冷泉院の東宮におはしましける時、月を待つ心の歌男どもの詠み侍りけるに
藤原仲文
ありあけの月のひかりをまつほどにわがよのいたくふけにけるかな
有明の月が出るのを待っている間にすっかり夜が更けてしまった。
(東宮が長く東宮のままでいて、帝になったらその恩恵に与かることを期待しているあいだに私はすっかり老けてしまったよ。)
有明の月はこの歌のように日が暮れてからずっと待つものではないと思う。
朝早く目を覚ました時にまだ空に残っているのが有明の月だと思う。
が、この歌は括弧内の意味が主な意味だろうから、無理のある有明の月になってしまったのだろう。
ちなみに、藤原仲文は三十六歌仙のひとり。