『My First HERO』55 | 木村春翔のブログ小説『My First HERO』

木村春翔のブログ小説『My First HERO』

「My First HERO」は自叙伝小説

その人は私の人生の良き先輩で、
私にとっては一番身近なヒーローだ。

My First HERO-55-

異変はすぐに起きた。
片耳の聞こえが悪くなった。
梅子は母とともに地元の耳鼻科へ行った。
しかし待合室で診察を待っていると息苦しかったり吐き気がでたり、動悸がしたりと、横になってないといられない状況だった。

耳鼻科で検査を受けたが異常なし。
不思議に思った先生は梅子を立たせた。
「じゃあ栗原さん、目を閉じてその場所から動かないで行進して。」
わけもわからず梅子は行進する。
終わっ目を開けると最初に立っていた位置とまるで違うところに立っていた。
「ふむ、まぁこれぐらいなら異常ないか。」
と、何かわかったかのようにうなずき、梅子を席に戻し、母を病室に入れた。
「梅子さんは自律神経がかなり乱れていると思います。」
先生は静かに語る。
「自律神経失調症。通ってらっしゃる精神科に梅子さんの状態を紹介します。次の受診の時に持っていってください。」

梅子はバイトをやめた。
吐き気やめまい、立ちくらみも増え、息苦しさもあって呼吸がうまくできないこともあった。
もはやバイトどころの体調ではなかった。
食事もまともにのどを通らず、少し食べてはしばらく横になってを繰り返していた。

8月、病状が全く良くならない梅子に母が、
「もう一度一人暮らししてみる?」
と提案してきた。
少しでも生活にメリハリを作りたい。
母の願いだった。
梅子も現状を打破したかった。

梅子は再び一人暮らしを始める。