その人は私の人生の良き先輩で、
私にとっては一番身近なヒーローだ。
My First HERO-60-
問題は大学院の授業にもあった。
大学院の授業は大学の授業と違い、ディスカッション形式が多かった。
そのため毎回レポートが出て、話し合い形式が苦手な梅子はついていくだけで精一杯だった。
そんな時に田岡さんの一件。
梅子は限界を超えた。
とある日の朝、
「梅子~、おはよう~。」
彼氏の森山くんがいつも通り梅子の部屋にきた。
森山くんの家は母がうるさく、梅子が精神障害があると知るやいなや、交際に猛反対。
そのため、梅子とは隠して付き合っていた。
実家生でうまくごまかさなければならなかったため、門限は8時。
7時半には梅子の家から帰る毎日だった。
梅子は森山くんの声で目覚める。
「あ、おはよう、梅子。」
「…。」
「?どうしたの?なんでしゃべんないの?」
「…。」
「梅子?」
梅子は手の甲に貼ってあったばんそうこうを剥がした。
無数の切り傷が痛ましくあった。
「!?どうしたの!?」
梅子はケータイを取り出し文字を入力し始めた。
『昨日の夜なんだか部屋にいるのがイヤでコンビニ徘徊した。
帰り道猫が車に跳ねられて死ぬのを見た。
そしたらしゃべれなくなった。
手にいつ切り傷つけたか覚えてない。
ばんそうこうもどこで買ったか覚えてない。』
必死で文字を打って森山くんに伝えた。
森山くんは慌てて梅子を小野田先生の研究室に連れて行った。