ごはん・・・ごはんにはそれほど未練はない。

2006年の夏にストレス性の胃炎になったのだが、そのときに白米が胃炎を起こしている原因の一つに思われたので、それを機会に玄米に切り替えた。なので、美味しい白米はとっくにあきらめていた。もちろん、玄米も土鍋や圧力鍋で炊くと結構美味しくなると思うのだが、玄米がなければ生きられないというほどではなかった。でも、パンだけはあきらめたくなかった。

「私はお米は食べなくても大丈夫ですが、全粒紛のパンだけは止めたくないんです」

100%全粒紛のパンも、胃炎になって以来、白パンから切り替えて、食事に取り入れてきたものだった。私はもともとパン全般が好きだったが、全粒紛のパンをトーストしたときのサクサクとした歯ごたえがやみつきになり、以来、全粒紛パンドキドキラブになっていた。白パンのトーストなんか目じゃなくなった。

「先日、2日ぐらい主食を抜いたのですが、すごいフラフラになって、胸の辺りが痛くなりました。エネルギーが足りなくて、身体が脂肪を無理やりエネルギーに変えていたような気がします。私は炭水化物をある程度食べないとダメなようです」と、ドクターに訴えた。

「炭水化物を減らすときは、その代わりたんぱく質を摂ってね」

「わかりました。でも、全粒紛のパンは毎食食べたいんです。朝は全粒紛のパン1枚と、オートミールを少し食べています。昼食、夕食でもそれぞれ1枚ずつ食べています」

「朝は、オートミールは止めることはできないかしら」

「でも、ほんのちょっとだけなんですけど・・・。わかりました。止めてみます」

オートミールも、胃炎になって以来、お腹に優しかったので食べてきたものだ。3年半も毎日食べてきたものなので、愛着があった。

「代わりに卵を食べてみては」

「卵にはちょっとアレルギーがあるので控えています・・・」

「そう、難しいわね。チーズは?」

「乳糖不耐症なので、乳製品は控えています・・・」

「そう、難しいわね」と、ドクターSは本当に困ったような顔をした。

この3年半、動物性たんぱく質はときどき食べる魚介類のみという、ほぼベジタリアン、ほぼビーガンで通してきたのだが、ついに食事内容を変えなくてはいけないときが来たようだ。

「魚や豆腐を増やしてみます・・・。ところで、胃が小さいのですぐお腹がすくのですが、間食に全粒紛パンを食べてもいいでしょうか」

「それは止めておいたほうがいいわ。とにかく、少し炭水化物を減らしてみてください。その代わり、たんぱく質をたくさん摂ってね。飢えで苦しんでもらいたくないから」

これまで、間食があって私のエネルギーが保たれてきたような感じだったので、間食をどうしたらいいか途方にくれそうになった。間食についてドクターにもっと聞きたいと思ったが、この診察もすでに30分ぐらいが経過しており、何となく終わりに近い雰囲気だった。ドクターが笑顔で〆の言葉を言った。

「まあ、あんまり心配しないで」

最後に確認しておきたいことを思い出した。

「血糖自己測定器を買って、自分で血糖を測定してみたいのですが。自腹で払ってもいいです。やったほうがいいでしょうか」

「当分はローカーボ(低炭水化物)生活への切り替えで忙しくなると思うから、まだやらないほうがいいと思うわ」

「そうですか・・・ところで、私の腎臓はたんぱく質中心の食事でも大丈夫なんでしょうか」

「あなたの腎臓は大丈夫。だから心配しないで、たんぱく質を多く摂ってね」

1月26日の血液検査の項目に入っていた血清クレアチニンの値は正常値だったので、私も腎臓は大丈夫だと思っていたのだが、ドクターに確認したかったのだ。

こんな感じで、長い診察は終わった。