手負いのクマ住宅地で大捕物 警戒中の署員大ケガ機転で倉庫に封じ込め | 近江毎夕新聞

手負いのクマ住宅地で大捕物 警戒中の署員大ケガ機転で倉庫に封じ込め

 十三日朝、長浜市早崎町で目撃されて以降、十五日まで連夜、同市南浜、大浜両町に出没していたクマは、十七日未明ついに、市内十里、神照両町の住宅地に出没。午前六時半ごろ新庄馬場町の民家に侵入し、包丁を持って追い払おうとした六十五歳男性の右手甲にすり傷を負わせ、その約二十分後、新庄中町で警戒に当たっていた長浜署駅前交番勤務の男性署員(25)の手首を切り裂く大けが負わせた。
 しかし重傷を負った署員とともに、現場にいた署員二人の機転で、クマは新庄中町の民家の倉庫に閉じ込められ、この日正午前に麻酔による捕獲に成功。手負いで凶暴になっていたとみられるクマが住民を襲う最悪のケースは水際で阻止された。
 捕獲されたのは十歳以上とみられるツキノワグマのオス(体長約一㍍三十七㌢、推定体重約七十七㌔)。起立すると一㍍六十~七十㌢もあり、体に複数の傷があった。
 クマの捕獲と放獣業務を県から委託され、今回も麻酔での捕獲に取り組んだ民間企業、野生動物保護管理事務所=神戸市=は、県自然保護課とともに、「山奥に放しても、人を襲う危険性が高い」として、薬殺するよう指導。市では同日中に殺処分した。遺体は岐阜大学で病理解剖に付す方針。


2校1園が臨時休みに
 十七日のクマ騒動は、午前一時半ごろ、長浜市十里町のJR北陸線沿いの目撃情報で幕を開けた。その後午前六時過ぎから市内神照町から続々と目撃情報が寄せられ、児童生徒の登校時刻を前に人家密集地にクマが侵入したことから、長浜署員が二十人余りで一帯の警戒に当たった。
 長浜市では、先に完成したばかりの防災行政無線屋外拡声子局や、巡回車で警戒を呼びかけ、各学校、幼保育園では携帯メールなどの保護者連絡網を使って、休校や、始業時間遅延措置を連絡。子どもらに外出を控えるよう指示した。この日休校となったのは、出没情報が集中した、神照小と北中、神照幼稚園。始業時間を三十分から一時間遅らせたのは長小、北小、南郷里小、西中の四校と、長浜、北、西、神前、西黒田の五幼稚園。
 午前六時半ごろには、クマが新庄馬場の民家に侵入。六十五歳男性が包丁を振り回して追い払う際、右手甲をすりむかれる軽傷を負った。約二十分後、現場周辺をパトロール中の長浜駅前交番勤務の二署員と神照駐在所の一署員が新庄中町の倉庫前を徒歩で警戒していると、突然、倉庫からクマが飛び出し、一署員に覆い被さり、署員の右手首を鋭い爪で切り裂た。
 駆けつけた別の署員が警棒で殴りつけ、倉庫に追い返してシャッターを下ろし、パトカーを横付けにして封鎖。襲われた署員は右手首の腱断裂と左手薬指骨折の重傷を負ったが、神経に損傷はない模様。現場には引きちぎられて血で染まった制服袖やシューズが散らかり、クマの襲撃の凄まじさをもの語っていた。署員は救急車で運ばれ、緊急手術を受けた。


緊張の捕獲劇
 民家密集地で銃による殺処分は危険が伴うため、長浜署では、県と契約する神戸市の捕獲専門業者を要請。午前十時半に業者が到着し、麻酔による捕獲が慎重に進められた。盾と拳銃で万一に備える署員に守られながら、正午前に麻酔銃での捕獲に成功し、遠くから成り行きを見守っていた住民を安どさせた。
〔写真〕上=捕獲されたクマ、右中=クマが逃げ込んだ倉庫(17日午前7時34分)、右下=大捕物を固唾を飲んで見守る住民、左=倉庫2階に潜むクマに2回目の麻酔銃が命中(17日午前11時53分)