛みと闘っていましたが

途端に　父はうれしそうな顔になって口を開きます

ふたりは　こいつはいいねぇ　旨そうだとか言いながら

３分クッキングを観ているのです

3分クッキングを壮大に弾いてみた　かてぃん

治療の術も無い程手遅れだったことは

父に気付かれないように必死でした

姉と私は　冗談を言い父を笑わせ励まし

　早く治るようにと嘘をつき続けました

そして先生は父が亡くなる前まで　

ずっと３分間の寄り道をして下さいました

父の最後の言葉は「もう頑張れないよ」でした

告知が出来なかったので　励まし続けるしか出来なかった家族の

無理な笑顔の中で　父は気が付いていたのかも知れません

それでも愚痴ひとつ言わずに　最後の最後まで頑張ってくれました

父は　М先生の寄り道を毎日楽しみにしていました

何を話すわけでもないのに　ただベッドに座って３分間同じテレビを見て笑う

その時間の　うれしそうに笑う父を忘れられません

本当に有難かったです　父には一番の治療だったと思っています

М先生に　感謝を込めて…

クレソンと菊芋のポタージュ

身体に良いスープです

キリリっと冷やして頂きます

レタスや絹さやが収穫され

生野菜が美味しくなって来ました

これから暫く　絹さや　スナックエンドウの

お料理が続きます

初日は海老とバターソテーにして

翠