自分にとっていい香りは、なんとも心地いいものだ。
私は香り好き。
それは種類を問わず、お香、アロマオイル、香水など。
おなじにおいでも「臭い」と書くようなにおいはイヤだけれど、「匂い」ならOK。
「香り」ならもっといい。
だけど、昔からそうだったわけじゃない。
普通、思春期…異性を意識しだした頃から、香りにも気を遣うようになる。
運動部に所属しているわけでもなく、
幸い、普段から体臭を気にする必要がなかったので、
中学・高校と、普通の女子がカバンに常備しているような
制汗剤すら、当時ほとんど使ってなかった。
シトラス系のものを使う女子が多かった当時、
オシャレな友達の一人は
「女の子は“花の香り”じゃなっくちゃ」
と、言っていた。
でも、お小遣いもそんなに持っていない頃だったし、
バイトもしてなかったから、そういう「特に必要でないもの」は
後回し。興味もなかった。
20歳を過ぎて、ヒールを履くようになり、
ルージュくらいはつけるようになったころ
初めて、(大人になれるかと思って)買ってみた。
今ほど種類も多くなく、自分で使えるお金も多くなかったので、
買ったのは濃度の低いオー・デ・コロンだったと思う。
選ぶときに(迷うほどの種類はなかったのだが)
シトラス系かフローラル系か迷い、
友達の一言が頭をかすめたのか、
フローラル系のものを選んで買った。
これが、私の「香水」デビューの日になった。
まだまだ、高級・特別というイメージがあって
せっかく買ったのに、つけて出かけることが気恥ずかしくて
オフの日に家でつけて満足していた。
遣い方がこの程度だったこともあり、
ひと瓶つかいおわるのにどのくらいかかっただろう。
開封したての香りなどとっくに変化して、
別の匂いになってしまっていたにちがいない。
けれど、香水がいつまでも同じ香りのままでないことも
知識として持っていなかったし、本当の意味では、
オー・デ・コロンは「香水」には入らないことも知らなかった。
…今、一生懸命思い出そうとしても
そのオー・デ・コロンの名前もメーカーも
これっぽっちも思い出せない。
おそらく日本製のもので、
シンプルな四角っぽい瓶だった記憶が
うっすら残っているだけだ。