昔の事です。週一回学校勤務をちょっと早く帰してもらい2時間掛けて都心の大学の夜間コースの科目履修をしてたことがあります。やっとの思いでその日も行きましたが、臨時休講でした。その夜は大学推奨の旅館に素泊まりして、翌朝の始発電車で出勤予定でした。


そんな時後ろから「今日は休講で残念でしたね」の声が聞こえてきました。振り返るときちっとスーツを着ている青年です。ジーンズを見慣れているので、新鮮な感じがしました。

言葉が綺麗に聞こえました。

 

驚いている私に「お茶を飲みませんか?僕は○○○○です。法学部の聴講生です。○○〇〇大学を出て、○○○電気に勤めています」と一気に話し始めます。こちらは急なことで声が出ません。ただ頷くだけです。話は続き「父の職業は弁護士です。信用して頂けますか?」でやっと立て板に水の話しが終わりました。

 

学生街の喫茶店に入りました。私はまだ自分の身は明かしていません。「彼氏さんいますか?」「私、今そんな余裕はありません。でも男性のお友達とお話はしたいと思う気持ちはあります。絶対飽くまでも友達以上にならないって約束していただければ」と上がっていたせいもあってか変な返事をしていました。「ずーっと平行線でということですね。分かりました。その線で行きましょう」

共通な話題は英語しかありません。「英語なら僕が

教えて上げましょう」と自信たっぷりに宣う。

 

「技術畑ですよね。お仕事ではどんな場面に英語が必要なのですか?」に「外国からパソコンに不具合があるという連絡が入ると、電話で指示します。それで解決しないときはすぐ現地へ飛びます。だからいつもパスポート持ち歩いています」

2回目に「今度合同レクリエーションがありますね。

高尾山の。それでチェックポイントが2か所あって、そこで

スタンプを頂くことになっていますが、その先には無いのです。だからそこでエスケープしませんか? 一般の登山者が交じっているから、分かりませんよ」私はそれには同意できませんでした。見張りがいてもいなくても、私はそんなことができない質なのです。他人がするのは大いに許せますが。

 

 3回目に「家のすぐ近くに『花やしき』があります。今度

来ませんか」学内や周辺でちょっと言葉を交わすくらいに考えていたので、まだ名も名乗っていない私を自分のテリトリー付近へ招く真意が分からず、そこで初めて地方在住と職業だけを明かして、エンディングにしました。残念なことに、

変わり者の私に異性との友情は成立しませんでした。

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