10月28日、雨。
稲葉浩志、ソロライヴのツアー
最終日。

今日の会場は日本ガイシホール
(名古屋)で行われた。


19時開演
予定時刻どうりにSEが流れる。


真っすぐ左右に伸びたステージ
両サイドには大きなビジョン。
中央には、白い半球状の巨大な
宇宙船を連想させるカプセル。


そこに緑や赤、青のライトが、
あちこちから、様々な形の模様を幻想的に映し出す。


固唾を呑んで見守っている一方、
手拍子が起きる。



煽られるようにライトが動き、
やがて正面で重なる。
ツアータイトルのロゴになり、
悲鳴に近い歓声があがる。




ピアノを連打するような激しい
イントロ。《Tamayura》だ。


球体の中から光りが放たれると
ビジョンには稲葉の姿。


白っぽいグレーの上着にパンツ
モノクロのボーダーのシャツ。


スタンドマイクに真摯に言霊を
ぶつけている。


嵐のような勢いの波に飲まれて
息つく暇なく、《マイミライ》


《The morning call》のイントロ
『今晩は、名古屋!』と
稲葉の掛け声が入る。


外の肌寒さとは正反対に、
この時点ですでに汗だく。

『今晩は。お元気ですか?
ついにたどり着いたこの場所。
ツアーの最後に相応しい天気に
なりました(苦笑)
雨、嫌いじゃないですよ。
雨もエネルギーくれるし、
それを吸い込んで』
と深呼吸して見せ、笑いを誘う


『快感のゴールを目指して、
一緒に燃え尽きよう
じゃありませんか』


と、本日の初MCで軽い緊張を
ほぐし、観客の気持ちを掴む。


今度は自らV字のギターを抱え、
先行シングル曲《Okay》と、
軽快なリズムの《去りゆく人》
そして、ストロボの瞬きが、
曲の印象をさらに強くした
《AKATSUKI》になる。


二度目のMC。
この時点で、今回のバンドが、
キーボード担当以外、
外国人メンバーだと気づく。


6年ぶりのツアーに対して
『ソロは不定期で、忘れた頃に
やってくる事故みたいな感じ(笑)』
と、コメント。


『スタジオに篭って作るのと
実際にライヴでやるのとでは、
また違う魅力が見えてきて…。
みんなからの波動が染み込んで
成長したと思います。
とても貴重な瞬間で
ありがたいと思っています』

と、笑いを織り交ぜながらも
お礼を述べた。


自信もありながら、
彼の謙虚さが、こんな時に
垣間見える。


『海の波にたゆたうのを、
思い浮かべながら
聴いてください』
と紹介され、始まったのは《波》


手打ちの、打楽器コンガと、
波のせせらぎのようなピアノと
アコースティックギターの絡み。
ビジョンには、月がポッカリ
浮いた海の映像。


会場には静かだけど、温かい、
心を解き放つような浮遊感が漂う


アリーナクラスの会場なのに
ライヴハウスのような曲との
近さを感じる。


ほーっとため息をこぼす。
いつの間にか閉じていた目を
開けると、ビジョンには
モノクロの時計が写る。
《loveltter》


時計が砕けて、雪や雨のように
キラキラと振り、ビジョンで
稲葉の姿に重なる。


すっかり聞き惚れていると
再び暗転。
ポツンとスポットライトに
浮かび上がったのは、
ステージ中央に
一脚だけ置かれた
透明な椅子。


稲葉が浅く腰かけたスタイルで
静かにステージの一部が高く、
迫り上がる。


寂しげなピアノイントロで
始まったのは《透明人間》


痛々しいほどの孤独感を抱えた
少年の歌詞。
一人芝居を観るかのような
迫るものを感じる演出で
思わず息を呑む。


今回のLiveの中で1番、
緊張して見ていた歌だと思う。


演奏が終わり、瞬間、沈黙が
訪れた後に大きい拍手が響く。




②に続く。
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