これは、小3~中2の自閉症の子ども10人と学生ボランティアによるキャンプ「しゃぼん玉キャンプ」の記録です。



出発の朝。子どもが10人いるので大混乱を予想していたがみんな早めに集合していたので、引継ぎは比較的スムーズ。ほっとした。
ただ、今年初参加のHIRO2号が車から降りてこない。
「キャンプ行かない」と言っているらしい。
初めてなので何が起きるか分からず不安なのだ。
担当学生が迎えに行って必死に説得。
その間に他の子たちはバスに乗り込む。


S太郎がバスに乗るのをしぶっていた。
キャンプをとても楽しみにしていたそうだが、去年は顔合わせを福大の10号館教室で行い、土砂崩れでバスが使えなかったので自家用車で背振へ向かった。
今年は顔合わせが中央市民センター、背振へはバスで行く。
去年と違うので納得がいかないらしく、去年を踏襲しようと10号館へ行きたがる。
担当の学生が説得して、本人が納得するのを待って、ようやくバスに乗った。


その間にHIRO2号は学生に連れられてバスのそばまで来たものの、なかなか乗らない。
どこに行くのか分からなかったら、それは怖くて乗れないだろう。
納得してもらうには時間がかかる。
出発時間は過ぎていたけど最初に皆でバスで行かないと来年から行けなくなってしまう。
「バスと車、どっちがいい?」と聞くと「バス」と答えるので
「じゃあバスに乗ろう!」と誘導してなんとか乗ってもらった。
乗った瞬間に運転手さんに「閉めてください」と頼む。
約20分遅れで出発。


背振に着いて、荷物を降ろして部屋に運ぶ。
入所式があるのでプレイホールへ集合、と伝えてプレイホールへ。
程なくして学生の一人が報告してきた。
「YUTAくんがいません」
プレイホールへ行こう、とした瞬間に走り出してしまい、見失ったらしい。
他の子を全員プレイホールに集めて、最小人数の学生を残し、他全員で捜索へ。
館内では見つからず、どうやら外に出たらしいことが分かり、青くなった。
山で遭難したらどこを探していいのか分からない。
自然の家の職員が無線を持って捜索に出てくれた。
直前に撮影していた映像があったので背格好や服装は確認できた。
焦るけれど私が動くわけにはいかない。

待っていたら、自然の家の所長さんが連絡をくれた。
他団体の子ども達が炊飯場の近くで、はねるように走っていく子どもを見かけたそうだ。
はねるように?
多分それだ。
無線や電話で連絡を回す。
程なくして、牧場付近で保護、という連絡が入った。
5~6人の学生に周りを囲まれて帰ってきたYUTAくん。
学生が「怪我はしていません」と言う。
良かった。本当に良かった。
見失って約45分。どうしようかと思った。


昼食の時間が迫っていたので昼食へ。
入所式は他団体の活動の兼ね合いもあって省略することになった。
入所式で挨拶をする予定だったKOUくんは納得がいかない。
数人の学生・スタッフでKOUくんを囲んで略式入所式をして納得してもらった。


みんなで食堂に移動したが、一人、YUUくんの姿が見えない。
部屋に行ってみると毛布を被って拒絶していた。
学生が「ごはんだよ」と呼びかけているが動かない。
茶碗とスプーンを持って行って見せてみたがまだよく分かっていない。
茶碗を見せて、「ごはんにいくよ」と宣言、立たせた勢いで走って食堂に飛び込み空いている席に座らせて目の前に配膳された食事を置く。ここまで一気。
きょとんとしているYUUくん。
とりあえず、ここでは食事は食堂に行ってするということが分かったはず。
ちなみにYUUくんの前に置いた食事は、たまたま席をはずしていた学生のものを奪いました。
YUUくんはこの後の食事の時間はスムーズに食堂に入り、配膳もできるようになりました。
分かれば、できる。


午後は散策と野外調理。
お手伝いできそうな子は材料運びから手伝ってもらう。
調理場の横に流れている小川でしばらく遊ばせるのだが
HIRO2号くん、川で遊ぶと聞いていたのに川があまりに浅すぎて不満爆発。
ひっくり返って「川じゃない!深くない!」と暴れる。
「川はこれしかないよ~、みんな遊んでるよ~」と言うのだけど「いやだ!」と。
ひとしきり暴れた後、「もう!川をとめる!」と叫び、石を積んでダムを作り始めた。
彼なりに、深い部分を作ることで納得したのだ。
妥協点を見つけられたHIRO2号くん。えらい。


川遊びをする子ども達。
そして服が濡れると脱いでしまう子ども達。
半裸になっていく子ども達。
全裸になってしまった子、1名。
大人になる前に「外では脱がない」を教えないとねー。


野外調理、カレーを作る。
皮をむいたり野菜を切ったりはできる子が多い。
米をとぐのはちょっと難しい。
水加減は大人でも難しい。
大きい子にはかまどの火をつけてもらったりした。
カレー作りに飽きたらまた川遊び。


そしてみんなでカレーを食べる。
散り散りになって遊んでいた子ども達が少しの間カレーを食べるために一箇所に集まる。
集団行動が苦手な子ども達が一箇所に集まっているのを見るのはいつも感動する。
親から、カレーは食べないだろうと聞いていた子が普通にカレーを食べていたり。
TOMOくんはいろんな学生に愛想を振りまいておんぶしてもらっていた。
あまり人見知りをしないTOMOくんは世渡り上手。


夜のレクは小麦粉粘土あそび。
小麦粉に水を混ぜて粘土状にして遊ぶ。
ミーティングルームにブルーシートを敷き詰めて遊ぶ。
今年は人数が多いので人口密度があがるから
部屋に入れない子がいるんじゃないかと思っていたけど(人が集まっている空間が苦手な子は多い)
みんな部屋に入って遊んでいた。
学生の誘導のおかげ。すばらしい。
小麦粉だらけになって遊び、そのまま外に出て行ったり窓を触ったりするので、あちこち大変なことに。


レクレーション後は子どもをお風呂に入れる人と片づけをする人に分かれて活動。
小麦粉粘土は片づけが大変!
でもみんなの協力のおかげできれいに片付きました。すばらしい。


お風呂に入って子どもを寝かせて、学生の半数と反省会。
今日の反省や気づきと明日の登山の目標と対策をたてて共有する。
いただいた差し入れでしばらく歓談するんだけど
今年はこちらが促す前に学生が自主的に解散した。
今年の学生達は気合が入っている。