新築の学校給食センターで工事やり直し 市教委「設計ミスでも施工不良でもない」と弁明 | 近江毎夕新聞

新築の学校給食センターで工事やり直し 市教委「設計ミスでも施工不良でもない」と弁明

 今年五月に長浜市南田附町に完成したばかりの長浜学校給食センターで、給食を配送車に積み込む搬出口のやり直し工事が始まった。設置者の長浜市教委によると、配送車の取り回しスペースが小さく、「運転手にハンドルを幾度も切り返す操作を強要する」というのが工事やり直しの理由。
 最新式の「ドックシェルター」型搬出口を設けていながら、完成からわずか二カ月余りで、旧センターと同じ「斜めプラットホーム」式に変更するもので、搬出口からセンター内へ外気の流入を減らすためエアカーテンを新たに併設する。やり直し工事費は約九百八十万円。新品のまま放置する「ドックシェルター」開口部の設置経費などを加算すると、やり直し工事に伴う損失、いわば「まったく無駄な出費」は、さらに増えるとみられる。
 工事のやり直しは設計に重大な誤りがあった場合や施工不良が原因だが、市教委では「設計、施工に問題はなかった。配送業者の要望に応えたわけでもない」としている。通常、完成直後の工事やり直しは、設計会社ら関係者の責任追及、損害賠償問題に発展するが、これまでのところ、六月定例市議会で議会が「教育委員会の関係部局の連携強化」などを求める付帯決議を全会一致で可決しているのみ。新学校給食センターの改築の要因の一つとなった「びわ学校給食センター」の重油流失事故でも、数億円規模の土壌汚染処理費用が必要となるが、管理責任を追及する動きはなく、すべて税金で処理する行政の無責任体質をうかがわせている。
 設計を審査した市の建築住宅課では「配送車の動線を調査、確認のうえスペースを決めている。ドック開口部からフェンスまでは十一㍍で必要最小限のためゆとり幅は約一㍍余りと少ないが、基本機能を維持している」と語っている。しかし、指名競争入札で給食配送業務を請け負った地元運送会社は「入札時の仕様書では三・五㌧車で対応できるとしていた。しかし二㌧車を切り返し運転して、ようやく対応可能なスペースしかない。車両が異なれば、配送スケジュールや要員配置計画もすべて異なり、年間で一千万円余りが余計に必要になる」などと憤っていた。
 施設設置を所管する教育総務課は二㌧車を前提にしていたが、センターの運営を管理する「すこやか教育推進課」では三・五㌧車を想定し、両課が連絡確認を怠っていたという。配送業者の落札後、仕様変更を告げ、三・五㌧車二台運行を二㌧車三台運行に変更して、業者が了解したという。
 やり直し工事では、職員用の駐輪場がないため、正面玄関付近に追加設置する予定。また敷地南東のガスガバナ(整圧機)周辺にフェンスを設置する。
 新しい長浜学校給食センターは、市内下坂中町の現センターと、同五村の虎姫学校給食センターの老朽化、同弓削町のびわ学校給食センターの重油流出事故処理のため、三センターの機能を統合して建設した。当初は一昨年秋の稼動を目指して神照地域で建設計画されたが、地元が拒否したため南田附町に変更され、さらに東日本大震災の影響で計画が遅れた経緯があった。
 新センターは、敷地八千六百二十九平方㍍に鉄骨造一部二階建て延べ四千三百九十五平方㍍。一階は回転釜十四基を備えた「煮炊調理室」、コンベア方式の「炊飯室」、搬送コンテナと内部の食器類を食毒・保管する「コンテナプール」、食物アレルギーの児童のために代替食などを作る「アレルギー食対応室」など、二階は調理実習室、会議室、テラスなどを備えた。調理室は床に水を流さずに雑菌の繁殖を抑える「ドライ方式」、完成した給食を外気にさらさず、搬出口から調理室に虫や砂塵が侵入するのを防ぐため、配送車のコンテナ後部が施設にドッキングする「ドックシェルター方式」が採用されていた。一日に九千食の調理能力があり、今年二学期から旧長浜市域、旧びわ、虎姫両町域の九小学校、六中学校、八幼稚園に昼食約八千四百食を届ける。給食試食会は八月二十一日。
 設計は(株)豊建築設計事務所、施工は(株)奥田工務店と(株)大和の建設工事共同企業体、厨房機器は(株)アイホー。総事業費は二十一億六千五百九十二万円。
〔写真〕ドックシェルター部前に新たなプラットホームを作る工事が始まった新しい長浜学校給食センター