8月20日、金曜日。
埼玉県西川口にある
ライブハウスで行われた
イベント『PLAIN MUSIC』
様々なアーティストが出演する中、
お目当ての
藤重政孝
は
三番手だった。
会場のドアを開けると
正面奥に、ステージ。
ロールアップ式の垂れ幕で客席と
仕切られていた。
着席スタイルの予想を裏切って、
オールスタンディングだった。
場内は自由に行き交いながらも、
出番を待ち望むファンで
ざわめいていた。
期待に胸が高鳴る。
薄いビニールの白い幕一枚で
隔てた先には、あわただしく、
楽器をセッティングする気配がする。
午後８時。
ほどなくして、サッと幕があがると
ステージ中央にはスタンドマイク、
愛用のギターを携えて藤重が
立っていた。
ミッキーマウスのキャラクターを
大きくプリントした
古着テイストのシャツ。
ダメージの利いた
ブルージーンズといった
ラフな出で立ちだった。
その右手には、サポートでは
おなじみのカジ君こと、
梶原健生氏の姿が黒ブチ眼鏡、
白シャツ、ベージュのパンツ、
アコースティックギターを
抱えて座っていた。
藤重はシリアスな面持ちで、
ギターのボディを軽く叩き、
客席に拍手を促す。
ざわめきが消え、
手拍子が広がる中、
始まったのは＜波＞
オープニングから、ライブの
ピーク感のような高揚感。
なんの知識がなくても、
ノリよく、引き込まれていく。
そして、間髪入れずに
＜FOREVER＞
配信でリリースされたものとも、
オリジナルとも違う
ライブバージョン。
優しく相手を包みたい、と語る
歌の内容はそのままに、
詩に登場する二人の関係性は
対等に、同じ道を、
大地を駆けて進んでいく、
そんな風に感じられた。
アレンジ一つで雰囲気が
がらりと変わるな…。
原曲を知っているとつくづく感じる。
少し早めのピッチで
かき鳴らすギターが、
どこか乾いた広大な大地を連想させ、
力強さや包容力も感じる。
｢どうもありがとう。
今晩は。藤重政孝です｣
観客の拍手に応えての初のMC。
緊張がほぐれて、笑顔で話しかける。
ものすごく喋りたかった、
との前置きがあり、
チューニングをしながら、
彼自身が当日身につけていた
キー型のペンダントから
、
新しくできたファンクラブの話題になる。
初回限定モデルの会員証は
鍵タイプであることや、
設立までの話もユーモアを交えて話す。
和やかな雰囲気のまま、
次回のアルバムに入れる予定との
紹介で、＜東京＞＜郷愁＞と続く。
この後、披露された
＜いつものように＞も
合わせた三つは近年に作られたもの。
曲詞ともに彼自身によるもの。
しっとり聞かせるナンバー。
それぞれ異なる時期に、
作られているが
上京し、恋や挫折、
様々な経験をしてきた
青年の姿が表されていて、
どこか藤重自身の姿を
重ねてしまう。
マイクなしでよいのではないか？
と思うほどの声のハリ。
伸びやかで歌う表情も、
イキイキしている姿が印象深い。
特にサビを含めた
梶原氏とのハモりが絶妙で、
さらに曲に切なさを与えている。
聞き終わり、満足感に満たされる。
今回のライブは、MCの時間が多く、
持ち時間の半分を使用していた。
客席とのコミュニケーションも
とてもリラックスしていて、
息をするような会話の流れの中、
＜いつものように＞に。
秋にリリースを予定している
(日にちは未定)アルバムを引っ提げて、
首都圏以外も回るとのこと。
地方を回るツアーは
何年ぶりになるのか。
10年だろうか？
かなり久しぶりだ。
｢スタンプカードを出しますんで
(見に来てほしい)｣
思い付くまま話す藤重に、
｢全部集めたら、
何がもらえますか？｣
と、さらに沸く観客。
このサービスが実行されるか
どうかはわからないが、
その特典内容も一風変わっていて
彼のユニークな一面が伺えた。
｢もっとMCをしたいとこだけど（笑）｣
との前フリで
その日の最後となった＜空＞へ
1stアルバムに収録されている
この歌は、これまでに様々な場所で
披露されてきた。
歌詞を知る観客の歌声も聞こえる中。
今回は乾いた空気と
少しだけ熱を帯びた風が吹く
旅路を行く……
そんなロックテイストあるギターに
アレンジされていた。
その音の先に、遠くに想いを馳せてしまう。
着実に自分の足で自分の向かう場所へ
一歩ずつ歩いていく。
優しさ、逞しさ、力強さが無言のメッセージで滲み出てた。
秋から始まる新作アルバムを
引っ提げてのツアーが
非常に待ち遠しい、
そう感じた夏のライブだった。
*セットリスト*
＜波＞
＜FOREVER＞
＜東京＞
＜郷愁＞
＜いつものように＞
＜空＞
