

小菊咲くバス停前のお家に、優しい飼い主の家族とともに、二毛猫のニッキーが住んでいました。
毎日、ベランダに出ては
「プッシュー!ブオーッ!」
というバスの停まる音と発車する音を
生まれたときから聞いて、育ちました。
大きな町に向かうこのバスは、一日に五回通るのでした。
毎日、バスの「プッシュー!ブオーッ!」を聞いていましたが
近頃、ニッキーには大きな迷いがありました。
近所の仲間の話によると、このバスに乗って町に行ったら・・
なんと!
サンマのパレードとネズミのカーニバルがあるそうなのです。




「すごいな~!」
と、そこへ飛び込む自分を想像しただけで、ワクワクしてきます。もう~たまりません。
「でも、大きな大きな猫取り網もあるそうだから・・やっぱり、あぶないだろうか?どうしよう?ぼくは、このバスに乗って町へいくべきだろうか?」
一日五回のバスの「プッシュー!ブオーッ!」を、聞くたびに考えるようになって、十日が過ぎました。
ある日、いつものように、ベランダに出たニッキーは
「今日は、おかしいぞ~!」と思いました。
なにかが、いつもとは違っているのです。
やっと気が付きました。
「そうだ~!プッシュー!ブオーッ!が聞こえないんだ。いったい、どうしたのだろう?」

ニッキーは、だんだん落ち着かなくなってきました。
次の日も、その次の日も、バスは来ないのでプッシュー!ブオーッ!が聞こえないのです。心にの中に、なぜかポッカリと穴が開いたようになりました。
小菊咲くバス停前をながめては、さみしくなりニッキーの目には涙がこぼれてきます。
悲しんでいるうちに、ついに四日目の朝です。
あの「プッシュー!ブオーッ!」が聞こえてきたのです。
飛び上がるほど、嬉しくなったニッキーは
初めて気がつきました。

「ぼくは、サンマのパレードもネズミのカーニバルもいらないや!プッシュー!ブオーッ!が聞けるこのベランダが大好きだったんだ~!町ではなくて・・このお家にいることが、幸せなんだ!」
ニッキーは、とても安心してホッ!としたので、しばらくできなかった「ベランダお昼寝」をウトウトとはじめました。


こうして、平和な月日がたち、やがて・・年老いたニッキーは「御長寿猫」として、おだやかに幸せいっぱいで、今日も生きるのでした。
家族も皆 優しく世話をしてくれるので毎日満足しているのでした。そんなニッキーは、時々思い出すのでした。
「あの時、町に出て行かないことにして僕は本当によかったなあ!」と。


(おわり)
(Written by Yuyu・ゆうゆ)

「いつも、ありがとうございます♪命に感謝して、今日一日を大切に暮らすように努力中です!Anyway smile♪」
(With gratitude from ゆうゆ)

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