なんでしょう?ちょっと読むの早かったような・・・^^;




今回は重松清作品「卒業」。


卒業をテーマにした4篇のオムニバス。


「卒業」と言っても学校を卒業する卒業ではなく


人生の節目について書かれている。


つまり、何かを超え、新たな何かに向かい始める


そういう節目のことだ。


4篇に共通するのが「死」でもある。


そして家族。


大体重松清作品は家族が描かれていることが多いが


この4篇は家族の持つ意味やあり方が濃く出ていたように思う。


トップに収録されている「まゆみのマーチ」では


母親の死に直面した主人公が、妹との関わりや自分の息子との関わりについて


今まで見落としていたものに気付く。


そこから新たな家族との関わり方が始まるのだ。


2篇めの「あおげば尊し」では


父親の死に直面している主人公が父親と同じ教師という職業を選んでしまったがために


父親のことを理解しきれなかったり尊敬しきれなかったりするのだが


最後に父親の教師であることへの誇りと偉大さを自分の教え子から図らずも教えられることになる。


3篇めの「卒業」では


若くして自殺した大学時代の友人の娘が友人のことを教えてほしいと訪ねてくることから始まる。


生きること、死を選ぶこと、向き合わずにふたをしていたこと


それらが絡み合い、登場人物それぞれが一つの区切りをつけていく展開になっている。


4篇めの「追悼」では


6歳で母親を亡くした少年が父親の後妻との気まずさから母親という存在があいまいになってしまう。


大人になって自分が父親になってもその気まずさは続き、修復不可能な関係と思われたが


仕事で「母親」のことを語る機会があり、生みの母と継母とのことをそのままにできない状況になっていく。



こうして書いてみると


ちょっと重苦しいようなテーマと内容だが


読むとそうでもなく、重松清さんらしい軽い語り口調で、人生の一部を切り取っただけのような


いい意味で激しい抑揚のない物語になっている。


それでいてえぐられるような鋭さもありつつ、これまた重松清さんらしい後味のよさが残る作品なのだ。


単に切り取った人生を語るのでもなくテーマを前面に押し出すのでもなく


ちょうどよいバランスで心をえぐりさりげなく語る。


そんな作品だった。


やっぱり好きだなと思わされるのは、このさりげなさと時折見せる鋭さ、


説教めいたものになりそうな重いテーマを軽く語るセンス、


このバランスのよさだろう。


人によっては痛くて読めないという声も聞くが・・・私にはちょうどよい笑




さて、次は買い置きしてあった作品の中から


安部公房「飢餓同盟」を読みます。


どんな幻想的な話なのか楽しみです。