200年ぶり襲名で長浜公演 能楽師 十二世山階彌右衛門さんが2月 | 近江毎夕新聞

200年ぶり襲名で長浜公演 能楽師 十二世山階彌右衛門さんが2月

 今年二月、能楽観世流宗家、観世清和さんの弟、芳宏さん(46)が、十二世山階彌右衛門(やましな・やえもん)を襲名し、近江猿楽にルーツを持つ山階家が二百年ぶりに彌右衛門の名を復活させたことを記念し、来年二月、長浜市で彌右衛門さんらの「襲名記念ふるさと公演」がある。
 公演のタイトルは「びわ湖畔長浜竹生島能」。来年二月九日午後二時から長浜市大島町の長浜文芸会館で開き、山階彌右衛門さんのほか、観世流のシテ方女性能楽師で十世山階徳次郎さんの孫、山階弥次さん=旧名・山階敬子=ら、二十人余りが出演し、能「竹生島」や、仕舞「梅」などを披露する。
 近江猿楽のルーツ、湖北での公演を成功させようと、財団法人・長浜曳山文化協会の呼びかけで、このほど、長浜市など十四の機関、団体が「びわ湖長浜竹生島能実行委」(会長=高橋政之・商議所会頭、曳山文化協会会長)を設立した。公演のPRやプレイベントを計画しており、関係者は「近江猿楽のルーツを持つ湖北で伝統芸能を見直し、新たなまちづくりに生かしたい」と意欲的でいる。
 猿楽は、社寺で行う滑稽芸が発展したものといわれ、室町時代に世阿弥が能楽として大成させた。世阿弥によると、近江には猿楽集団「山階座」=長浜山階町=、「下坂座」=同市下坂町、「日吉(ひえ)座」=大津市坂本=の上三座と、「敏満寺(みまじ)座」=多賀町敏満寺=、「大森座」=東近江市大森町=、酒人(さこうど)座=甲賀市水口町=の下三座が活動しており、二座が拠点にしていた長浜は中世芸能史上、重要な位置を占めていたという。子ども歌舞伎が中心の長浜曳山まつり発祥の土壌を育んだとみられる。
 現在の山階家は、室町時代に世阿弥の父、観阿弥と並ぶ名人、道阿弥を生んだ旧家。観世流のワキや地謡などを務め、十一世山階信弘が十七年前の平成二年に死去後、十世の孫で、女性能楽師のパイオニアの一人、山階敬子さん(82)が家系を守っていた。敬子さんも今年二月に家名の弥次を同時襲名している。
 なお、ふるさと公演のチケット発売は十二月一日から曳山博物館、長浜文芸会館で。S席六千円、A席五千円(大学生以下はいずれも半額)。
〔写真〕上演される能「竹生島」(二十五世観世左近さんの舞台)