本屋さんのこうじ漬け人気 渡岸寺の山岡さんが仕込んだ麹で | 近江毎夕新聞

本屋さんのこうじ漬け人気 渡岸寺の山岡さんが仕込んだ麹で

 長浜市北部の冬の郷土料理「こうじ漬け」を長浜市木之本町のいわね書店店主、岩根豊隆さんの母、ふみ子さん(73)が手づくりして同店店頭で期間限定販売し、遠方から注文が寄せられるなど人気を呼んでいる。
 ニシンの干物「身欠きニシン」とダイコン、ニンジン、トウガラシを麹(こうじ=糀)で漬け込んだ、通称「鰊(ニシン)漬け」の一種で、北海道から東北地方など寒冷地の冬の伝統的保存食。湖北地方では旧伊香郡域を中心に各家庭で作られていたが、旧長浜市域や米原地域では余り知られていない。またダイコンを事前に塩漬けしたり、水戻しした身欠きニシンを日本酒で一晩漬け込むなどの下ごしらえが必要なことから、現在では旧伊香郡域でも漬け込む家庭はすっかり減っている。こうじ漬けを買い求める年配男性は「懐かしい冬の味。これで一杯やったらたまらない」と語っていた。
 ふみ子さんのこうじ漬けに欠かせないのが、長浜市高月町渡岸寺でほぼ半世紀、麹づくりを続ける山岡糀屋の山岡行雄さん(80)、喜久栄さん(72)夫婦が造る米こうじ。こうじ造りのシーズンオフに鉄工所を経営していた行雄さんが引退後は、こうじ造りから、そのこうじを使った注文のミソ造りまで喜久栄さんがほぼ一人で担っている。同店のこうじでなければ求める味が出ないという客は多く、ふみ子さんもその一人。
 漬け方は、イチョウ切りにしたダイコンを五日間塩漬けにし、身欠きニシンを米のとぎ汁などで一晩水戻ししたあと、鱗を落とし、清酒にさらに一晩漬け込む。それに細切りしたニンジン、トウガラシ、だし昆布を加え水切りを繰り返しながらほぼ三週間漬け込む。発酵が進み過ぎると酸味が強くなるので食べごろの期間は短い。ふみ子さんは風味を保つため真空パックを試したが、こうじの酵素分解作用でパックが風船のように膨らむため断念。期間限定の店頭売りのみとしている。百㌘三百六十円、三百㌘千円。
〔写真〕右=岩根さん手づくりの「こうじ漬け」、左=山岡さんが伝統手法でこうじ作り