正式に「境界型」だと言われてちょっとホッとしていたのに、ドクターSの急を要するような様子に少しあせった。が、

「普通、境界型だと6ヵ月後に再検査なんだけど、あなたの場合、3ヶ月後でもいいかしら」

なんだ、今日明日に何かするというわけでもないのか。

「今度は、もう一度空腹時血糖値と、インスリンの分泌の具合と、ヘモグロビンA1Cという検査をしましょう」

あー、ついにきたか。ヘモグロビンA1C(HbA1C)は、血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結びついたもので、この割合(パーセント)で過去数ヶ月の血糖値の状態がわかる。正常値は4.3~5.8%で、高ければ高いほど高血糖だったということが言える。これについてはネットで再三見てきたので、いつ検査するのかなと思っていた。

ドクターは3ヶ月後なんて言っているが、これは今わかったほうがいいのではないか?

「ドクターS、3ヶ月後ではなくて、ヘモグロビンA1Cとインスリンの検査をすぐに受けることはできますか?」

「もちろん、すぐにでもいいわよ。じゃあ、今と3ヶ月後の両方にしましょう。3ヶ月後はそれにプラスして空腹時血糖値もね」

「あ、今といっても今日は時間があまりないので、後日でもいいですか」

「ラボへのオーダーは1ヶ月間有効だから後日でもいいですよ」

「その検査で、結果が悪かったらどうなりますか」

「すぐにでも投与治療を始めるわ」

「でも糖尿病の治療って、普通、食事療法や運動療法から始めるのではないのですか?」

「肥満があったりする人はそうだけど、あなたの場合、身体が小さいから高血糖のインパクトが大きいので、すぐに投与治療に入ったほうがいいわ」

肥満のために膵臓の働きが悪くなったり、細胞がインスリンを受け付けなくなるインスリン抵抗性が出てくることが原因であることが多い欧米型の2型糖尿病と違い、日本人によくある痩せていても2型糖尿病というケースに、ドクターSは慣れていないような印象を受けた。だから、私のケースを1型糖尿病と思ったようだ。

私は、1型糖尿病に見られるような、劇的な症状はまったくなかったので、それは違うと思った。

あと、遺伝のほか、2型糖尿病になる心当たりがたくさんあった。

「いえ、私は小柄ですけど、在宅での仕事のストレスで食べ過ぎて、お腹のほうはいつも太っていたんですよ。ごはんとかでんぷん質の多い野菜とかの高炭水化物の和食ばかりで、間食も多くて。血糖値が高くて当たり前だったみたいです。納豆の食べすぎでお腹がおかしくなったので、食べる量を減らしたらお腹も少しへっこみましたけど」

「アジア系の患者さんにごはんを止めさせるのはたいへんなのよね・・・」

(つづく)